※ イメージ図(©photoAC)
外国人が就労可能な在留資格はいくつかありますが、2019年に追加された在留資格である「特定技能」もそのひとつで、一定の人材不足の業種で働くことができます。
対象の業種としては、現在、介護、建築など12分野が指定されており、2014年に鉄道、林業など4分野が追加されることが決定しています。
この在留資格を得るには、日本語検定や技能検定で一定レベルのものに合格するなどの要件を満たす必要があります。また、特定技能で働く外国人労働者の7割程度は、最初は技能実習の在留資格を得て3年間働き、その後、特定技能に移行しています。
技能実習の在留資格は、技能実習生となってからの期間によって1号から3号までがあります。最初は1号(最長1年)となり、その後から2号(最長2年)に移行し、そこから特定技能の1号(最長5年)に移行して(※)、総計8年間、働くケースが典型的となっています。この場合、技能実習の2号を良好に修了した場合は、在留資格変更許可申請書等を地方出入国管理局に提出するだけで、同職種の分野の特定技能1号へ移行できます。通常の特定技能の1号に必要な技能試験及び日本語能力試験が免除されるのです。
※ 技能実習3号は最長2年だが、3号を終了してから特定技能に移行すると、特定技能の最長期間が3年に短縮され、しかも技能実習は特定技能に比して制約が多い。このため、技能実習3号を経て特定技能に移行するケースは多くない。出入国在留管理庁の「報道発表資料」によると、2022年末時点での技能実習生は 324,940 人であるが、そのうち3号は 75,561 人にすぎない。なお、同時期の特定技能1号は 130,915 人である。
しかしながら、技能実習制度は、現在国会において審議されている技能実習制度法の改正法案で廃止が検討されています。改正法案によると、現行の技能実習制度を解消し、新たに人手不足分野における人材確保及び人材育成を目的とする育成就労制度を創設することとされています。
育成就労制度の基本は、外国人を労働者として受け入れて、3年間の就労を通じた育成期間において特定技能1号の技能水準の人材を育成し、への移行を目指すものです。従って、技能実習をより実態に合わせた改正となっています。
このコンテンツでは、技能実習1号から2号、さらに特定技能に移行する場合に必要となる要件と、育成就労から特定技能に移行する場合の違いを解説しています。
- 1 はじめに
- (1)特定技能制度の概要
- (2)技能実習制度の概要
- (3)育成就労制度の概要
- 2 特定技能を取得するために必要な試験等
- (1)特定技能1号の在留資格取得に必要な資格等
- (2)特定技能1号から2号への移行の要件
- (3)特定技能への各ルートのまとめ
- 3 最後に
1 はじめに
(1)特定技能制度の概要
ア 特定技能制度の創設と1号及び2号の相違
(ア)特定技能制度の創設とその目的
執筆日時:
特定技能制度は、2019年4月に出入国管理法を改正して、その別表第1の二の表の在留資格に、新たに「特定技能」を設けることで創設された。
その目的は、外務省のサイト「新たな外国人材の受入れ 在留資格 特定技能」によれば「人材の確保が困難な一部の産業分野等における人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を労働者として受け入れる
」ことであるとされている。
同一の業務区分内又は試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間」であれば、転職も可能である。また、失業したとしても、就職活動を行うのであれば、少なくとも在留期間内は在留することが可能である(※)。
※ 3か月以上就職先を探すことなく在留しているなど、正当な理由なく3か月以上「特定技能」に係る在留活動を行っていない場合は、在留資格が取り消されることがある。なお、転職で、受入れ機関又は分野を変更する場合は、特定技能在留資格の変更許可申請を行う必要がある。
出入国在留管理庁の作成したイメージ図の現行制度からも分かるように、想定されているのは技能実習から特定技能へと移行するルート(技能実習ルート)である(※)。なお、特定技能2号で10年間働くと、永住権の許可の要件のひとつである「原則として引き続き 10 年以上本邦に在留していること」の対象となる。
※ 制度上は、技能実習を経ずに試験を受けて特定技能1号となるルート(試験ルート)も認められている。
(イ)特定技能の1号と2号
※ イメージ図(©photoAC)
なお、出入国管理法同表の別表第1の二の表の特定技能の項の下欄には1号及び2号の2種類が定められている。そして、1号は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格」、2号は「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とされている。
これは、外国人がどちらかの在留資格を選択的に取得するというようなものではなく、まず1号の在留資格を得て、1号の最長期間の5年後に、帰国するか2号の資格に移行することが念頭に置かれている(※)。ただし、後に詳しく述べるが1号の対象となる業種のすべてが2号に移行できるわけではない。
※ 制度上は、高い技能を有していることが試験等により確認されれば、特定技能1号を経なくても特定技能2号の在留資格を取得することは可能である。
しかし、出入国在留管理庁の「特定技能在留外国人数の公表等」によれば、2023年12月末の時点では、1号の在留資格を得ている外国人数は 208,425 人であるが、2号の在留資格を得ている外国人の数は 37 人と限定的である。
1号と2号の違いは大きく、1号は一時的に日本で働くというイメージだが、2号は日本に定住して働くというイメージである。その要件と内容の違いは次表のようになっている。
