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安衛法の免許等の旧姓と通称名とは

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(遅まきながら)2020年2月25日に安衛則の改正が公布され、免許証や技能講習修了証の氏名欄に旧姓や通称名の標記が認められていなかった点を改正し、併記ではありますが表示が認められるようになります。

本稿では、氏名と通称名についてのいくつかのよくある疑問について解説しています。




1 労働安全衛生規則等の改正

執筆日時:

最終改訂:

2020年2月25日に、安衛則の改正が公布された。主な内容は、これまで氏名欄への旧姓や通称の標記が認められていなかった点を改正し、併記ではあるが旧姓や通称の表示が認められるようになるものである。

また、併せて安衛法上の免許の申請書と免許証から性別表示がなくなることになる。

ご存知の方も多いと思うが、運転免許証ではすでに実施されていることである。その意味ではかなり遅れてもいるし、小さな一歩ではある。しかし、女性の社会進出やダイバーシティの実現に向けた着実な前進と言えよう。

※ 公的証明書等の氏名欄への旧姓併記は、選択的夫婦別姓制度に反対する勢力が、「妥協策」として進めている経緯があり、強制的夫婦同姓制度を固定化するという負の面があることも指摘しておく必要はある。


2 選択的夫婦別姓の後退

昨年、自民党内部で選択的夫婦別姓の制度の導入が話題に上がったことがあり、菅総理も国会で共産党の議員の質問に前向きな回答をするということがあった。現実には、よく知られているように、自民党は制度の導入に後ろ向きに転じるわけだが、そのような中での省令改正である。パブコメのときに示された案では、昨年中には公布されるはずだったのだが、2か月遅れた理由はやや興味深い。

そもそも選択的夫婦別姓の制度が実現すれば、あまり必要性のなくなる改正なのである。

それはさておき、旧姓の記載は日本人に限られるものと思われる。外国人には戸籍制度の適用がないため、婚姻によって姓が変わるということがないからである(婚姻の後、一定期間は裁判所の許可なしに姓を変えることが可能であるがこれは別論である)。

なお、当然のことながら、婚姻のみならず、離婚や養子縁組(及びその解消)による姓の変更についても適用がある。

世界的にも類例のない戸籍制度を前提とした制度である。普段、旧姓で仕事をしている方が、外国へ行くとパスポートの名前が違うのでトラブルになるということはよく聞く。いつまで、我が国はこのような古い因習にとらわれ続けるのであろうか。


3 通称とは何か?

今回の省令改正は、実質的に様式の変更のみである。そのためでもなかろうが「通称」とは何かについての定義がない。そのため、法的には通称の範囲が明確ではないのである。しかし、運転免許証では住民票に通称の記載のある外国人に限定されており、安衛法でも「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について」(令和3年2月25日 基発0225第2号)によってそのように定められている。

すなわち、トランスジェンダーの方が通称を用いていることがあるが、それが認められることはないのである。厚生労働省単独でこれを認めることは困難だということは分かるが、ここは本来は認められるべきものである。

そもそも氏名などというのは「記号」であり、ある分野である人物がある名前を用いていて、誰もがその名前はその人物を表すと考えていれば、それがその人物の名前であろう。他に本名があったとして、それはその人物を表す名前ではあるまい。

ヨシップ・ブロズとは誰なのか、ご存知の方がおられるだろうか。だが、チトーと言えば、ああ、あの人かと分かるだろう。実は、チトーはあだ名のようなものであり、彼の本名はヨシップ・ブロズなのだ。

トランスジェンダーの方が、通称を用いて本来のジェンダーとして生活をしていて、本名が戸籍上のジェンダー風のものだったらどうであろうか。いったいどちらが正しい名前なのだろう。


4 法令とは国民のためにあるはず

法令とは、国民を幸せにするためのルールであろう。夫婦が別称を用いていたとしても、トランスジェンダーの方を含めて通称名を正式な名称としたとして証明書に記載されても、統一的かつ固定的に用いられていれば誰も困らないはずである。

現実に、世論調査を見ても選択的夫婦別姓に賛成する国民の方が多いのである。今回の法改正も、現状ではやむを得ないのかもしれないが、免許証や技能講習修了証についても旧姓や通称のみを記載する方向に動くことこそ正しい方向であろう。

もっとも、安衛法ではなく、戸籍制度の方を変えることで実現するべきだとは思うが。


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