労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問13

加齢による高齢者の生理的な変化




問題文
トップ
合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2016年度(平成28年度) 問13 難易度 加齢による生理的な変化に関する初歩的な問題である。常識的な知識で正答できるだろう。
加齢による生理的な変化

問13 加齢による高齢者の生理的な変化などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)平衡感覚が低下し、転びやすくなる。

(2)骨量が減少し、骨折しやすくなる。

(3)体温調節機能が低下し、熱中症が起こりやすくなる。

(4)低音域の音から聞こえにくくなり、話が聞き取りにくくなる。

(5)水晶体の透明度が低下し、薄暗い場所で物が見えにくくなる。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。平衡感覚とは、体を平衡に保つ感覚である。これが衰えると、反射的に体のバランスをとることが難しくなる。

高齢になると、視力が衰えたり足の裏の感覚が衰えたりし、さらに、平衡機能をつかさどる小脳の機能も低下するすること等により、平衡感覚がつかみにくくなる。

なお、高齢で転びやすくなるのは、平衡感覚のみならず、運動機能の低下も原因の一つである。

(2)正しい。骨量の減少には様々な理由があるが、加齢はそのひとつである。歳をとると、身体のホルモンが変化するために、骨量が減少する。また、胃酸分泌の低下、腸の吸収能の低下、腎臓での尿へのカルシウム排泄の増加なども、加齢による骨量低下の原因となる。

(3)正しい。熱中症の年代別の発生状況をみると、若年層は屋外での運動や仕事中に発生することが多いが、高齢者では室内でも発生することが知られている。これは、高齢者は、暑さに対する感覚が鈍くなることの他、暑さによる体温調整機能も低下していること等による。具体的には、高齢者では暑い環境でも発汗量や血流量が増えにくくなるのである。

(4)誤り。加齢による難聴は、以下のような特徴がある。低音域の音から聞こえにくくなるという本肢は誤っている。

① 高い周波数から聞こえにくくなる。

② 小さい音は聞こえにくいが、大きな音はうるさく感じる(リクルートメント現象)。

③ 周波数分解能力が落ちる(騒音の中で声が聞き分けにくくなったり、言葉の違いが分かりにくくなったりする)。

④ 時間分解能力がおちる(早口の声が聞き取りにくくなる)。

(5)正しい。水晶体は蛋白質含有量が33%の高蛋白質の組織である。蛋白質は紫外線などを受けると AGE(Advanced Glycation End Products)が生じる。これにより、水晶体は黄色色調が増加する。本肢は誤っているとは言えない。

2019年12月01日執筆 2020年04月18日修正 2020年09月06日修正