労働衛生コンサルタント試験 2012年 労働衛生一般 問16

化学物質による健康影響等




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問16 難易度 有害物質に関する健康影響は頻出事項である。やや高度だが合格のためには正答できるようにしたい。
化学物質の健康影響等

問16 化学物質の有害性に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)2-ブロモプロパンは、男性では精子数減少、女性では月経停止等、生殖機能への影響を及ぼす。

(2)アニリンやジメチルアニリンにより、溶血性貧血やメトヘモグロビン血症が生じる。

(3)四塩化炭素により、多発神経炎が生じる。

(4)ベリリウム及びその化合物により、ベリリウム肺と呼ばれる慢性の症状が生じる。

(5)コバルト及びその化合物により、感作性皮膚炎やぜん息が生じる。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。日本産業衛生学会は、2-ブロモプロパン(CH3CHBrCH3)のを生殖毒性を第1群に分類しており、その根拠として、2-ブロモプロパンがフッ化炭素樹脂の溶剤として使用された電子部品工場の女性労働者 25 名中 16 名に月経停止、男性労働者8名中6名に精子数減少ないし無精子症が認められたこと等を挙げている(※)

※ 日本産業衛生学会「生殖毒性物質の分類提案理由 2-ブロモプロパン」(産衛誌 Vol.55 2013年)

(2)正しい。芳香族化合物のアミノ誘導体のうち、アニリンやジメチルアニリンなどの多くの化学物質がメトヘモグロビン血症を生じさせる(※)ことが判明している。メトヘモグロビンが多量にできる場合は、赤血球にハインツ小体が出現し、続いて赤血球の破壊亢進、すなわち、溶血性貧血が起こることが多い。

※ 昭和51年8月4日基発第565号「芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体による疾病の認定基準について」参照

なお、アニリンは動物に対する反復投与によって溶血性貧血やメトヘモグロビン血症が生じることが確認されている(※)

※ 欧州連合「リスク評価書(Volume 50, 2004)アニリン」(国立医薬品食品衛生研究所 訳)

ジメチルアニリンにより、

(3)誤り。四塩化炭素により、多発神経炎が生じるという報告はない。なお、ヒトで四塩化炭素のばく露により肝硬変を発症した事例報告があり、四塩化炭素ばく露が肝硬変のリスク要因と結論されている。また、動物実験において発がん性、生殖毒性が確認されている。

なお、多発神経炎(多発神経障害)とは、全身の多くの末梢神経に同時に機能不全が起きる疾病であり、急性と慢性がある。慢性の原因物質としては、n-ヘキサン、鉛・砒素・水銀等の重金属があり、急性の原因物質としては有機リン系殺虫剤、TOCP(リン酸トリオルソクレシル)等がある。

(4)正しい。ベリリウム及びその化合物へのばく露により、ベリリウム肺と呼ばれる慢性の症状が生じる(※)

※ 椎野秀一「含ベリリウム物質の安全な取扱い」(J.Vac.Soc.Jpn.(真空)Vol.42 No.11 1999年)等を参照されたい。

(5)正しい。コバルト及びその化合物へのばく露により、感作性皮膚炎やぜん息が生じる(※)

※ 厚生労働省「リスク評価書」の「コバルト及びその化合物(塩化及び硫酸コバルトを除く)」等を参照されたい。

2022年01月10日執筆