問4 労働安全衛生法に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査の結果に基づき実施する面接指導に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(2)事業者は、面接指導の対象となる労働者の要件に該当する労働者から申出があったときは、申出の日から3か月以内に、面接指導を行わなければならない。
(3)事業者は、面接指導を行った場合は、当該面接指導の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計し、その結果について分析しなければならない。
(4)面接指導の結果は、健康診断個人票に記載しなければならない。
(5)面接指導を行う医師として事業者が指名できる医師は、法定の研修を修了した医師に限られる。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2024年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2024年4月公表問題 | 問04 | 難易度 | ストレスチェックに関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない問題。 |
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ストレスチェック | 2 |
問4 労働安全衛生法に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査の結果に基づき実施する面接指導に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(2)事業者は、面接指導の対象となる労働者の要件に該当する労働者から申出があったときは、申出の日から3か月以内に、面接指導を行わなければならない。
(3)事業者は、面接指導を行った場合は、当該面接指導の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計し、その結果について分析しなければならない。
(4)面接指導の結果は、健康診断個人票に記載しなければならない。
(5)面接指導を行う医師として事業者が指名できる医師は、法定の研修を修了した医師に限られる。
正答(1)
【解説】
(1)正しい。安衛則第52条の21の規定により、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
【労働安全衛生規則】
(検査及び面接指導結果の報告)
第52条の21 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第六号の二)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
※ 2025年1月1日より、安衛法令の主要な届出・報告は原則として電子申請が義務付けられるため、本条は改正されるが、届出等の方法が変わるだけなので本問の正誤に影響はない。なお、届出・報告等の電子申請についての詳細は「労働者死傷病報告等の電子申請の義務化」を参照されたい。
(2)誤り。安衛則第52条の16は、面接指導の対象となる要件に該当する労働者から申出があったときは、遅滞なく面接指導を行わなければならない。
この「遅滞なく」の意味について、「労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令等の施行について(心理的な負担の程度を把握するための検査等関係)」(平成27年5月1日基発0501第3号)は、記の第3の4の「(2)面接指導の実施方法等(第52条の16関係)」のハにおいて「第2項の「遅滞なく」とは、申出後、概ね1月以内をいうこと
」としている(※)。
※ 「遅滞なく」の意味についての詳細は「直ちに・速やかに・遅滞なくとは」を参照されたい。
この場合、3か月では「遅滞なく」とはいえないということである。
【労働安全衛生規則】
(面接指導の実施方法等)
第52条の16 法第六十六条の十第三項の規定による申出(以下この条及び次条において「申出」という。)は、前条の要件に該当する労働者が検査の結果の通知を受けた後、遅滞なく行うものとする。
2 事業者は、前条の要件に該当する労働者から申出があつたときは、遅滞なく、面接指導を行わなければならない。
3 (略)
(3)誤り。安衛則第 52 条の 16 は、「事業者は、面接指導を行った場合は、当該面接指導の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない
」としている。これは努力義務であって義務ではない(※)。
※ そもそも労働者が1名しかいない事業者の場合、本肢のような集団ごとの集計は不可能である。仮に1名分のデータを無理に集計すると、その結果は個人の情報そのものである。その結果を事業者が見れば個人情報を事業者が知ることとなり、安衛法第 66 条の 10 第2項で事業者が個人情報を知ることができないようにした意味がなくなる。一方、事業者が集計データを見ないのであれば集計をする意味がない。
【労働安全衛生規則】
(検査結果の集団ごとの分析等)
第52条の14 事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。
2 事業者は、前項の分析の結果を勘案し、その必要があると認めるときは、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
(4)誤り。安衛法第 66 条の 10 第4項の規定により、事業者は面接指導の結果を記録しておかなければならない。しかし、健康診断個人票に記載しなければならないとする規定はない。
【労働安全衛生法】
(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2 (略)
3 事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。
4 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。
5~9 (略)
【労働安全衛生規則】
(面接指導結果の記録の作成)
第52条の18 事業者は、面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。
2 (略)
(5)誤り。面接指導の実施者は安衛則第 52 条の 10 第1項に定められているが、実施者になれる者として医師はすべて該当する。
常識的に考えても、医師として事業者が指名できる医師がその事業場の産業医に限られたのでは、産業医の選任義務のない 50 人未満の事業場ではストレスチェックができなくなってしまう。
【労働安全衛生法】
(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2~9 (略)
【労働安全衛生規則】
(検査の実施者等)
第52条の10 法第66条の10第1項の厚生労働省令で定める者は、次に掲げる者(以下この節において「医師等」という。)とする。
一 医師
二 保健師
三 検査を行うために必要な知識についての研修であつて厚生労働大臣が定めるものを修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師
2 (略)