第1号 | 第2号 | |
---|---|---|
従事する業務 | 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする業務 | 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務 |
在留期間 | 通算で上限5年まで | 更新の上限なし(永住許可の認定の要件となる「引き続き 10 年以上本邦に在留」の対象となり得る。) |
技能水準の確認方法 | 試験等で確認 (技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除) | 試験等で確認 |
日本語能力水準の確認方法 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号修了者は試験等免除) | 試験等での確認は原則不要 |
受入れ見込数 | 上限あり | 上限なし |
家族の帯同 | 基本的に認めない | 要件を満たせば可能(配偶者及び子のみ) |
その他 | 受入れ企業又は登録支援機関による支援の対象 | 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外 |
イ 特定技能の在留資格を得るための試験
(ア)必要な試験の種類
※ イメージ図(©photoAC)
特定技能の在留資格を得るためには、年齢制限の他、技能水準と日本語能力水準の2種の試験を受ける必要がある(※)。
※ 試験に合格しても、別途、在留資格認定証明書の交付や在留資格変更の許可を受けなければ、特定技能の在留資格は得られない。試験の合格は、特定技能の在留資格の付与を保証するものではない。
なお、技能実習2号を良好に終了した外国人は、試験が免除される。ただし、その場合でも別の分野で働くときは、働きたい分野の技能試験に合格する必要がある(日本語能力試験は免除される。)。
また、国によっては、送出国での手続が必要な場合がある。詳細は出入国在留管理庁のWEBサイト「各国別の情報」を参照されたい。
(イ)試験を受けられる者
2022年3月までは、国内試験には受験資格が定められていたが、同年4月以降は在留資格をもって在留する外国人については一律に受験が認められている。従って、受験を目的として「短期滞在」の在留資格で入国して、受験することも可能である。
もちろん、在留資格を有していない外国人の受験は認められないが、以下の外国人も在留資格を有していれば、受験が可能となる。
【2022年3月まで受験が認められなかった外国人】
- 中長期在留者でなく、かつ、過去に日本に中長期在留者として在留した経験がない者
- 退学・除籍留学生
- 失踪した技能実習生
- 「特定活動(難民申請)」の在留資格を有する者
- 技能実習等、当該活動を実施するに当たっての計画の作成が求められる在留資格で現に在留中の者
(ウ)試験のレベル及び内容
① 技能評価試験
技能評価試験のレベルは、1号と2号では大きく異なっている。2号になるための試験は後で解説することとし、まず1号について解説しよう。まず、1号の技能評価試験のレベルは、技能検定3級相当以上の試験とされている。
② 日本語評価試験
※ イメージ図(©photoAC)
また、日本語試験の合否判定の基準としては、1号については「1号特定技能外国人の日本語能力を測る試験等追加のためのガイドライン」に「スコア方式の試験の場合、日本語教育の参照枠における CEFR の A2 レベル相当以上のスコア
」と定められている。
詳細な、試験の実施者、日程、試験のレベル等については、出入国在留管理庁のWEBサイト「試験関係」を参照されたい。
【日本語能力試験】
閣議決定された「1号特定技能外国人の日本語能力を測る試験等追加のためのガイドライン」にある CEFR とは、国際的な語学能力の評価基準で、日本語については「日本語教育の参照枠」として定められている。なお、「日本語教育の参照枠における CEFR の A2 レベル相当以上のスコア」は、「法務省のサイト」が参考となろう。
レベル | 意味 | 在留資格 | |
---|---|---|---|
熟達した言語使用者 | C2 | 聞いたり、読んだりしたほぼ全てのものを容易に理解することができる。自然に、流ちょうかつ正確に自己表現ができ、非常に複雑な状況でも細かい意味の違い、区別を表現できる。 | |
C1 | いろいろな種類の高度な内容のかなり長いテクストを理解することができ、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えずに、流ちょうに、また自然に自己表現ができる。社会的、学問的、職業上の目的に応じた、柔軟な、しかも効果的な言葉遣いができる。 | ||
自立した言語使用者 | B2 | 自分の専門分野の技術的な議論も含めて、具体的な話題でも抽象的な話題でも複雑なテクストの主要な内容を理解できる。お互いに緊張しないで熟達した日本語話者とやり取りができるくらい流ちょうかつ自然である。 | |
B1 | 仕事、学校、娯楽でふだん出合うような身近な話題について、共通語による話し方であれば、主要点を理解できる。身近で個人的にも関心のある話題について、単純な方法で結び付けられた、脈絡のあるテクストを作ることができる。 | ||
基礎段階の言語使用者 | A2 | ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応じることができる。 | 特定技能 1号 |
A1 | 具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることもできる。もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助け船を出してくれるなら簡単なやり取りをすることができる。 | 育成就労 |
