労働衛生コンサルタント試験 2012年 労働衛生一般 問25

個人用保護具の選定




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問25 難易度 個人用保護具の選定についての初歩的な知識問題。本問に正答できないようでは合格はおぼつかない。
個人用保護具の選定

問25 有害因子に対する防護に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)ナノマテリアルを取り扱う作業では、ゴーグル型保護めがねを着用する。

(2)レーザーを取り扱う作業では、レーザーの波長に適したレーザー用保護めがねを選定する。

(3)放射線の外部被ばくを低減するために、呼吸用保護具を使用する。

(4)石綿が吹き付けられた建築物から石綿の除去作業を行う場合に、浮遊固体粉じん防護用密閉服を使用する。

(5)会話が必要な騒音職場では、2種(EP-2)の耳栓を使用する。

※ JIS T 8161:1983 が JIS T 8161:2020に改訂されたため、(5)は意味のない肢となっている。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。「ナノマテリアルの労働現場におけるばく露防止等の対策について」(平成21年3月31日基発第0331013号)の3の(4)の「エ 保護具の使用」の「(ウ)ゴーグル型保護眼鏡」に、「労働者をナノマテリアル関連作業に従事させる場合において、ナノマテリアル等の粉体、ナノマテリアル等を含む飛沫等が当該労働者の目に入るおそれがあるときは、当該労働者にゴーグル型保護眼鏡を使用させること」とされている。

(2)正しい。レーザー用保護めがねには、対応する波長とその波長における光学濃度が示されている。対象となるレーザーの波長により、必要光学濃度より大きな光学濃度の保護めがねを使用しなければならない(※)

※ 石場義久「レーザー用保護めがねの使用時における留意点」(日レ医誌 Vol.40 No.2 2019年)など参照。

なお、昭和61年1月27日基発第39号「レーザー光線による障害の防止対策について」では、レーザーのクラスごとに「レーザー光線の種類に応じた有効な保護眼鏡を作業者に着用させること」と記述されている。

(3)誤り。放射線の外部被ばくとは、身体のの放射線源からの被ばくである。外部被ばくを低減するために、呼吸用保護具は役に立たない。

呼吸用保護具によって低減できるのは内部被ばくである。

※ なお、電離則第38条は放射性物質飛沫等の飛来のおそれがある場所について、保護具の使用を定めているが、平成25年4月12日基発0412第1号「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について」は、本条について「本条は、汚染の除去の作業と緊急作業に関して、呼吸用保護具の備付けと使用を規定したものであるが、これらの作業のみならず、施設又は設備の保守点検作業等においても第3条第3項の限度を超えて汚染された空気を吸入する作業が想定されるため、このような作業において呼吸用保護具が使用されずに労働者が被ばくすることのないよう、呼吸用保護具の備付けと使用が必要な作業の範囲を改めたものであること」としている。

(4)正しい。平成26年9月12日基安化発0912第1号「石綿粉じんのばく露防止のための適正な保護衣の使用について」において、「石綿則第6条により措置される隔離空間の内部など石綿粉じんの発生量が多い作業場所で使用すべき保護衣は、(中略)日本工業規格 JIS T 8115 の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)同等品以上のものであること」とされている。

本肢の「石綿が吹き付けられた建築物から石綿の除去作業を行う場合」は石綿則第6条第1項(第一号)に該当する。

【石綿障害予防規則】

(作業の届出)

第5条 事業者は、次に掲げる作業を行うときは、あらかじめ、様式第一号による届書に当該作業に係る解体等対象建築物等の概要を示す図面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 解体等対象建築物等に吹き付けられている石綿等(石綿等が使用されている仕上げ用塗り材(第六条の三において「石綿含有仕上げ塗材」という。)を除く。)の除去、封じ込め又は囲い込みの作業

 解体等対象建築物等に張り付けられている石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材(耐火性能を有する被覆材をいう。)等(以下「石綿含有保温材等」という。)の除去、封じ込め又は囲い込みの作業(石綿等の粉じんを著しく発散するおそれがあるものに限る。)

 (略)

(吹き付けられた石綿等及び石綿含有保温材等の除去等に係る措置)

第6条 事業者は、次の作業に労働者を従事させるときは、適切な石綿等の除去等に係る措置を講じなければならない。ただし、当該措置と同等以上の効果を有する措置を講じたときは、この限りでない。

 前条第一項第一号に掲げる作業(囲い込みの作業にあっては、石綿等の切断等の作業を伴うものに限る。)

 前条第一項第二号に掲げる作業(石綿含有保温材等の切断等の作業を伴うものに限る。)

2及び3 (略)

(5)意味のない肢である。出題当時のJIS T 8161:1983には、表1に耳栓の分類として「低音から高音までを遮音するもの」(1種EP-1)と「主として高音を遮音するもので、会話域程度の低音を比較的通すもの」(2種EP-2)の2種類が定められていた。このため、出題当時は正しい肢であった。

その後、JIS T 8161:1983 がJIS T 8161:2020に改訂され、耳栓の製品ごとの性能の測定方法が規定されるようになり、それぞれの現場の騒音の状況に応じた製品が選択できるようになった。このため、現在では意味のない肢となっているが、現実には1種、2種の表示のある製品の販売も行われており、現在でも必ずしも誤りとはいえない。

※ 詳細は、「労働衛生保護具の種類と性能」を参照されたい。

2022年01月12日執筆