労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問07

騒音による健康被害とその対策




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合格

 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問07 難易度 騒音による健康被害と対策に関するやや高度な知識問題。合否を分けるレベルか。確実に正答したい。
騒音による健康被害

問07 騒音に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)騒音は、精神疲労を生じさせ、自律神経系や内分泌系にも影響を与えることがある。

(2)音響性外傷は、事故などで突発的な強大音にばく露することにより生じる。

(3)作業環境測定では、A 測定平均値は、測定した等価騒音レベルの幾何平均値とする。

(4)騒音ばく露による聴覚損失には、内耳の有毛細胞の可逆性の変化による一時的聴覚閾値移動と、不可逆性変化による永久的聴覚閾値移動がある。

(5)騒音対策として、騒音発生源対策、伝ぱ経路対策及び受音者対策を実施する。

正答(3)

【解説】

(1)適切である。欧州安全衛生機構ファクトシート「職場の騒音対策入門」に、騒音は「作業におけるストレスの原因となる要素である」とされているように、騒音は精神的なストレスを引き起こすことがある。

そして、精神的なストレスは、自律神経系や内分泌系にも影響を与えることがあることはよく知られている1)

(2)適切である。音響性外傷(急性音響性難聴)は、大きな音を急に聞くことで発症する。近年はロックコンサートやヘッドフォンによって比較的若年層に発症することもあり、コンサート難聴、ディスコ難聴、ロック難聴などと呼ばれることもある。

本肢は、これらとは違い、耳栓をせずに銃を撃ったり、至近距離で爆発事故が起きるなどのケースだが、130 dB SPL以上の音では、ごく短時間のばく露でも難聴が起きる。

なお、急性の難聴は軽ければ比較的治癒しやすいが、突発的な強大音によるものは回復しないことがあるので予防が重要となる。

(3)適切ではない。令和5年4月20日基発0420第2号「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」による「騒音障害防止のためのガイドライン(※)に示されているように、A測定の目的は「単位作業場所の平均的な作業環境を調べる」ことである。

※ なお、出題当時は平成4年10月1日基発第546号「騒音障害防止のためのガイドラインの策定について」が有効であった。その後、2021年度に「騒音障害防止のためのガイドライン見直し検討会」が開催され、2022年3月22日に「騒音障害防止のためのガイドライン見直し方針」が作成されて、本文の通達により改訂されているが、結論に変わりはない。

そして、測定結果等の記録に関して「『⑤ 測定結果』については、A測定の測定値、その算術平均値及びB測定の測定値を記録する」とあることからも分かるように、「A測定平均値」は測定した各測定点の測定結果の等価騒音レベルの(幾何平均ではなく)算術平均を算定する。

(4)適切である。騒音ばく露による聴覚損失のうち、内耳の有毛細胞の可逆性の変化による一時的聴覚閾値移動(TTS:TemporaryThresholdshift=一過性の聴力損失)は、通常は1~2時間程度で回復し、少なくとも10日以内に元の張力に回復する。一方、充分に回復しないまま90~100dB程度の騒音へのばく露が数年間続くと、不可逆性変化による永久的聴覚閾値移動となる。

(5)適切である。(3)の解説に示した通達に付されている「騒音障害防止のためのガイドラインの解説」の表1には、代表的な騒音対策の方法として、騒音発生源対策、伝ぱ経路対策及び受音者対策が示されている。

  1. 1)例えば、小牧元「こころとからだ」(e-ヘルスネット)など
2020年05月18日執筆 2023年06月03日最終改訂