労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問17

幾何平均値及び幾何標準偏差の性格




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問17 難易度 作業環境測定の問題というより数学的な理論問題。ほぼ中学生レベルだが正答率は低いかもしれない。
幾何平均・幾何標準偏差

問17 作業環境測定結果から計算した幾何平均値及び幾何標準偏差に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

ただし、

M1:1日目のA 測定の測定値の幾何平均値

M2:2日目のA 測定の測定値の幾何平均値

M :2日間の測定に対する幾何平均値

σ1:1日目のA 測定の測定値の幾何標準偏差

σ2:2日目のA 測定の測定値の幾何標準偏差

σ :2日間の測定に対する幾何標準偏差

とする。

(1)単位作業場所全体に高濃度の有害物が一様に分布している場合は、M が大きく、σが小さくなる。

(2)発生源対策が不十分であったり、作業者の行動が有害物質発散の原因となっている場合には、ほとんどの場合σの値は小さくなる。

(3)M1とM2の間に大きな差がある場合には、σの値は大きくなる。

(4)σ1とσ2の間に大きな差がある場合には、デザインが不適切であったことが考えられる。

(5)設定した単位作業場所の範囲が広く、その単位作業場所の中に有害物の発散の仕方が異なる作業が混在している場合には、σの値は大きくなることがある。

正答(2)

【解説】

受験者の中には、化学物質や作業環境と聞いただけで、苦手意識を持つ方もおられるかもしれない。しかし、本問は、Mが測定値の場所に関する平均値で、σが場所に関する測定値のばらつきの指標だと分かっていれば、常識的に正答が出る問題である。

(1)適切である。問題文からも明らかなように、Mは作業場内の測定値の平均値でσが標準偏差すなわち“測定値のばらつき”であるから、高濃度の有害物が一様に分布していれば、Mは大きくσは小さくなる。

(2)適切ではない。発生源対策が不十分だったり、作業者の行動が有害物質発散の原因となったりしている場合に、ばらつきが小さくなるわけがないであろう。

この場合、発生源の近くや作業者の近くの濃度が高くなり、そこから離れると相対的に低くなることが多いだろうが、そんなことを考えるまでもなく、ばらつきが小さくなる理由がないのである。

(3)適切である。M1とM2の間に大きな違いがあれば、ばらつきの指標であるσは大きくなる。

なお、M1とM2の双方が管理濃度よりも低かったとしても、ばらつきが大きければ、測定結果の評価が2になることはあり得る。

(4)適切である。1日目と2日目で作業内容が変化すれば、M1とM2の間に大きな違いが出ることは考えられる。また、ばらつきが変わることもあり得るが、平均値ほどには変わらないものである。σ1とσ2の間に大きな差がある場合には、デザインが不適切であったことも考えなければならない。

(5)適切である。確かに、本肢のような場合にはばらつきは大きくなる。

2019年12月01日執筆 2020年04月19日修正