※ イメージ図(©photoAC)
外国人が日本国内で就労するためには、就労ビザ等が必要となります。短期滞在ビザ保有者(免除国の免除者を含む)や、仮放免中で就労が制限されている者は、法令上就労することができません。
このため、技能講習の受講もできないのではないかという疑問を持たれる方も多いようです。
本稿では、就労資格のない外国人の技能講習の受講の可否について解説しています。
1 日本の就労資格の制度
執筆日時:
(1)就労が認められないビザ
※ イメージ図(©photoAC)
外国籍の方が日本国に入国して様々な活動を行うに当たっては、原則としてその活動を行えるビザが必要となる。
わが国のビザには、以下の種類がある。ビザの名称から受ける印象と、実際に可能な活動の内容は必ずしも一致しないので、詳細は外務省の「ビザ」のページを参照して頂きたい。
【3通りのビザ】
- 短期ビザ
- 観光、商用、知人・親族訪問等 90 日以内の滞在で報酬を得る活動をしない場合のビザ
- 韓国、米国、英国など68のビザ免除措置国・地域の場合は免除される。
- 就労・長期滞在
- 日本国内において報酬を得て仕事をするときや、日本国内に90日以上滞在するときなど短期滞在の要件に該当しない場合に必要となるビザ
- 高度専門職ビザ、就業ビザ(教授、報道、教育、興行、技能など)、一般ビザ(文化活動、留学、研修 及び 家族滞在)、特定ビザ(日本人の配偶者等、永住者の配偶者、定住者 及び 特定活動)、起業(スタートアップ)ビザ、外交ビザ、公用ビザという種類がある。
- 医療滞在ビザ
- 日本において治療等を受けることを目的として訪日する外国人患者等(人間ドックの受診者等を含む)及び同伴者に対し発給されるビザ
このうち、短期ビザについては、原則として報酬を得る就労は認められていない。
また、就労・長期滞在のうち、一般ビザについても、原則として就労は認められていないか、時間や職種などに制限がある場合がある。なお、一般ビザのうち「家族滞在」(※)は長期滞在外国人の扶養を受ける配偶者及び子に発給されるビザである。
※ これに対し、「日本人の配偶者等」及び「永住者の配偶者」については、就労の制限はないので、誤解のないようにしたい。
(2)その他就労の認められない外国人
また、日本国内で合法的に活動している外国人として、出入国管理及び難民認定法(入管法)第54条による仮放免(※)を受けた方がおられる。
※ 外国人が、退去強制事由に該当すると疑う相当の理由がある場合に、地方出入国在留管理局の主任審査官が発付する収容令書によって収容されることがある。被収容者について、請求又は職権で、一時的に収容を停止して身柄の拘束を仮に解くのが仮放免の制度である。
本来、収容そのものが原則として30日以内であり、仮放免も一時的なものと思われやすいが、現実には数年となることも珍しくない。仮放免には、入管法第 54 条第2項の規定により、その期間中の就労の禁止などの条件が付されることが多い。
なお、退去強制令書が発付されている外国人が仮放免されている場合は、退去強制令書が発付されていることに変わりはなく、就労することはできない。
そして、仮放免を受けた外国人の場合、多くは、就労禁止の条件を付されている(※)。なお、入管局に不法残留等を申告した外国人が収容されていない場合も、法務大臣から特別に在留が認められない限り、原則として就労は認められない。
※ 仮放免に就労禁止の条件を付すことには、様々な意見があるが、ここではその是非については論じない。
2 就労を認められない外国人の技能講習受講の可否
意外に思われるかもしれないが、結論から言えば、就労が認められない外国人であっても、技能講習の受講は禁止されない。
出入国在留管理庁の「在留資格「短期滞在」」によれば、短期滞在ビザでできる活動の例として次のようにされている。
※ 出入国在留管理庁の「在留資格「短期滞在」」。下線協調は引用者による。在留資格「短期滞在」
例:観光等 この在留資格に該当する活動 本邦に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動
該当例としては、観光客、会議参加者等。
すなわち、「講習又は会合への参加」は、短期滞在ビザで想定されている活動のひとつなのであり、技能講習の受講についても禁止されていないのである。なお、これは、仮放免中の外国人や、入管局に不法残留等を申告した外国人が収容されていない場合であっても同様である。
※ イメージ図(©photoAC)
もちろん、技能講習を受講しても、就労が制限されている以上、日本国内で該当の業務に就くことはできない。しかし、帰国した後で自国で就職するときに、日本の技能講習の修了が役に立つこともあり得るだろう。また、就労ビザを取得して、再び、日本に入国することも考えられる。
このように考えれば、とくに法令で禁止されていない以上、能講習の受講を禁止する理由はないのである(※)。
※ 不法滞在を助長するようなことがあってはならないが、技能講習の受講がただちに不法就労を幇助するものとはいえないであろう。
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