労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問12

職場復帰支援の手引き




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問12 難易度 やや問題に不正確な部分があるが、基本的な問題である。確実に正答できなければならない。
職場復帰支援の手引き

問12 厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)職場復帰支援は、「病気休業開始及び休業中のケア」、「主治医による職場復帰可能の判断」、「職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成」、「最終的な職場復帰の決定」、「職場復帰後のフォローアップ」の五つのステップから構成される。

(2)試し出勤制度の例には、模擬出勤、通勤訓練、試し出勤などがある。

(3)職場復帰を行う場合、異動を誘因として発症した場合を除き、元の職場(休職が始まったときの職場)に復帰させなければならない。

(4)職場復帰可能の判断においては、主治医からの職場復帰可能の診断書が提出されても、職場で必要とされる業務遂行能力について、産業医等が精査して採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要である。

(5)職場復帰支援プランの作成においては、職場復帰日、就業上の配慮、人事労務管理上の対応、産業医等の意見、フォローアップ等について検討して行う。

正答(3)

【解説】

(1)適切である。確かに、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下本問の解説において「手引き」という。)においては、職場復帰支援の流れとして、本肢の5つのステップで説明している。本肢は適切でないとは言えない。

(2)適切ではないが(3)に比較すれば不適切の程度は低い。本肢は、かなり疑問があり、出題ミスではないかとも思えるが、試験協会の解答では本肢は適切でないとはいえないとされている。

疑問があるというのは、本肢の「試し出勤制度」に「等」が付いていないからである。手引き6の(3)には、試し出勤制度の例として、模擬出勤、通勤訓練、試し出勤の3つが挙げられている。これは、模擬出勤と通勤訓練は試し出勤ではないからである。なお、2009年の手引きの改訂の際に、必ずしも「試し出勤」が良い制度とは限らないという考えがあったことも、「等」を付けた背景にあった。

(3)適切ではない。2009年の手引きの改訂の当時、心の健康問題によって休業した労働者を、元の職場に戻すことが良いかどうかについては、専門家の間でも議論があった。しかし、それが“must”ではないということでは専門家の意見は一致していた。

手引きにおいても、「職場要因と個人要因の不適合が生じている可能性がある場合、運転業務・高所作業等従事する業務に一定の危険を有する場合、元の職場環境等や同僚が大きく変わっている場合などにおいても、本人や職場、主治医等からも十分に情報を集め、総合的に判断しながら配置転換や異動の必要性を検討する必要がある」としている。

また、そもそも“手引き”はガイドラインでもなんでもなく、「しなければならない」などと“義務”を定めるような性格の文書ではない。

(4)適切である。手引きは、3の(2)の「主治医による職場復帰可能の判断」の項において、「主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応について判断し、意見を述べることが重要となる」としている。

(5)適切である。手引きは、3の(3)のウの「職場復帰支援プランの作成」の項において、「職場復帰支援プラン作成の際に検討すべき内容」として、本肢に挙げられた事項を示している。

2019年12月01日執筆 2020年04月18日修正