労働衛生コンサルタント試験 2012年 労働衛生一般 問09

VDT作業の視環境




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問09 難易度 VDTの視環境に関する基本的な知識問題であるが、問題が誤っているのだろうか。
VDT作業の視環境

問9 VDT作業の視環境に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

(1)画面に照明器具が映り込んで生じるグレアは、直接グレアである。

(2)高輝度物体の映り込みは、両面の鏡面反射率の高いデイスプレイのほうが低いものよりも目立ちにくい。

(3)表面の粗い画面は、滑らかな画面よりも拡散反射が少ない。

(4)画面のコントラストは、画面照度によって変化する。

(5)輝度の値は、測定対象物から測定者までの距離に依存する。

正答(-)

【解説】

本問について、試験協会は(3)を正答(適切な内容)としていたようである。しかし、表面の粗い画面は、滑らかな画面よりも拡散反射が大きいので、誤りの肢である。出題ミスであると思われる。

(1)誤り。厚労省のガイドライン(※)の「解説」によれば、「『グレア』とは、視野内で過度に輝度が高い点や面が見えることによっておきる不快感や見にくさのことで、光源から直接又は間接に受けるギラギラしたまぶしさなどをいう」とされている。輝度が高い光源としては、ディスプレイそのもの、照明器具、窓からの日射などがある。

※ 「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日基発0712第3号)による。なお、出題当時は「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年4月5日基発第0405001号)が有効であった。

これらが直接目に入るものを「直接グレア」といい、光沢面で反射して目に入る場合を「反射グレア」という。画面に照明器具が映り込んで生じるグレアは、反射グレアであり、直接グレアではない。

(2)誤り。高輝度物体の映り込みは、両面の鏡面反射率の高いデイスプレイのほうが低いものよりも目立つ。窪田(※)によれば、TFTカラーLCDの表面は、ガラスより鏡面反射率が数倍高いため、拡散処理を施しても反射のピーク輝度を下げられないという問題が生じたとされる。

※ 窪田悟「平面ディスプレイの人間工学的要件」(照明学会誌 Vol.76 No.10 1992年)

(3)誤り。言葉の意味から分かるだろうが、入射光が反射面で乱反射して様々な方向へ反射することが「拡散反射」である。これに対して、反射面で鏡のように反射することは「正反射(又は鏡面反射)」と呼ばれる。物体の反射面からの反射光には拡散反射光と正反射光があるが、この2つの和は等しくなる。

そして、表面の粗いものは滑らかなものより、拡散反射光が大きくなり、正反射光は小さくなる。グレアは主に正反射光によって起きるので、表面が粗いものの方がグレアは少なくなる。しかし、その分、拡散反射は大きくなっているのである(※)

※ 例えば米原牧子「表面性状パラメータを用いた質感の定量化手法」(精密工学会誌 Vol.82 No.11 2016年)は「正反射成分と拡散反射成分の総和は、表面の凹凸状態に関わらず一定値となる。すなわち、凹凸が小さくなり正反射成分が多くなると光沢は高くなるが、拡散反射成分は減少する」などとしている。

(4)誤り。画面のコントラストとは、文字又は図形の輝度及びそれらと背景との輝度対比のことである。一方、画面照度とは、照明による画面の明るさのことである。コントラストが照度によって変化することなどあり得ない。

(5)誤り。輝度(ブライトネス)とは、画面の明るさそのもののことであり、その値が、測定対象物から測定者までの距離に依存するなどということはない。

2022年01月08日執筆