第2種衛生管理者試験 2025年4月公表 問06

労働安全衛生規則に基づく定期健康診断




問題文
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学習する男性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年4月公表問題 問06 難易度 従来は雇入れ時の健康診断と定期健康診断で1問の出題だったが、今回は定期健康診断のみでの出題。
一般の定期健康診断

問6 労働安全衛生規則に基づく医師による定期健康診断に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)尿検査では、尿中の馬尿酸及びデルタアミノレブリン酸の量の検査を行う。

(2)定期健康診断項目のうち肝機能検査については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。

(3)常時 50 人以上の労働者を使用する事業場において、定期健康診断を行ったときは、遅滞なく、その結果を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

(4)定期健康診断を受けた労働者に対しては、異常の所見が認められなかった者を含め、遅滞なく、健康診断の結果を通知しなければならない。

(5)事業場において実施した定期健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者については、その結果に基づき、健康の保持のために必要な措置について、健康診断が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴かなければならない。

正答(1)

【解説】

(1)誤り。一般の定期健康診断で尿検査を行うべきことは、安衛則第 44 条第1項(第十号)に定められている。これは同規則第 43 条(第十号)にあるように、 尿中の糖及びたん白の有無の検査である。なお、本肢は過去問にはない新しい肢である。

※ 尿中の馬尿酸の検査はトルエンを製造し又は取り扱う労働者への特殊健康診断において、また、デルタアミノレブリン酸の量の検査は一定の鉛業務に従事する労働者の特殊健康診断において行う。そのこともこの機会に覚えておこう。

【労働安全衛生法】

(健康診断)

第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

2~5 (略)

【労働安全衛生規則】

(雇入時の健康診断)

第43条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

一~九 (略)

 尿中の糖及びたん白の有無の検査(次条第1項第十号において「尿検査」という。)

十一 (略)

(定期健康診断)

第44条 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

一~九 (略)

 尿検査

十一 (略)

2~4 (略)

(2)正しい。一般の定期健康診断の項目については、安衛則第44条第1項に示されており、第2項に「厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる」項目(1項各号でアンダーラインを付けた項目)が定めてある(※)

※ この機会にすべて覚えておこう。過去問の学習をするとは、そういうことである。逆に、たんに問題とその答えだけを覚えるような学習方法では「過去問の学習だけでは合格できない」という結果になる。

肝機能検査は、安衛則第 44 条第1項第七号に定められているので、同第2項により省略できる。

なお、問題文にもあるように、医師の自由な判断で省略できるわけではなく、厚生労働大臣の定める基準によらなければならない。

【労働安全衛生法】

(健康診断)

第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

2~5 (略)

【労働安全衛生規則】

(定期健康診断)

第44条 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

 既往歴及び業務歴の調査

 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

 胸部エックス線検査及び喀痰かくたん検査

 血圧の測定

 貧血検査

 肝機能検査

 血中脂質検査

 血糖検査

 尿検査

十一 心電図検査

 第1項第三号、第四号、第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。

3~4 (略)

(3)正しい。安衛則第 52 条の規定により、常時 50 人の労働者を使用する事業場において、定期健康診断の結果については、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に報告を行わなければならない。なお、雇入時の健康診断の結果については報告を行わなければならないとする規定はないがこの機会にそのことも覚えてしまおう。

【労働安全衛生規則】

(健康診断結果報告)

第52条 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、健康診断(第44条又は第45条の健康診断であつて定期のものに限る。以下この項において同じ。)を行つたときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

一~十 (略)

 事業者は、健康診断(第48条の健康診断であつて定期のものに限る。以下この項において同じ。)を行つたときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

一~六 (略)

(4)正しい。安衛則第 51 条の4により、定期健康診断を受けた労働者に対し、健康診断を実施した日から遅滞なく(※)、当該健康診断の結果を通知しなければならない。これは、異常の所見が認められたかどうかにかかわらない。

※ 本条の「遅滞なく」の意味については、平成18年2月24日基発第0224003号「労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について」に「「遅滞なく」とは、事業者が、健康診断を実施した医師、健康診断機関等から結果を受け取った後、速やかにという趣旨であること」とされている。

詳細は、「直ちに・すみやかに・遅滞なくとは」を参照して頂きたい。

【労働安全衛生法】

(定期健康診断)

第44条 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

一~十一 (略)

2~4 (略)

【労働安全衛生規則】

(健康診断の結果の通知)

第51条の4 事業者は、法第66条第4項又は第43条、第44条若しくは第45条から第48条までの健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

(5)正しい。違反とはならない。安衛則第 51 条の2第1項(第一号)の規定により、事業場において実施した定期健康診断の結果、健康診断項目に異常所見があると診断された労働者については、健康を保持するために必要な措置について、健康診断が行われた日から3か月以内に、医師から意見聴取を行う必要がある。

【労働安全衛生法】

(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)

第66条の4 事業者は、第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。

【労働安全衛生規則】

(定期健康診断)

第44条 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

一~十一 (略)

2~4 (略)

(健康診断結果の記録の作成)

第51条 (略)第43条、第44条若しくは第45条から第48条までの健康診断若しくは法第66条第4項の規定による指示を受けて行つた健康診断(同条第5項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「第43条等の健康診断」という。)(略)。

(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)

第51条の2 第43条等の健康診断の結果に基づく法第66条の4の規定による医師又は歯科医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。

 第43条等の健康診断が行われた日(法第66条第5項ただし書の場合にあつては、当該労働者が健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出した日)から3月以内に行うこと。

 (略)

2及び3 (略)

2025年04月13日執筆