労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問09

高齢者の視覚の性質等




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問09 難易度 高齢者の視覚の性質や配慮すべき事項に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
高齢者の視覚の性質等

問09 高齢者の視覚の性質や配慮すべき作業環境に関する 次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)高齢者は、若年者よりもグレアを感じにくい。

(2)高齢者は、若年者よりも高い作業面照度を必要とする。

(3)高齢者は、若年者よりも高いコントラストを必要とする。

(4)高齢者は、若年者よりも焦点調節可能な範囲が狭い。

(5)高齢者は、若年者よりも焦点を合わせる速さ(調節緊張速度)が遅い。

正答(1)

【解説】

(1)誤り。高齢者は、一般に目の水晶体が濁ってくるため、視野内に輝度の高い光源があると、その光が眼球内で散乱する傾向がある。高齢になるほどその散乱が大きくなり不快に感じるようになる。

(2)正しい。一般に、加齢に伴い、網膜に到達する光の量は減少していくため、高齢者の作業には若年者よりも高い照度が必要となるとされている。

(3)正しい。高齢者になると、文字と背景のコントラストが低くなると、若者に比して読みにくくなる。これは印刷物の場合でもVDTの場合でも同じである。

(4)正しい。これは説明するまでもないであろう。ヒトがものを見ようとして焦点を合わせるためには、網様体筋により水晶体の厚みを調節する機能と、対象を両眼で注視するために遠近に応じて眼球を回転させる両眼軸の輻較機能が必要となる。

加齢に伴い、水晶体の弾力性が低下し、毛様体筋も弱体化するため焦点調節力が低下する。また、この調節と輻輳の比率も低下し、近点視力が著しく劣化する。これがいわゆる老眼である。

とりわけ、50歳以降では調節力の低下のために物体に焦点を合わせにくくなり、年齢と共にその程度が増加する。

(5)正しい。一般には、加齢により調節緊張時間は遅くなる。従って、本肢は正しいものと思われる。

ただし、中高年者の場合は調節力が落ちているために近点と遠点の差がなく、むしろ調節時間が短縮している場合もある。やや疑問がないわけではないが、(1)が明らかに誤っているので、本肢は正しいとしておく。

  1. 1)自動車安全運転センター「運転者の身体能力の変化と事故、違反の関連、及び運転者教育の効果の持続性に関する調査研究報告書」(2000年3月)
2020年05月19日執筆