労働衛生コンサルタント試験 2017年 労働衛生一般 問05

減圧症の症状




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問05 難易度 減圧症に関するかなり高度な知識問題である。難問の部類に入るだろう。
減圧症の症状

問05 減圧症に関する次のイ~ニの記述について、正しいもののみの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

イ 急激な減圧では、空気塞栓症や肺の破裂が起こる。

ロ 内耳・前庭機能障害として、めまいや平衡機能障害が生じる。

ハ ベンズと呼ばれる皮膚の痛みや発疹が生じる。

ニ スクイーズと呼ばれる前胸部痛、呼吸困難などの呼吸器症状が生じる。

(1)イ  ロ

(2)イ  ハ

(3)イ  ニ

(4)ロ  ニ

(5)ハ  ニ

正答(1)

【解説】

以下により、本問の正答は(1)となる。

イ 正しい。潜水時には肺が押しつぶされないように、周囲の圧力に応じた適切な圧力の空気を送り込む。その状態から、身体にかかっている圧力を急激に減圧すると、肺の中の内外の圧力差が大きくなり、肺が内側から圧力を受けることになる。肺の肺胞が、圧力増加に耐えられなくなると、肺胞を破れて空気が肺静脈に入り込む。この空気の気泡が血管を運ばれて脳に達し、血流を妨害している状態が外傷性空気栓症である。

また、さらに肺の中の圧力が高まると、きわめて重篤な障害として肺の破裂が起きることもある。

ロ 正しい。急激な減圧による気泡が、内耳の前庭に達すると、前庭機能に障害を起こすことがある。

一方、めまいや平衡機能障害には様々な原因があるが、そのひとつが内耳や前庭機能の障害である。平衡感覚にかかわるものとしては、視覚、体性感覚、前庭機能の3つがあるが、視覚、体性感覚による情報と前庭機能による情報が異なったり、前庭機能の左右の情報が異なったりするとめまいを感じるのである。

ハ 誤り。減圧により生じる「ベンズ」とは、関節や筋肉に痛みや違和感が出ることである。かゆみや発疹などの皮膚症状を起こす場合は、「皮膚型」と呼ばれる。

なお、ベンズ、皮膚型ともにⅠ型減圧症である。

ニ 誤り。スクイーズとは、日本語では「締め付け」とか「絞り出し」と訳されたりするが、体内の空間が締め付けられる現象のことである。潜水中に中耳腔がスクイーズを起こすと耳に圧迫感や痛みを感じ、鼻腔がスクイーズを起こすと前額部の疼痛が起きる。

一方、前胸部痛や呼吸困難は、チョックと俗称される静脈系の気泡による肺栓塞などにより起きることがある。

2019年12月01日執筆 2020年03月08日修正