※ 文化庁「「日本語教育の参照枠」の概要」に在留資格の行を追加
なお、外国人の在留資格で求められる日本語のレベルは、日本語能力試験(JILPT)で表されることも多い。これには N1 ~ N5 の5等級がある。技能実習1号に必要なレベルは JILPT では N4 レベルが該当し「基本的な日本語を理解することができる」とされている。
レベル | 認定の目安 | |
---|---|---|
読む | 聞く | |
N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる | |
〇 幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。 〇 一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流や表現意図を理解することができる。 |
〇 日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。 |
|
N2 | 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる | |
〇 幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。 〇 一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流や表現意図を理解することができる。 |
〇 日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流ながれや内容、登場人物の関係いを理解したり、要旨を把握したりすることができる。 |
|
N3 | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる | |
〇 日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。 〇 新聞の見出などから情報の概要をつかむことができる。 〇 日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。 |
〇 日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。 |
|
N4 | 基本的な日本語を理解することができる | |
〇 基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。 |
〇 日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。 |
|
N5 | 基本的な日本語をある程度理解することができる | |
〇 ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読よんで理解することができる。 |
〇 ・教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる。 |
※ 日本語能力試験JILPTのサイト(国際交流基金及び(公財)日本国際教育支援協会)「N1~N5:認定の目安」を一部修正
N1は知識人である日本人の平均よりやや低いクラス、N2は一般的な日本人の平均的なレベルといったところだろうか。N3なら日常的な意思疎通にそれほど不便は感じないだろうが、N2では日常生活には困らないまでも安全な業務の遂行という観点からはやや不安を感じるだろうか。
N5となると、買い物や旅行が一人でできるレベルである。フォークリフトや建設機械などの運転をさせるのは、指示をする側がやや不安を感じるだろう。玉掛けやクレーンの運転となると、上司が指示をするのを躊躇するのではないだろうか(※)。
※ 現実には、言葉が分からなくても、指示や合図が正しく伝われば、危険・有害な業務を安全に遂行する上でそれほどの問題とはならない。問題は、指示が理解できず、自己判断で操作・運転してしまうことである。
ウ 対象となる業種(分野)
対象となる業種は、法務省令(※)で定められており、現時点で第1号が12分野、第2号が介護を除く11分野となっている。また、2024年3月29日の閣議決定により、対象分野に自動車運送業等の4分野が新たに追加されることとなった。なお、このとき既存の3分野に新たな業務が追加されることとなった。
※ 出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令(平成三十一年法務省令第六号)
現行 | 改正後 | |||
---|---|---|---|---|
第1号 | 第2号 | 第1号 | 第2号 | |
一 介護分野 |
〇 | 〇 | ||
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
四 建設分野 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
六 自動車整備分野 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
七 航空分野 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
八 宿泊分野 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
九 農業分野 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
