労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2014年 問3

一般の定期健康診断




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

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2014年度(平成26年度) 問 3 一般の定期健康診断に関する基本的な知識を問う問題である。
一般の定期健康診断
2020年05月26日執筆

問3 労働衛生コンサルタントとして、労働衛生に関する指導を行う事業場から、一般定期健康診断に関して、その実施及び実施後の措置について意見を求められている。以下の各設聞に答えよ。

  • (1)この事業場の事業者が以下の①~③の者に一般定期健康診断を受診させるべき義務があるか否か、また、③については受診させる義務がある場合にどのように受診させるべきかについても述べよ。
    ① 当該事業場に派遣されている労働者

    • 【解説】
      1 当該事業場に派遣されている労働者
      これは、法令事項である。安衛法の義務は原則として雇用者(派遣元)にあるが、その一部が労働者派遣法第45条で派遣先に義務付けられている。
      従って、同条に規定があれば派遣先に義務があり、なければ原則に戻って派遣元に義務があることになる。一般の定期健康診断については、同条に規定がないので派遣元に義務がある。なお、特殊健康診断については派遣先に義務があることも押さえておこう。
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    • 【解答例】
      1 当該事業場に派遣されている労働者
      派遣労働者の一般の定期健康診断は、派遣元事業者に実施義務があるので、実施する義務はない。
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  •   ② 短時間労働者(パート・アルバイト)

    • 【解説】
      2 短時間労働者(パート・アルバイト)
      一般の定期健康診断は「常時使用する労働者」に対して行う必要がある。常時使用する労働者とは、平成26年7月24日基発0724第2号「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」に、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であるとされている。
      ① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第45条において引用する同規則第13条第1項第2号(現第3号)に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては6月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
      ② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業 務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
        なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に 従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと。
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    • 【解答例】
      2 短時間労働者(パート・アルバイト)
      次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であれば実施しなければならない。
      ① 期間の定めのない労働契約により使用される者、1年(一定の有害業務に従事する者は者にあっては6月。以下同じ。)以上の契約期間である者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者又は現に1年以上引き続き使用されている者であること。
      ② 1週間の労働時間数が、その事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
        なお、これに該当しなくても、上記の①の要件に該当しその割合がおおむね2分の1以上である者に対しても実施することが望ましい。
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  •   ③ 休業中の労働者(育児休業、療養等)

    • 【解説】
      3 休業中の労働者(育児休業、療養等)
      休業中の労働者については、平成4年3月13日基発第115号「育児休業等により休業中の労働者に係る健康診断の取扱いについて」に定期健康診断を実施しなくてもさしつかえないとされているが、その場合には、休業修了後、速やかに当該労働者に対し、定期健康診断を実施しなければならないとされている。
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    • 【解答例】
      3 休業中の労働者(育児休業、療養等)
      休業中の労働者については、定期健康診断を実施しなくてもさしつかえない。ただし、休業修了後、速やかに定期健康診断を実施しなければならない。
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  • (2)健康診断を実施した結果、再検査又は精密検査を行う必要があると判断された場合、健康管理の観点から、その労働者への対応について述べよ。

    • 【解説】
      健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針通達)」(平成8年10月1日:最終改正平成29年4月14日))には、「事業者は、就業上の措置を決定するに当たっては、できる限り詳しい情報に基づいて行うことが適当であることから、再検査又は精密検査を行う必要のある労働者に対して、当該再検査又は精密検査受診を勧奨するとともに、意見を聴く医師等に当該検査の結果を提出するよう働きかけることが適当である。」とされている。
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    • 【解答例】
      就業上の措置を決定するに当たって、できる限り詳しい情報に基づいて行うことが適当であることから、再検査又は精密検査を行う必要のある労働者に対しては、当該再検査又は精密検査受診を勧奨するとともに、意見を聴く医師等に当該検査の結果を提出するよう働きかけることが適当であると考える。
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  • (3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取に関して、以下の①~③について述べよ。
    ① 意見を聴く医師等とは、どのような者か。

    • 【解説】
      これは(2)の解説に示した「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」の2の「(3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取」に従って解答すればよい。
      1 意見を聴く医師等とは、どのような者か
      事業者は、産業医の選任義務のある事業場においては、産業医が労働者個人ごとの健康状態や作業内容、作業環境についてより詳細に把握しうる立場にあることから、産業医から意見を聴くことが適当である。
      なお、産業医の選任義務のない事業場においては、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師等から意見を聴くことが適当であり、こうした医師が労働者の健康管理等に関する相談等に応じる地域産業保健センターの活用を図ること等が適当である。
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    • 【解答例】
      1 意見を聴く医師等とは、どのような者か
      産業医の選任義務のある事業場においては、産業医から意見を聴く。産業医の選任義務のない事業場においては、地域産業保健センターの活用を図ること等が考えられる。
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  •   ② 医師等に対して事業者から提供すべき情報は、どのようなものか。

