労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問15

ヒトの生体リズム




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問15 難易度 ヒトの生体リズムに関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
ヒトの生体リズム

問15 ヒトの生体リズムに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)体温は早朝の睡眠時に最低となり、朝食後に急上昇し、その後は緩やかな上昇に変わり、夕刻後は下降に転じる。

(2)概日リズムは、体温及び睡眠・覚醒について確認されている。

(3)概日リズムの周期は、ヒトの場合、24.2 ~ 25.0 時間である。

(4)睡眠相後退症候群は、概日リズム睡眠障害の一つである。

(5)体内時計は、脳下垂体にある。

正答(5)

【解説】

(1)正しいとしてよい。SCALES E. W.によると、(成人の場合)体温には日周期があり、午前3時から7時頃までが最も低く、それを過ぎると徐々に上昇し、午後2時から6時頃が最も高い。なお、その変動差は最大0.8℃程度であるとされている1)

もちろん、運動、気温、食事、入浴、睡眠、女性の生理周期、感情の変化、発熱する疾病への罹患などによっても変動することは当然である。

なお、本肢に「朝食後に急上昇」とある。昼食や夕食後にも体温は上昇するが、朝食後ほどには上昇しない。

(2)正しい。睡眠・覚醒はよく知られているが、(1)に示した体温などの「自律神経系」、「内分泌ホルモン系」、「免疫・代謝系」などでも概日リズムは確認されている2)

(3)正しいとしてよいであろう。ヒトの概日リズムの周期については、一般に25時間説が広く信じられているが、現在では、日本人の場合、24時間10分前後(23.9~24.3時間)とされている3)

ただ、試験協会に望みたいが、この種のテキストによって微妙に異なる数字を正しい肢として出すなら、明確に言い切るのではなく「約」とか「程度」とかをつけるべきであろう。少数ではあるが、概日リズムが24時間よりも短い者もいるのである。有効桁数3桁で言い切られると、正しいとすべきか誤っているとすべきか受験生としては悩むだろう。

(4)正しい。本多4)によれば、概日リズム睡眠障害とは、「睡眠の経過自体には特別の異常は見られず、毎日の睡眠時間はほぼ一定しているものの、入眠時刻と覚醒時刻が、その患者と同じ環境で生活している他の大多数の人々にとって望ましいとされる睡眠・覚醒の時間帯と同期しないもの」をいう。そして、「この中、極端な宵っぱりで朝寝坊型の睡眠覚醒リズムが持続し、いろいろ努力しても矯正困難な場合を睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome)と」呼ぶ。

(5)誤り。体内時計は、目、心臓、肺などの末梢器官など、生殖細胞を除く各部に存在している。そして、脳の視床下部にある視交叉上核が、概日リズムの中枢としての役割を果たしている。すなわち、視交叉上核が時刻に関する情報を全身に送り出し、各臓器に存在する概日時計の位相を調律していると考えると分かりやすいだろう。

  1. 1)SCALES E. W.「Human Circadian Rhythms in Temperature, Trace Metals, and Blood Variable」(J Appl Physiol 65,1988)
  2. 2)早川達郎「睡眠・覚醒リズム障害」(e-ヘルスネット)
  3. 3)国立精神・神経医療研究センター「2012年8月14日プレスリリース」(国立精神・神経医療研究センターWEBサイト)
  4. 4)本多裕「概日リズム睡眠障害(Circadian rhythm sleep disorders)」(日本睡眠学会WEBサイト)
2020年05月22日執筆