十 漁業分野 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
十一 飲食料品製造業分野 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
十二 外食業分野 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
十三 自動車運送業 |
〇 | 〇 | ||
十四 鉄道 |
〇 | 〇 | ||
十五 林業 |
〇 | 〇 | ||
十六 木材産業 |
〇 | 〇 |
なお、それぞれの分野ごとに想定される業務等については出入国在留管理庁の「特定技能1号の各分野の仕事内容」を参照されたい。
(2)技能実習制度の概要
ア 技能実習制度の創設
(ア)技能実習制度の創設の経緯
※ イメージ図(©photoAC)
技能実習制度は、最初は特定技能制度が創設された 2019 年よりもかなり早い1993年に、法務大臣告示「技能実習制度に係る出入国管理上の取扱いに関する指針」(平成5年法務省告示第 141 号)を策定するという手法で創設された(※)。当時の入管法の在留資格(別表第1の二の表)は「研修」という扱いである。
※ 現実には、研修制度の形をとっての実質的な外国人労働者の導入が先行していた。これについては、当サイトの「技能実習制度に代わる育成就労制度とは?」を参照して頂きたい。
しかし、多くの場合、その実態は人手不足解消のための労働というべき状況で、「研修」という名目から乖離していた。そのこともあって、外国人研修生の増加とともに人権上の問題が目立つようになっていたのである。このため、政府は2010年に入管法を改正して、在留資格に「技能実習」を創設し、この新たな在留資格に該当するものについては在留資格の「研修」から除外した。
(イ)技能実習制度の目的
技能実習の目的は、2016年に公布(施行は2017年)された技能実習法の第1条に、「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の移転による国際協力を推進することを目的とする」とされている。
※ また、第3条には、基本理念として「技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達(以下「修得等」という。)のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない」とされ、第2項には「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」とされている。
(ウ)技能実習制度の流れ
当時の在留資格の技能実習は、1号(技能などを習得するための活動)及び2号(技能などの習熟を図るための活動)のみであった。後に、特定技能が創設されたときに、技能実習にも3号(技能などの熟達を図るための活動)が定められて現在に至っている。なお、最長期間はそれぞれ1号が1年(※)、2号が2年、3号が2年とされている。
※ 1号の場合、最初に実習実施者(企業単独型のみ)又は監理団体で原則2か月間の研修を実施する必要がある。なお、企業単独型の場合は、1号イ、監理団体型の場合は2号ロという区分になる。
そして、技能実習生になる者は、最初は1号の資格を得て、順次、2号、3号と上位の資格に移行することとなり、最長で5年間の在留資格を得ることができる。しかし、実際には2号を終えた時点で、前項で説明した特定技能に移行することができ、3号より特定技能の方がメリットが大きいため、3号に移行する者はあまり多くない。
(エ)技能実習計画
技能実習を行おうとする者(受入れ企業)は、技能実習法第8条及び第12条の規定により、技能実習生ごとに技能実習計画を作成し、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣(※)へ提出して認定を受けなければならない。
※ 実際には、認可法人 外国人技能実習機構が認定を行っている。
イ 技能実習の職種・作業
(ア)1号の職種・作業は限定されない。
技能実習1号については、とくに職種・作業は限定されていない。開発途上地域等への技能移転や経済発展に寄与するものであれば、技能実習計画は認められ得る。
(イ)2号・3号は職種・作業が限定されている
そして、先述したように、技能実習1号を終えた者は、次項で述べる要件を満たせば、2号、3号の順に移行することが可能である。ところが、詳細は後述するが、2号及び3号の対象となる職種・作業は限定されている(※)。ところが、1号から2号に移行するときに職種・作業の変更は認められないのだ。
※ 移行可能な職種・作業は「移行対象職種・作業」と呼ばれる。2号の移行対象職種・作業の具体的な内容は、技能実習法施行規則別表第2に定められており、現時点で2号の場合で 90 職種、165 作業となっている。
この90 職種、165 作業には、技能実習法施行規則別表第2の第八号の「法務大臣及び厚生労働大臣が告示で定める職種及び作業」である社内検定型の職種・作業として2職種・4作業が含まれている。なお、すべての職種が3号に移行できるわけではない。また、技能実習の2号から特定技能の1号に移行することも可能で、技能実習の3号に移行するには、一旦、帰国しなければならないなどの要件もあり、現実には技能実習の2号から特定技能に移行するケースがほとんどである。3号に移行するケースは多くない。
そのため、1号についても、2号の移行対象職種・作業で行われることがほとんどである。
【移行対象職種・作業とは】
技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議による確認の上、第2号又は第3号技能実習への移行に係る技能実習において技能実習生が修得等をした技能等の評価を客観的かつ公正に行うことができる公的評価システムとして整備された技能検定等を有する職種・作業の総称をいいます。