    • 【解説】
      2 医師等に対して事業者から提供すべき情報は、どのようなものか
      事業者は、適切に意見を聴くため、必要に応じ、意見を聴く医師等に対し、労働者に係る作業環境、労働時間、労働密度、深夜業の回数及び時間数、作業態様、作業負荷の状況、過去の健康診断の結果等に関する情報及び職場巡視の機会を提供し、また、健康診断の結果のみでは労働者の身体的又は精神的状態を判断するための情報が十分でない場合は、労働者との面接の機会を提供することが適当である。また、過去に実施された安衛法第66条の8、第66条の9及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導等の結果又は労働者から同意を得て事業者に提供された法第66条の10第1項の規定に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査の結果に関する情報を提供することも考えられる。
      なお、安衛則第51条の2第3項等の規定に基づき、事業者は、医師等から、意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供する必要がある。
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    • 【解答例】
      2 医師等に対して事業者から提供すべき情報は、どのようなものか
      労働者に係る作業環境、労働時間、労働密度、深夜業の回数及び時間数、作業態様、作業負荷の状況、過去の健康診断の結果等の情報を提供する。過去に実施された医師による面接指導等の結果や労働者から同意を得て事業者に提供されたストレスチェックの結果に関する情報の提供も考えられる。
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  •   ③ 医師等の意見は、どこに記録するのか。

    • 【解説】
      3 医師等の意見は、どこに記録するのか
      これは法律事項である。安衛則第51条の2第1項第2号により、聴取した医師の意見は健康診断個人票に記載しなければならない。
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    • 【解答例】
      3 医師等の意見は、どこに記録するのか
      健康診断個人票に記載する。
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  • (4)医師等から聴取すべき健康診断の結果に基づく就業上の措置について三つに区分し、その内容を述べよ。

    • 【解説】
      これは(2)の解説に示した「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」の2の(3)のハに示された下記の表に従って解答すればよい。
      就業区分 就業上の措置の内容
      区分 内容
      通常勤務 通常の勤務でよいもの
      就業制限 勤務に制限を加える必要のあるもの 勤務による負荷を軽減するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講じる。
      要休業 勤務を休む必要のあるもの 療養のため、休暇、休職等により一定期間勤務させない措置を講じる。
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    • 【解答例】
      就業上の措置を「通常勤務」、「就業制限」及び「要休業」に区分する。それぞれ、その内容は以下の通りである。
      1 通常勤務
      通常の勤務でよいもの。
      2 就業制限
      勤務に制限を加える必要のあるもの。
      具体的には、勤務による負荷を軽減するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講じる。
      3 要休業
      勤務を休む必要のあるもの。
      具体的には、療養のため、休暇、休職等により一定期間勤務させない措置を講じる。
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  • (5)健康診断の実施に闘し、事業者が講ずべき措置及び留意事項を、箇条書きで五つ挙げよ。(ただし、上記(2)再検査又は精密検査、(3)医師等からの意見聴取及び(4)就業上の措置を除く。)

    • 【解説】
      これは(2)の解説に示した「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」の2の「(5)その他の留意事項」のイからホ(ハを除く)に示された事項に従って解答すればよい。
      ただ、5つには1つ足りないので、「(4)就業上の措置の決定等」から「健康診断結果を理由とした不利益な取扱いの防止」を入れて5つにするのが妥当な線だろう。
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    • 【解答例】
      1 健康診断結果の通知
      労働者が自らの健康状態を把握し、自主的に健康管理が行えるよう、健康診断を受けた労働者に対して、異常の所見の有無にかかわらず、遅滞なくその結果を通知すること。
      2 保健指導
      労働者の自主的な健康管理を促進するため、一般健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対して、医師又は保健師による保健指導を受けさせること。この場合、保健指導として必要に応じ日常生活面での指導、健康管理に関する情報の提供、健康診断に基づく再検査又は精密検査、治療のための受診の勧奨等を行う。また、その円滑な実施に向けて、健康保険組合その他の健康増進事業実施者等との連携を図ること。
      労働者災害補償保険法に基づく特定保健指導及び高齢者の医療の確保に関する法律に基づく特定保健指導を受けた労働者については、労働安全衛生法に基づく保健指導を行う医師又は保健師にこれらの特定保健指導の内容を伝えるよう働きかける。
      3 健康情報の保護
      健康情報の保護に留意し、その適正な取扱いを確保する必要がある。また、就業上の措置の実施に当たって、産業保健業務従事者(産業医、保健師等、衛生管理者その他の労働者の健康管理に関する業務に従事する者)以外の者に健康情報を取り扱わせるときは、これらの者が取り扱う健康情報が就業上の措置を実施する上で必要最小限のものとなるよう、必要に応じて健康情報の内容を適切に加工した上で提供する等の措置を講ずる必要があり、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の加工前の情報や詳細な医学的情報は取り扱わせてはならない。
      4 健康診断結果の記録の保存
      健康診断結果の記録を保存しなければならない。このとき、健康診断結果には医療に関する情報が含まれることから、安全管理措置等について「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を参照することが望ましい。
      5 健康診断結果を理由とした不利益な取扱いの防止
      健康診断において把握した労働者の健康情報等に基づき、その労働者の健康の確保に必要な範囲を超えて、その労働者に対して不利益な取扱いを行うことはあってはならない。
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