労働衛生コンサルタント試験 2012年 労働衛生一般 問14

寒冷作業による健康障害の防止




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問14 難易度 寒冷作業は、産業保健の分野でもあまり知られていない分野である。やや難問だったのではないか。
寒冷作業

問14 寒冷作業に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

(1)作業中の寒冷ストレスについて、温度、湿度によって評価した。

(2)作業中に汗をかき始めたが、防寒服を着用していたのでそのまま作業を続けた。

(3)作業中の頻繁な排尿を避けるために、水分の摂取を制限した。

(4)作業中に激しいふるえが起こったので、作業を中止して暖かい休憩室に戻った。

(5)作業中に手指が凍傷になったので、毛織のマフラーでマッサージをした。

正答(4)

【解説】

寒冷作業に関しては、労働安全衛生の分野ではまとまった資料があまりない。内閣府防災情報のページの「寒冷環境下における防災ボランティア活動の安全衛生に関する情報・ヒント集」が参考になる。

(1)適切ではない。作業中の寒冷ストレスは、環境側の要因としては、温度、相対湿度のみならず風速が重要であり、また、屋外では降雨・降雪の影響も大きな要素となる。また、作業者側の要因として、着衣の保温力や作業の代謝量がある。

(2)適切ではない。作業中に汗をかき始めると、衣服のなかに湿気が溜まって体を冷やす原因となる。肌着を着替えるか、汗を拭きとるようにする必要がある。

(3)適切ではない。作業中は多量の汗をかくことがあるので、水分やミネラルを補給しておくことが重要である。

(4)適切である。骨格筋の激しいふるえ(シバリング)は体温低下の危険信号であり、軽度の低体温症と考えられる。速やかに暖かい室内に避難して衣服を着替え、保温に努める必要がある。なお、低体温症が重度な場合は、ヒーターなどで急速に体を温めると復温ショックによる心室細動のリスクが出るので注意すること。

(5)適切ではない。手指に限らず、第Ⅱ度(※)以上の凍傷になった場合に患部をこすると組織の損傷につながる。患部をマッサージをしたり、さすったりしてはならない。凍傷になった場合は、身体を温かい毛布にくるみ、ただちに患部を40~43℃程度の湯内に入れて温めるようにする。

※ 第Ⅱ度の凍傷とは「皮膚の感覚がなくなり、水疱が生じてくる」レベルである。第Ⅰ度の凍傷(皮膚が痒くなったり赤く腫れたりする)であれば、指先を動かしたり手でマッサージして血行の促進に努めた方がよい。手袋や靴下が濡れていたら、できるだけ早く暖かい室内へ戻って取り替える。

なお、山岳で、さらに数時間程度、寒冷の状況中で行動しなければならない場合は、下山するまで湯で温める等の措置を採らない方がよい場合があるので留意すること。

2022年01月09日執筆