労働衛生コンサルタント試験 2013年 労働衛生一般 問10

疫学




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問10 難易度 疫学調査に関する各種の指標についての問題。過去問にもあまり類例がなく、難問だと思われる。
疫学調査の指標

問10 疫学に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)症例対照研究の指標として用いられるオッズ比は、相対危険度の推定値である。

(2)感度(敏感度)とは、検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合である。

(3)標準化死亡比(SMR)は、観察集団の死亡数を期待死亡数で割ったものである。

(4)致命率は、疾患にかかった者のうち、その疾患が原因で死亡した者の割合である。

(5)寄与危険度は、ばく露群の罹患率から非ばく露群の罷患率を差し引いた値である。

正答(2)

【解説】

(1)正しい。コホート研究と症例対照研究で、指標として用いられるオッズ比の意味は異なっている。症例対照研究のオッズ比(Odds ratio)とは、調査を行う時点において、「発症していない者のうちばく露している者の割合」に対する「発症している者のうちばく露している者の割合」比である。

下表で、A、B、C及びDを母集団とし、そこから抽出したサンプルを、それぞれa、b、c及びdとし、発症率が十分に小さいとすると、相対的危険の推定値は次式のようになる。

相対的危険度(推定値)=aa+bcc+dabcd=acbd

要因 発症(罹患)
あり なし
ばく露群
非ばく露群

相対危険度の直接的な値ではないが、サンプルにバイアスがなく、疾病の発症率が少ないことを前提として、相対危険度の推定値とみなすことができる。

(2)誤り。感度(敏感度)(sensitivity)とは、実際に疾病を有する者に対する検査陽性者の割合である。

感度(敏感度)=aa+c×100

本肢の検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合は、陽性反応適中度(positive predictive value)と呼ばれる。

陽性反応適中度=aa+b×100

実際の疾病(罹患)
あり なし
検査結果 陽性
陰性

(3)正しい。標準化死亡比(standardized mortality ratio:SMR)は、観察集団の死亡数を期待死亡数で割ったものである。言い換えれば、観察の対象となっている集団の死亡率が、基準となる集団の死亡率と比較して、どの程度高いかを示す指標である。

(4)正しい。致命率は、疾患にかかった者のうち、その疾患が原因で死亡した者の割合である。なお、死亡率は、ある疾患が原因で死亡した者の全人口に対する割合であり、異なる概念であることに留意すること。致命率と死亡率は、分子(ある疾患による死者)は同じだが、分母(ある疾患の患者か、全人口か)が異なる。

(5)正しい。寄与危険度は、ばく露群の罹患率から非ばく露群の罷患率を差し引いた値である。言葉で表すと分かりにくいが、(1)の解説で示した表の記号を用いて式で表すと次のようになる。

寄与危険度=AA+BCC+D

2021年02月20日執筆