第2種衛生管理者試験 2019年10月公表 問29

代謝




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合格

 このページは、試験協会が2019年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年10月公表問題 問29 難易度 代謝に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
代謝

問29 代謝に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)代謝において、細胞に取り入れられた体脂肪やグリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生し、ATPが合成されることを同化という。

(2)代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、ATPに蓄えられたエネルギーを用いて、細胞を構成する蛋白質などの生体に必要な物質に合成されることを異化という。

(3)基礎代謝は、心臓の拍動、呼吸運動、体温保持などに必要な代謝で、基礎代謝量は、覚醒・横臥・安静時の測定値で表される。

(4)エネルギー代謝率は、一定時間中に体内で消費された酸素と排出された二酸化炭素の容積比で表される。

(5)エネルギー代謝率は、生理的負担だけでなく、精神的作業や静的筋作業の強度を表す指標としても用いられる。

正答(3)

【解説】

(1)誤り。生物が外部から取り入れた物質を変化させることを「代謝」というが、これは「異化」と「同化」の2つがある。「異化」とは複雑な物質を単純な物質に分解すること(エネルギが発生する)ことであり、「同化」とは単純な物質を複雑な物質に結合する(エネルギを用いて、身体を構成する物質を造る)ことである。それさえ知っていれば本肢は誤りと分かる。

そして、本肢のATP(アデノシン三リン)は、アデノシンにリン酸が3個結合したものであるが、リン酸同士の結合にエネルギが必要なことを利用して、エネルギーを蓄えるために利用される。ATPのリン酸を1個切り離すとADP(アデノシン二リン)になるが、エネルギを取り出すときはATPからリン酸を切り離してADPとするのである。逆に、エネルギを蓄えるときはADPにリン酸を結合させてATPとする。

(2)誤り。(1)で説明したように、代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、ATPに蓄えられたエネルギーを用いて、細胞を構成する蛋白質などの生体に必要な物質に合成されることを同化という。

(3)正しい。基礎代謝量とは「人が生きていく上で必要な最小限のエネルギ」のことである。「心臓の拍動、呼吸運動、体温保持などに必要な代謝」と表現することも誤りではない。

また、測定は、約12時間以上の絶食、安静仰臥位で筋の緊張を最小限にした状態、快適な室温で心身ともにストレスの少ない覚醒状態で測定される。実際には、当日の朝、測定実施場所に移動し、十分な安静(30分以上)を保った後で測定される。

(4)誤り。エネルギー代謝率は、さまざまな作業や運動などの身体活動強度を示す指標である。具体的には、身体活動に必要としたエネルギー量が基礎代謝量の何倍にあたるかによって表される。本肢の「一定時間中に体内で消費された酸素と排出された二酸化炭素の容積比」は、「呼吸比(呼吸商)」である。

(5)誤り。エネルギー代謝率は、身体の運動の強度を表すことはできるが、精神的作業の強度を表す指標として用いることはできない。

2020年08月22日執筆