※ 外国人技能実習機構「移行対象職種情報」
だが、同規則別表第2には、移行対象職種・作業の名称が書いてあるだけである。現実に、技能実習生が従事する業務は、それほど単純ではないので、移行対象職種・作業に該当するかどうかがはっきりしないという例は多い。そのため、厚労省がその判断をするための基準を定めている(※)。
※ 厚生労働省「技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験試験基準」の表の審査基準の列にある「〇」をクリックすると審査基準のPDFファイルが閲覧できる。
ウ 技能実習の在留資格の要件
(ア)在留資格(1号)を得るための要件
技能実習生(1号)になるものの基準は、技能実習法施行規則第10条第2項第三号に定められている。実は、技能実習生(1号)の在留資格を得るための要件はそれほど高くなく、資格取得や試験合格などの条件が定められているわけではない(※)。そもそも技能の移転が目的であるから、もとより始まる時点での技能のレベルが問われることはないのは当然であるが、日本語の能力さえ問われることはないのである。
※ 技能実習生になろうとする者の出身国や地域の公的機関から推薦を受けている必要がある。
【外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律】
(認定の基準)
第9条 出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、前条第一項の認定の申請があった場合において、その技能実習計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
一 (略)
二 技能実習の目標及び内容が、技能実習の区分に応じて主務省令で定める基準に適合していること。
三~十一 (略)
【外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則】
(技能実習の目標及び内容の基準)
第10条 (第1項 略)
2 法第九条第二号(法第十一条第二項において準用する場合を含む。)の主務省令で定める基準のうち技能実習の内容に係るものは、次のとおりとする。
一及び二 (略)
三 技能実習生が次のいずれにも該当する者であること。
イ 十八歳以上であること。
ロ 制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること。
ハ 本国に帰国後本邦において修得等をした技能等を要する業務に従事することが予定されていること。
ニ 企業単独型技能実習に係るものである場合にあっては、申請者の外国にある事業所又は第二条の外国の公私の機関の外国にある事業所の常勤の職員であり、かつ、当該事業所から転勤し、又は出向する者であること。
ホ 団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、本邦において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること又は団体監理型技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること。
ヘ 団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、当該者が国籍又は住所を有する国又は地域(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第二条第五号ロに規定する地域をいう。以下同じ。)の公的機関(政府機関、地方政府機関又はこれらに準ずる機関をいう。以下同じ。)から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること。
ト 第三号技能実習に係るものである場合にあっては、次のいずれかに該当するものであること。
(1)第二号技能実習の終了後本国に一月以上一時帰国してから第三号技能実習を開始するものであること。
(2)第二号技能実習の終了後引き続き第三号技能実習を開始してから一年以内に技能実習を休止して一月以上一年未満の期間一時帰国した後、休止している技能実習を再開するものであること。
チ 同じ技能実習の段階(第一号技能実習、第二号技能実習又は第三号技能実習の段階をいう。)に係る技能実習を過去に行ったことがないこと(やむを得ない事情がある場合を除く。)。
四~八 (略)
3及び4 (略)
(イ)1号から2号、2号から3号への移行の要件
先述したように、技能実習1号を終えた者は、次項で述べる要件を満たせば、2号、3号の順に移行することが可能である。ただし、先述したように移行するには、職種・作業が、移行対象職種・作業でなければならない。
また、1号から2号、2号から3号に移行するには、移行する前のレベルで、技能実習計画に定められた目標を達成している必要がある。技能実習計画で定めるべき目標は、技能実習法第8条第2項第六号に「技能検定又は主務省令で指定する試験に合格することその他の目標」と定められている。すなわち、上位の技能実習に移行するには、その前の技能実習の期間中にこれらの試験に合格していなければならないのである。
※ 一般の技能検定試験を目標とする場合は、1号の目標は技能検定基礎級以上、2号の目標は技能検定3級以上とする必要がある。なお、3号の場合は技能検定2級以上とする。(外国人技能実習機構「受験支援ホームページ」の「技能実習計画における各号の技能検定等(技能検定若しくは技能実習評価試験又は主務省令で定める評価)の目標」を参照されたい)
