安衛法の免許等の旧姓と通称名(3)




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2021年2月25日に安衛則の改正が公布され、免許証や技能講習修了証の氏名欄に旧姓や通称名の標記が認められていなかった点を改正し、併記ではありますが表示が認められるようになります。

本稿では、帰化した日本人の旧姓についての疑問について解説しています。




1 旧姓をめぐる2つの誤解

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労働安全衛生法の免許証と技能講習修了証の氏名欄に、旧姓通称が併記できるようになる(2022年4月施行)ことは、このサイトの「安衛法の免許証等への旧姓・通称の表示について」でもお知らせした。この記事でも述べているように、本件に関して厚生労働省労働基準局長から「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について」(令和3年2月25日 基発0225第2号)が発出されている。

この通達が言う「旧姓」について、帰化した日本人に関して一部に誤解があるので、若干の解説をしておく。


2 帰化した日本人の旧姓とは

前記通達の第2の2の(1)に「改正省令における旧姓は、住民基本台帳法施行令(昭和 42 年政令第 292 号。以下「住基法施行令」という。)第 30 条の 13 に規定する旧氏を指し、これを併記するためには、戸籍謄本のほか、住民票の写し等により確認する必要があること」とされている(※)

※ ここにいう「旧氏きゅううじ」とは法律用語であり、旧姓のことだと思ってよい。

この記述について、帰化した日本人が、帰化前(外国人だったとき)に名乗っていた姓が、「旧氏」に該当するかどうかについて、一部に誤解があるのだ。

【誤解その1】

外国人が帰化して日本人になると、その時点で戸籍が作られる。そのとき、戸籍に外国人だったときの氏名が記載される。

一方、前出の通達の住民基本台帳法施行令第30条の13には、「氏に変更があつた者に係る住民票の法第七条第十四号に規定する政令で定める事項は、第六条の二に定めるもののほか、その者が次条第一項又は第三項の規定により住民票への記載を請求した一の旧氏(その者が過去に称していた氏であつて、その者に係る戸籍又は除かれた戸籍に記載又は記録がされているものをいう。同条において同じ。)とする」とされている。

そのため、帰化前の氏名が旧姓として、免許証等に併記可能ではないかという誤解が生じるわけである。

驚く外国人女性

しかし、これは「旧氏」に該当しない。

旧氏とは婚姻や養子縁組又はそれらの解消による氏名の変更によるものをいい、帰化前に使用していた氏名は旧氏ではない。従って、住民票に記載することもできないのである。


3 日本国籍を喪失した外国人の旧姓について

また、前記通達の第3に、外国人について旧姓の使用が可能であるとの表現がある。


【誤解その2】

旧姓とは、戸籍又は除籍に記載された「過去に称していた氏」である。外国人には、戸籍又は除籍がないので、労働基準局長通達が外国人に旧姓の使用が可能であるとしているのは誤りではないかという誤解がある。

しかし、これは誤りではない。きわめて特殊な例ではあるが、日本国籍を喪失した者については、当然、外国人であるが、除籍簿が作成されるので旧姓があり得るのだ。

ただ、現実には、そのような場合は、通称として旧姓と同じ「氏名」が住民票に記載されているだろう。従って、通称と旧姓の2種類の「氏名」が、免許証等に併記されるということは現実にはあり得ないだろう。





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