問27 年次有給休暇(以下「休暇」という。)に関する次の記述のうち、労働基準法上、正しいものはどれか。
(1)法令に基づく育児休業又は介護休業で休業した期間は、出勤率の算定に当たっては、全労働日から除外して算出することができる。
(2)休暇の期間については、原則として、最低賃金又は平均賃金の100分の60の額の手当を支払わなければならない。
(3)労働者の過半数で組織する労働組合(その労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と使用者との書面による協定により休暇を与える時季に関する定めをした場合は、休暇のうち3日を超える部分については、その定めにより休暇を与えることができる。
(4)休暇の請求権は、これを1年間行使しなければ時効によって消滅する。
(5)一週間の所定労働時間が25時間で、一週間の所定労働日数が4日である労働者であって、雇入れの日から起算して3年6か月間継続勤務し、直近の1年間に、全労働日の8割以上出勤したものには、継続し、又は分割した10労働日の休暇を新たに与えなければならない。
このページは、試験協会が2018年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2018年10月公表問題 | 問10 | 難易度 | 基本的な問いではあるが、労務関係の問題であり、やや正答するのは難しいかもしれない。 |
---|---|---|---|
労働時間・年次有給休暇 | 5 |
問27 年次有給休暇(以下「休暇」という。)に関する次の記述のうち、労働基準法上、正しいものはどれか。
(1)法令に基づく育児休業又は介護休業で休業した期間は、出勤率の算定に当たっては、全労働日から除外して算出することができる。
(2)休暇の期間については、原則として、最低賃金又は平均賃金の100分の60の額の手当を支払わなければならない。
(3)労働者の過半数で組織する労働組合(その労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と使用者との書面による協定により休暇を与える時季に関する定めをした場合は、休暇のうち3日を超える部分については、その定めにより休暇を与えることができる。
(4)休暇の請求権は、これを1年間行使しなければ時効によって消滅する。
(5)一週間の所定労働時間が25時間で、一週間の所定労働日数が4日である労働者であって、雇入れの日から起算して3年6か月間継続勤務し、直近の1年間に、全労働日の8割以上出勤したものには、継続し、又は分割した10労働日の休暇を新たに与えなければならない。
正答(5)
【解説】
(1)誤り。労基法第39条第1項は「使用者は、(中略)全労働日の8割以上出勤した労働者に対して(中略)有給休暇を与えなければならない」とする。そして、同法39条第10項(働き方改革関連法改正前の第8項)は、育児休業又は介護休業の期間は出勤したものとみなすとされている。
分かりやすく言えば、労働者がある日に就労しなかった場合、出勤率の算定については以下の3つの方法が考えられるが、労基法は育児休業又は介護休業で休業した場合は、イの方法によらなければならないとするのである。一方、本肢は、法令に基づく育児休業又は介護休業で休業した期間について、ウの方法を取ることができると言っている。従って、本肢は誤りとなるのである。
ア 分子には算入しないが分母には算入する。(欠勤したものとする。)
イ 分子、分母双方に算入する。(出勤したものとする。)
ウ 分子、分母双方に算入しない。(算定の基礎としない)
なお、出勤率は、イが最も高くアが最も低くなる。
また、労働日については、平成25年7月10日基発0710第3号「年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の取扱いについて」によれば、「年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の日数は就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい、各労働者の職種が異なること等により異なることもあり得る」とされている。
【労働基準法】
(年次有給休暇)
第39条 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
2から9 (略)
10 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第2条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業した期間は、第1項及び第2項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。
(2)誤り。労基法第39条第9項により、年次有給期間中に支払うべき金額は、原則として「平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金」である。
【労働基準法】
(年次有給休暇)
第39条 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
2から8 (略)
9 使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇の期間又は第4項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、(以下略)
10 (略)
(3)誤り。労働者の過半数で組織する労働組合(その労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と使用者との書面による協定により休暇を与える時季に関する定めをした場合は、年次有給休暇の与え方のうち、時間単位での付与(労基法第39条第4項)、付与する時期(同第6項)及び平均賃金の算定方法(同9項)について、法令の範囲内でその定めによることができるが、休暇の与え方を自由に決められるわけではない。
また、付与する時期を定めることができるのは5日を超える部分であって、3日を超える部分ではなない。
【労働基準法】
(年次有給休暇)
第39条 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
2及び3 (略)
4 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前3項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
一 (略)
二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(5日以内に限る。)
三 (略)
5 (略)
6 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項から第3項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
7及び8 (略)
9 使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇の期間又は第4項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(中略)第40条第1項に規定する標準報酬月額の30分の1に相当する金額(その金額に、5円未満の端数があるときは、これを切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは、これを10円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。
10 (略)
(4)誤り。有給休暇の時期指定権は、労基法115条の規定により2年間の短期消滅時効にかかる。従ってある年の有給休暇の時期指定権がその年の1月1日に発生した場合、翌年の12月31日までに請求しなければ時効によって消滅することとなる。
【労働基準法】
(時効)
第115条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から2年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
※ 労基法第115条は、本問出題時には以下のようになっていた。その後の民法改正に伴う労基法の改正により現在は上記のようになっている。本問の正誤には影響を与えない。
第115条 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
(5)正しい。本肢の労働者は、1週間の所定労働時間が25時間なので、労基則第24条の3第1項の規定により労基法第39条第3項のカッコ書きに該当しないので、労基法第39条第3項が適用される。すなわち、同2項(参考までに記しておいた)は適用されない。
次に、一週間の所定労働日数が4日であるから、労基則第24条の3第4項の規定により、労基法第39条第3項第一号に該当する。
従って、この労働者は直近の1年間に全労働日の8割以上出勤しているので、労基則第24条第2項の表から、週所定労働日数が4日で雇入れの日から起算して3年6か月間継続勤務しているので、継続し、又は分割した10労働日の休暇を新たに与えなければならない。
【労働基準法】
(年次有給休暇)
第39条 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
2 使用者は、1年6箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる6箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の8割未満である者に対しては、当該初日以後の1年間においては有給休暇を与えることを要しない。
六箇月経過日から起算した継続勤務年数 | 労働日 |
---|---|
1年 | 1労働日 |
2年 | 2労働日 |
3年 | 4労働日 |
4年 | 6労働日 |
5年 | 8労働日 |
6年以上 | 10労働日 |
3 次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前2項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
二 (略)
4から10 (略)
【労基則】
第24条の3 法第39条第3項の厚生労働省令で定める時間は、30時間とする。
2 (略)
3 法第39条第3項の通常の労働者の1週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数と当該労働者の1週間の所定労働日数又は1週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数は、同項第一号に掲げる労働者にあつては次の表の上欄の週所定労働日数の区分に応じ、同項第二号に掲げる労働者にあつては同表の中欄の一年間の所定労働日数の区分に応じて、それぞれ同表の下欄に雇入れの日から起算した継続勤務期間の区分ごとに定める日数とする。
週所定 労働日数 |
一年間の 所定労働日数 |
雇入れの日から起算した継続勤務期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 | ||
4日 | 169日から 216日まで |
7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日から 168日まで |
5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日から 120日まで |
3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日から 72日まで |
1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
4 法第39条第3項第一号の厚生労働省令で定める日数は、4日とする。
5 (略)