実際には、技能実習生向けの技能検定が、随時2級、随時3級及び基礎級の区分により実施されている(詳細は厚生労働省「技能実習生等向け技能検定の概要」参照)ので、こちらの試験に合格することを目標としてもよい。
技能実習生向けの技能検定を目標とする場合は、技能実習1号は基礎級の学科試験及び実技試験に合格することを目標とし、技能実習2号では随時3級の実技試験に合格することを目標とする必要がある。なお、技能実習3号では随時2級の実技試験を目標とする。
技能実習法第8条第2項第六号の「主務省令で指定する試験」については、技能実習法施行規則第6条により、同規則別表第1に定められている。これが「技能実習評価試験」である。
【外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律】
(技能実習計画の認定)
第8条 技能実習を行わせようとする本邦の個人又は法人(親会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第四号に規定する親会社をいう。)とその子会社(同条第三号に規定する子会社をいう。)の関係その他主務省令で定める密接な関係を有する複数の法人が技能実習を共同で行わせる場合はこれら複数の法人)は、主務省令で定めるところにより、技能実習生ごとに、技能実習の実施に関する計画(以下「技能実習計画」という。)を作成し、これを出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出して、その技能実習計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 技能実習計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
四~五 (略)
六 技能実習の目標(技能実習を修了するまでに職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第四十四条第一項の技能検定(次条において「技能検定」という。)又は主務省令で指定する試験(次条及び第五十二条において「技能実習評価試験」という。)に合格することその他の目標をいう。次条において同じ。)、内容及び期間
七~十 (略)
3~5 (略)
【外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則】
(技能実習評価試験)
第6条 法第八条第二項第六号の主務省令で指定する試験は、別表第一のとおりとする。
これをごく簡単にまとめると次表のようになる。この表のいずれかの試験に合格すれば目標は達成したとして、次のレベルに移行することができるのである。なお、技能実習制度は基本的に技能を母国に移転することが目的であるから、日本語の能力は達成の目標として求められてはいない。
技能検定 | 技能実習評価試験 | ||
---|---|---|---|
正規の技能家定 | 技能実習生向け 技能検定 |
||
技能実習1号 | 基礎級 (実技及び学科) |
基礎級 (実技及び学科) |
初級 (実技及び学科) |
技能実習2号 | 3級 |
随時3級 |
専門級 |
技能実習3号 | 2級 |
随時2級 |
上級 |
ただし、日本語検定への合格は目標とはなっていないが、技能検定は日本語で行われ、技能実習生向けの技能検定は漢字に日本語のルビがふった試験で行われる。これによって、事実上、日本語の能力も評価されることとなる。
(3)育成就労制度の概要
ア 技能実習制度の廃止と育成就労制度の創設
※ イメージ図(©photoAC)
現在、技能実習制度を廃止して育成就労制度を新設するための技能実習法改正案が国会で審議されている。その経緯等については当サイトの「技能実習生の廃止と同時に創設される「育成就労制度」とはなにか?」を参照して欲しい。
ごく簡略して解説すれば、技能実習制度は海外への技能の移転を目的としていたにもかかわらず、実態は労働と変わらず特定技能への前段階としての位置づけとなっていた。この建前と現実の乖離のために人権侵害のケースが発生して、内外から強く批判される状況となっていたのである。そこで、制度をより実態に近いものとするとともに、人権問題を誘発する原因として批判の強かった転籍の禁止やブローカーによる高額の手数料などについても解決を図ろうとしたものである。
現時点では国会で審議中なので、今後、修正の可能性はあるが、技能実習と育成就労の違いを簡単にまとめると次表のようになる。人権侵害の原因となっているとされた転籍の禁止については、形式的には本人意思の転籍を限定的に認めたものの、現実には極めて条件が厳しく設定されているため、実質的には転籍は極めて困難だろう。また、ブローカーによる高額の手数料の徴収が防止できるかについても運用次第といったところだろう。
また、人権侵害と批判の強い家族の帯同の禁止は、そのままとなった。
技能実習 | 育成就労(案) | |
---|---|---|
目的 | 我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与する。 | 育成就労産業分野において、特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保する。 |
対象業種・作業等の範囲 |
1号:とくに定めず 2号:現時点で 90 職種、165 作業 3号:現時点で 90 職種、147 作業 |
特定技能(1号)の分野と一致させる。 |
最長期間 | 1号:1年 2号:2年 3号:2年 |
3年(相当の理由(試験不合格)がある場合は、最大で1年の延長可) |
終了後の扱い | 本来は帰国することが前提の制度。ただし特定技能への移行は禁止されず、試験免除等の優遇措置あり。 | 特定技能(1号)へ移行することが前提 |
