労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問14

人体の免疫




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合格

 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問14 難易度 人体の免疫に関する知識問題である。近年はあまり出題されていない。医師以外には難問か。
人体の免疫

問14 人体の免疫に関する次の記述のうち、誤っているも のはどれか。

(1)免疫には、リンパ球が産生する抗体によって体を防御する体液性免疫と、リンパ球などが直接病原体などを攻撃する細胞性免疫がある。

(2)抗原とは、免疫に関係する細胞によって異物として認識される物質のことで、細菌やウイルスの表面に存在するたんぱく質や糖質などがある。

(3)抗体とは、体内に入ってきた抗原に対して体液中に放出される免疫グロブリンと呼ばれるたんぱく質のことで、抗原に特異的に結合して抗原の働きを抑える。

(4)病気の予防や治療に抗原抗体反応を用いるのがワクチン療法である。

(5)リンパ球には、抗体を産生する T リンパ球と、細胞性免疫の作用を持つ B リンパ球がある。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。「『免疫』とは『疫』すなわち『疫病―流行性伝染病』から免れるための人体に内在した仕組み」のことである1)。免疫は「基本免疫(自然免疫)」と「獲得免疫」に分かれ、獲得免疫はさらにヘルパーT細胞の種類や作用の仕方によって「細胞性免疫」と「体液性免疫(液性免疫)」に分けられる。

細胞性免疫は、細胞傷害性T細胞(CTL)やマクロファージが異常細胞を攻撃・排除する局所的な免疫反応である。ヘルパーT細胞の一種である「Th1細胞」が、樹状細胞の抗原を認識してサイトカインを産生し、マクロファージやCTLなどを活性化する。一部のCTLは、メモリーT細胞となって、再び感染したときに迅速に反応する。

体液性免疫は、B細胞と抗体が中心となる免疫反応である。「Th2細胞」が産生するサイトカインによって、B細胞が刺激されて形質細胞へ分化し、大量の抗体を産生して全身に広げる。B細胞の一部は、メモリーB細胞となる。

なお、基本免疫とは、受容体を介して、侵入してきた病原体や異常になった自己の細胞をいち早く感知し、それを排除する仕組みである。特定の病原体に繰り返し感染しても、この免疫の能力が増強することはない。

(2)正しい。抗原とは、一言で言えば免疫応答を引き起こす物質のことである。具体的にはウイルス、細菌、カビ、微生物、単細胞生物、寄生虫、花粉など自然界に数多く存在し、これらはタンパク質や多糖から成り立つと言ってよい。なお、化学物質や粉じんも抗原となり得る。2)

(3)正しい。抗体とは、体内に入ってきた抗原に対して体液中に放出される免疫グロブリン(Ig:Immunoglobulin)と呼ばれるたんぱく質のことで、、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEの5クラスがあり、その働く役割、場所、時期等に違いがある。

(4)正しい。ワクチン療法の基本的な考え方は、特定の抗原に対して、予めその抗原に対する免疫力を高めておこうというものである。具体的には、病気の予防や治療に抗原抗体反応を用いるものである。

(5)誤り。Bリンパ球(B細胞)は、抗原が侵入してくると抗体を作る。一方、Tリンパ球(T細胞)は、自らが体を防御し、一部はその抗原を記憶する。説明が逆になっている。

  1. 1)高橋秀実「基本免疫と獲得免疫」(J Nippon Med Sch,2002)
  2. 2)山田幸宏監修「看護のためのからだの正常・異常ガイドブック」(サイオ出版2016年)
2020年05月22日執筆