労働衛生コンサルタント試験 2012年 労働衛生一般 問10

疫学及び疾病統計




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 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問10 難易度 疫学及び疾病統計に関するかなり高度な知識問題であろう。公衆衛生学の専門家以外には難問だろう。
疫学及び疾病統計

問10 疫学や疾病統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)ランダム化比較試験のメタアナリシス(メタ分析)によって得られた結果は、科学的根拠(エビデンス)のレベルが最も高い。

(2)コホート研究では、研究開始時にばく露のある群とない群に分けて追跡する。

(3)症例対照研究は、発生数の少ない疾患の原因究明に有用な研究デザインである。

(4)有病率は、集団の中である一定期間に新たに疾患にかかった者の割合をみる指標である。

(5)ある有害物質による疾病の相対危険度は、ばく露群の患率と非ばく露群の罹患率の比として求める。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。厚生労働省(※)がまとめた各疾患ガイドラインにおけるエビデンスレベルをみても、多くの診療ガイドラインにおいて、質の高いランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス(MA)によって得られた結果は、科学的根拠(エビデンス)のレベルが最も高いとされている。

※ 厚生労働省「各疾患ガイドラインにおけるエビデンスレベルの記載等」(食事摂取基準策定検討会第3回資料)

(2)正しい。(一社)日本疫学会(※)によれば、コホート研究とは、「調査時点で、仮説として考えられる要因を持つ集団(曝露群)と持たない集団(非曝露群)を追跡し、両群の疾病の罹患率または死亡率を比較する方法」と定義されている。

※ (一社)日本疫学会「疫学用語の基礎知識 コホート研究」参照

(3)正しい。症例対照研究とは、症例と対照における危険因子へのばく露の程度を比較する研究方法である(※)。発生数のきわめて少ない疾患の原因究明において、メリットのある研究デザインである。

※ 詳細は、加來浩器「アウトブレイク調査の勧め(第2版)」の「第5章 解析疫学と因果関係の解明」を参照されたい。

(4)誤り。有病率とは、ある一時点において、疾病を有している者の割合である(※)。本肢に記載されているのは、罹患率(一定期間にどれだけの疾病(健康障害)者が発生したかを示す指標)である。

※ (一社)日本疫学会「疫学用語の基礎知識 有病率と罹患率」参照

(5)正しい。(一社)日本疫学会(※)によれば、相対危険とは、「危険因子に曝露した群の罹患リスク(危険)の、曝露していない群の罹患リスクに対する比で示される」とされている。

※ (一社)日本疫学会「疫学用語の基礎知識 相対危険」参照

2022年01月08日執筆