労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問08

職場における熱中症対策




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問08 難易度 職場における熱中症対策に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
職場における熱中症対策

問08 職場における熱中症対策に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

(1)蒸し暑い作業場で汗をかきながら重量物の運搬作業をしていたら、作業後に足にこむら返りが起こったので、水を大量に飲んだ。

(2)日照がある屋外作業場において、黒球温度と湿球温度により WBGT 値を計算した。

(3)炎天下で作業をしていたら同僚が引き付けを起こして真っすぐに歩けなくなったので、すぐに作業を休止し、日陰で休ませ、回復を待った。

(4)真夏の炎天下で長時間の監視作業を行うことになったので、薄手の長袖・長ズボンの作業服から半袖・半ズボンに変更した。

(5)通気性・透湿性の低いつなぎ服を着て暑熱作業をしていたので、測定した WBGT 値に、プラスの補正値を加えた。

正答(5)

【解説】

本問は、平成21年6月19日基発第0619001号(一部改正令和2年5月27日基発0527第2号)「職場における熱中症の予防について」(以下、本問の解説において「旧予防通達」と略す。)等からの出題であると思われるが、通達の内容を知らなくとも、内容はほぼ常識問題のレベルである。

なお、旧予防通達は令和3年4月20日基発0420第3号「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」(以下、本問の解説において「新通達」と略す。)によって廃止されているが、本問の趣旨に影響はない。

この解説は、新通達の別紙「職場における熱中症予防基本対策要綱」(以下「要綱」という。)によって解説している。

(1)適切ではない。こむら返りになったときや、大量に汗をかいたりしたときに、水分のみを補給することは、低ナトリウム症となるリスクがある。

(2)適切ではない。WBGTの日照がある屋外作業場における算出式は、

WBGT[℃]=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

である。従って本肢は誤りである。

(3)適切ではない。日本救急医学会では2000年以降、熱中症の重症度を「具体的な治療の必要性」の観点から、Ⅰ度(現場での応急処置で対応できる軽症)、Ⅱ度(病院への搬送を必要とする中等症)、Ⅲ度(入院して集中治療の必要性のある重症)に分類している。

このうち、Ⅱ度は「体がぐったりする、力が入らないなどがあり、『いつもと様子が違う』程度のごく軽い意識障害を認めることがある」とされている。少しでも作業者の意識がおかしいと思われる場合には、Ⅱ度以上と判断し病院へ搬送する必要がある。

(4)適切ではない。辻他1)「中程度運動時による温熱ストレスはスポーツウエアー(長袖・長ズボン:引用者注)着用により高まるが、軽運動時ではスポーツウエアーと半裸体(水着着用:引用者注)との差異は認められなかった」とする。これは、ほぼ真夏の炎天下の状況を再現して行った実験によるものである。

一方、半袖・半ズボンでは、日光の紫外線による日焼が起きる可能性がある。このため、長時間の監視作業のようなあまり運動をしない作業では、薄手の長袖・長ズボンの作業服から半袖・半ズボンに変更することは、日焼の影響を考慮すると好ましいことではない。

(5)適切である。要綱の表1-2には、「単層の SMS 不織布製のつなぎ服」を着用する場合に、WBGT 値に加えるべき着衣補正値として、3を加えることとされている。

  1. 1)辻道夫他「WBGT28℃以上の輻射環境下における四肢部露出の有無が運動時の温熱ストレスに与える影響」(日生気誌51(4)127-139,2015)
2020年05月19日執筆 2021年04月24日改訂