在留資格取得の要件 |
1号:出身国等の推薦等 2号:1号の期間中に基礎級技能検定等に合格 3号:2号の期間中に3級技能検定等に合格 |
日本語能力(日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格又は相当する日本語講習を認定日本語教育機関等において受講) |
ブローカー対策等 | 外国人が送出機関に支払った費用額等が基準に適合していることを要件 | |
転籍 | やむを得ない場合のみ可能 | やむを得ない場合の他、きわめて厳しい要件の下で本人意思の転籍を認める |
家族の帯同 | 禁止 | 禁止 |
次項で、育成就労の在留資格を得るための要件等について解説する。
イ 育成就労の在留資格を得るために
育成就労は、日本で働くことが前提となっていることもあり、技能実習とは異なり、日本語の能力が求められる(※)こととされる。
※ 現時点では、法律が国会を通過していないこともあり、今後、変更されることがあり得る。以下、育成就労についてはそれを前提として読んで欲しい。
閣議決定(※)によると、育成就労には日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)などに合格することが求められている。
※ 閣議決定「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応」(2024年2月9日)
3 外国人の人材育成
(2)人材育成の評価方法
〇 育育成就労制度では、外国人が就労開始前までに日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格すること又は相当する日本語講習を認定日本語教育機関等において受講することを要件とする。
※ 閣議決定「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応」(2024年2月9日)
ウ 育成就労中に取得することが必要な資格要件
次に、育成就労中に、取得させるべき能力も、閣議決定によって次のように定められている。すなわち、最初の1年間で技能検定試験基礎級等を受験するように定められているのである。これは、技能実習1号に対応するものであろう。
3 外国人の人材育成
(2)人材育成の評価方法
〇 外国人の技能修得状況等を評価するため、受入れ機関は、育成就労制度による受入れ後1年経過時までに技能検定試験基礎級等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等。ただし、既に試験に合格している場合を除く。)を外国人に受験させる。
※ 閣議決定「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応」(2024年2月9日)(下線強調引用者)
2 特定技能を取得するために必要な試験等
(1)特定技能1号の在留資格取得に必要な資格等
ア 試験ルート
※ イメージ図(©photoAC)
特定技能の在留資格を得るためには、現在は試験を受けるルート(試験ルート)と技能実習(2号又は3号)を経るルート(技能実習ルート)がある。技能実習を終了しても、試験ルートによって特定技能の在留資格を受けることは可能であるが、技能実習2号を良好に終了していれば優遇措置があるので、優遇措置を受けることが普通である。
そして、技能実習が廃止され育成就労となった後は、技能実習ルートはなくなり、育成就労ルートが新たに新設されることとなる。
まず、試験ルートについて、必要な資格を見てみよう。特定技能1号になるためには、技能評価試験(それぞれの職種の技能に関する技能検定3級等の試験)の他、日本語能力試験のN4以上相当の試験に合格しなければならない。
イ 育成就労ルート
次に、育成就労ルートで、特定技能(1号)の在留資格を取得するときに評価すべき能力も、閣議決定によって次のように定められている。
3 外国人の人材育成
(2)人材育成の評価方法
〇 育成就労制度から特定技能1号への移行時には、技能検定試験3級等又は特定技能1号評価試験及び日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)の合格を要件とし、受入れ機関が外国人に当該試験を受験させる。
〇 育成就労制度で育成を受けたものの、特定技能1号への移行に必要な試験等に不合格となった者については、同一の受入れ機関での就労を継続する場合に限り、再受験に必要な範囲で最長1年の在留継続を認める。
※ 閣議決定「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応」(2024年2月9日)(下線強調引用者)
分かりやすく言えば、育成就労の場合、優遇措置は全くなく、試験ルートと同じ要件が求められるわけである。逆を言えば、育成就労は、特定技能を得る能力を養成するための在留資格という面があることになる。
しかし、「特定技能1号への移行に必要な試験等に不合格となった者」については、「同一の受入れ機関での就労を継続する場合に限り、再受験に必要な範囲で最長1年の在留継続を認める」といっているのが優遇措置といえばいえる。
※ 育成就労は最長3年間、特定技能1号は5年であるから、1年の受験のための延長を認めても9年にしかならない。すなわち、永住許可のガイドラインにおける永住許可の要件である「引き続き10年以上本邦に在留」をぎりぎりで認めないわけである。
(2)特定技能1号から2号への移行の要件
次に特定技能の1号から2号に移行するための要件を製造業についてみてみよう。なお、1号から2号に移行する場合であっても、最初から2号の試験を受ける場合であっても、とくに違いはない。
2号で求める人材は、経済産業省のサイトによれば「実務経験等による熟練した技能を持ち、現場の作業者を束ねて指導、監督ができる人材
