労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問18

空気清浄装置




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 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問18 難易度 空気清浄装置(除じん装置)に関する高度な知識問題。産業保健区分の受験生は捨て問と考えてよい。
空気清浄装置

問18 空気清浄装置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)重力沈降式除じん装置は、粉じん量が極めて多く、かつ、粒径の大きい粉じんを含む空気を清浄化する際に、サイクロンなどの空気清浄装置の前置き除じん装置として用いられる。

(2)慣性力式除じん装置は、装置への流入速度が速いほど慣性力が高まり除じん効果は上がるが、微細な粒子では慣性力があまり効かないので、その適用範囲に限度がある。

(3)サイクロンは、ガス中の粒子を装置の内壁に沿う旋回流により壁面に衝突させ、また、気流が反転上昇する際に粒子を上昇させて除去する。

(4)バグフィルタの構造には大別して、円筒状と封筒状の2種類の形状のろ布と、パルス式と機械振動式の2種類の払い落とし装置の組合せによる4種類の型式のものがある。

(5)充填層フィルタ(エアフィルタ)による粒子の捕集は、主に粒子と繊維との衝突効果を利用しているので、ろ過風速を下げると除じん性能は低下する。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。本肢は、重力沈降式除じん装置についての知識がなくても、名称のイメージから正しいと分かるのではなかろうか。重くて大きな粉じん(約50μ程度以上)が、多量に含まれる場合は、まず、重力でそれらの粉じんを取り除いてから、サイクロンなどの集じん機で残った粉じんを取り除く方が効率的である。

なお、このように、他の除じん装置の前段に置く除じん装置を前置き除じん装置という。

(2)正しい。慣性力除じん装置とは、多段のじゃま板や、多数のチェーン等に、空気を衝突させて、粉じんを除去する装置である。本肢にあるように、装置への流入速度が速いほど慣性力が高まるので除じん効果は上がる。しかし、微細な粒子には慣性力はあまり効かないので、完全に除塵できるわけではなく、前置き除じん装置として用いられることが多い。

(3)誤り。遠心力除じん装置(サイクロン)も、慣性力除じん装置と同様な原理で除じんを行う。具体的には、遠心力で粉じんを渦の外側へ弾き飛ばし、筐体の内壁へ衝突させて落下させることにより除じんするのである。気流が反転上昇する際には、粒子を除いた正常な空気のみが上昇する。

本肢の記述のように気流が上昇するときに、粉じんもいっしょに上昇したのでは、除じんできていないことになろう。ここであり得ない話だと気付かなければならない。

なお、サイクロンでも5μ以下の粉じんを除去することは難しい。そのため前置き除じん装置としての使用が多い。

(4)正しい。バグフィルタとは、布や紙等のろ材によってろ過して粉じんを除去する装置である。ろ材は多少の粉じんが付着している方が、効率よく除じんすることができるが、あまりに粉じんが付着すると空気そのものが通りにくくなるため、粉じんの払落し装置がついていることが多い。

本肢にあるように、円筒状と封筒状の2種類の形状のろ布と、パルス式と機械振動式の2種類の払い落とし装置の組合せによる4種類の型式のものがある。

(5)正しい。除じん装置の充填層フィルタ(エアフィルタ)による粒子の捕集は、主に粒子と繊維との衝突効果を利用している。そのため、ろ過風速を下げると除じん性能は低下する。

なお、防じんマスクでは、大きな粒子の捕集は粒子と繊維の衝突効果を利用するが、小さな粒子はフィルタを通る際のブラウン運動で繊維やすでに捕集された粒子に衝突させ、ファン・デア・ワールス力で捕らえる。このため、捕集効果は、ある粒径の粒子が最も悪くなり、それより大きな粒子でも小さな粒子でも捕集率は高くなる(ただし、極端に小さな粒子については測定できていない)。

2019年12月01日執筆 2020年04月19日修正