労働衛生コンサルタント試験 2012年 労働衛生一般 問15

有害因子とそれによる疾病




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 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問15 難易度 有害因子による疾病のうちでも基本的な内容である。やや難問ではあるが、正答しておきたい。
有害因子による疾病

問15 有害因子Aとそれにさらされる業務による疾病Bとの次の組み合わせのうち、適切でないものはどれか。

     
(1) ベンゾトリクロリド   肺がん
(2) ベンゼン   白血病
(3) 塩化ビニル   肝血管肉腫
(4) ビス(クロロメチル)エーテル   尿路系腫瘍
(5) 電離放射線   甲状腺がん

正答(4)

【解説】

労基則別表第1の2は、業務上の疾病の範囲を定めており、職業病リストと呼ばれている。

その第七号にがん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による“がん”が定められている。本問は、この第七号に関する問題である。

【労働基準法】

(療養補償)

第75条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

【労働基準法施行規則】

第35条 法第七十五条第二項の規定による業務上の疾病は、別表第一の二に掲げる疾病とする。

別表第1の2 (第三十五条関係)

一~六 (略)

 がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病

1~4 (略)

 ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務による肺がん

 (略)

 ベンゾトリクロライドにさらされる業務による肺がん

 (略)

 ベンゼンにさらされる業務による白血病

10 塩化ビニルにさらされる業務による肝血管肉しゆ又は肝細胞がん

11~13 (略)

14 電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉しゆ、甲状せんがん、多発性骨髄しゆ又は非ホジキンリンパしゆ

15~22 (略)

八~十一 (略)

(1)正しい。労基則別表第1の第7号の7に「ベンゾトリクロライドにさらされる業務による肺がん」が定められている(※)

※ 産業衛生学会は、2001年にベンゾトリクロリドの発がん性分類を第1群とし、発がん性分類の提案において「我が国の工場でベンゾトリクロリド合成作業者に高率の肺がん発生を認めた。(中略)これらの肺がんはベンゾトリクロリド曝露に由来すると考えるのが妥当と判断される」(産衛誌 Vol.43 2001年)としている。

(2)正しい。労基則別表第1の第7号の9に「ベンゼンにさらされる業務による白血病」が定められている。

(3)正しい。労基則別表第1の第7号の10に「塩化ビニルにさらされる業務による肝血管肉しゆ又は肝細胞がん」が定められている。

(4)誤り。ビス(クロロメチル)エーテル(CAS No.542-88-1)について、尿路系腫瘍に関する報告はない。なお、労基則別表第1の第7号の5に「ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務による肺がん」が定められている。

※ 労基則別表第1の第7号では、尿路系腫瘍については、ベンジジン、ベータ-ナフチルアミン、4-アミノジフェニル、4-ニトロジフェニル、オーラミン及びマゼンタについて、これらにさらされる業務が定められている。また、労働基準法施行規則別表第1の2第8号の規定に基づく厚生労働大臣の指定する疾病として、ジアニシジンにさらされる業務による尿路系腫瘍が定められている。

(5)正しい。労基則別表第1の第7号の14に「電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫又は甲状腺がん」が定められている。

2022年01月09日執筆