」とされている。
在留資格を取得するためには、2つのルートのどちらかの条件を満たす必要がある。なお、どちらのルートでも、日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験が必要となる。
特定技能2号評価試験ルート | 技能検定ルート | |
---|---|---|
必要要件 |
以下の3項目を満たす必要。 1 ビジネス・キャリア検定3級取得 2 製造分野特定技能2号評価試験の合格 3 日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること |
以下の2項目を全てを満たす必要。 1 技能検定1級取得 2 日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること |
試験は、国内複数会場で行われるが、海外では実施されない。また、試験はすべて日本語で行われる。試験のレベルは、技能検定1級の合格水準と同等の基準である。
なお、試験の申込の時点で、「日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験」を証明する書類の添付が必要である。
(3)特定技能への各ルートのまとめ
以上の各ルートをまとめると次表のようになる。
試験ルート | 育成就労ルート | 技能実習ルート | |
---|---|---|---|
技能実習(1号)又は育成就労取得の要件 |
〇 日本語能力試験N5相当以上の日本語試験(又は) 〇 日本語講習を認定日本語教育機関等において受講 |
〇 出身国の推薦等のみ(試験は課されない) |
|
技能実習(1号) 育成就労(1年目) |
〇 技能検定基礎級(学科及び実技)相当以上の試験 〇 日本語能力試験N4相当以上の日本語試験 |
〇 技能検定基礎級(学科及び実技)相当以上の試験 |
|
技能実習(2号) 育成就労(2~3年目) |
(とくになし) |
〇 技能検定3級(実技)相当以上の試験 |
|
特定技能(1号)になる要件 |
〇 技能検定3級相当以上の試験 〇 日本語能力試験N4相当以上の日本語試験 |
〇 技能検定3級相当以上の試験 〇 日本語能力試験N4相当以上の日本語試験 |
〇 試験は免除される(※)。 |
特定技能1号から2号に移行する要件 |
〇 日本企業における一定の実務経験 〇 技能検定1級の水準に相当する技能評価試験 |
※ 技能実習ルートは、技能実習3号を経ないものとし、技能実習2号を良好に就労し、かつ技能実習と特定技能の職種・業務が一致するものとする。
これを見ればわかるように、どのルートでも最終的に求められる技能については、試験の時期が異なるだけでその能力に大きな違いはない。
しかし、大きな違いとして、現行の技能実習ルートでは日本語評価能力の試験が最後まで行われないが、新しい育成就労では日本語評価が必要となっていることが挙げられる(※)。
※ この変更については、政治的な判断が強かったようだ。
3 最後に
※ イメージ図(©photoAC)
繰り返すが、現在、国会で審議が行われている技能実習法改正で、技能実習が解消されて育成就労が新設されることとなっている。
これまで、技能実習ルートから特定技能に至るケースが、育成就労で、どう換わるかについて各業界での関心が高まっている。しかし、実際にはそれほど大きな影響はないのではないかというのが、大方の見方である。
技能実習制度と育成就労制度の違いは、以下の3点が主なものである。
【技能実習制度と育成就労制度の違い】
- 特定技能と大きく異なっていた技能実習の業務分野を、育成就労では特定技能(1号)と一致させること。
- 技能実習制度の1号(最長1年)と2号(最長2年)をまとめて、育成就労は最長3年の制度としたこと。また、これまであまり利用されなかった、技能実習3号(最長2年)を廃止したこと。
- 技能実習生で批判の大きかった人権の問題について、若干の手直しをすること。
また、ステップアップの段階において、技能実習制度では日本語の評価試験を課してこなかった(※)が、育成就労では特定技能までに日本語能力試験N4相当以上の日本語試験に合格する必要がある。
※ 現実には、技能検定試験が日本語で行われるため、実質的に日本語の評価も行っていることとなる。従って、事実上、それほど大きな影響は受けないだろう。
一方、批判の大きい人権侵害の問題については、わずかではあるがより実態に合わせた形で修正されており、これまで問題となっていた人権侵害がわずかでも起きにくくなることは期待できるかもしれない。しかし、自民党右派の外国人の導入に反対する勢力と、労働者を導入したい財界の意向を受けて、その双方の要求の板挟みにあって人権保護という観点が後退していることは否めない。
さらに、育成就労の3年間と特定技能1号の5年間で、家族の帯同を認めないというのも、国際的な常識から言えば人権侵害というべきである。また、そもそも彼らは労働力ではなく人間なのである。人間同士の間に恋愛の感情が生まれることを止めることはできないし、子供が生まれることを止めさせることもできない。8年が経過して帰国せざるを得なくなったとき、子供が小学生になっていることもあり得るのだ。
政府は、特定技能の外国人労働者を大きく増やそうとしているようである。しかし、多数の外国人労働者を日本へ導入することそれ自体は良いことではあるが、人権についての検討がおろそかなままであることいには、強い危惧感を持たざるを得ない。
各企業は、外国人労働者をたんに8年だけの短期労働者とみるのではなく、人間として彼らの将来をきちんと見据えた運用を図るべきであろう。
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