第2種衛生管理者試験 2018年4月公表 問04

雇入時の健康診断




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合格

 このページは、試験協会が2018年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年04月公表問題 問04 難易度 健康診断に関するかなり高度な内容。健康診断業務に関わったことがないと難しいかもしれない。
雇入時の健康診断

問4 労働安全衛生規則に基づく医師による雇入時の健康診断に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)医師による健康診断を受けた後、3か月を経過しない者を雇い入れる場合、その健康診断の結果を証明する書面の提出があったときは、その健康診断の項目に相当する雇入時の健康診断の項目を省略することができる。

(2)雇入時の健康診断における聴力の検査は、1,000 ヘルツ及び4,000ヘルツの音に係る聴力について行わなければならない。

(3)雇入時の健康診断の項目には、血糖検査が含まれているが、血液中の尿酸の量の検査は含まれていない。

(4)雇入時の健康診断の結果に基づいて作成した健康診断個人票は、5年間保存しなければならない。

(5)雇入時の健康診断の結果については、その対象労働者数が50 人以上となるときには、事業場の規模にかかわらず、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

正答(5)

【解説】

雇入れ時の健康診断は安衛法第66条第1項により義務付けられ、具体的な手法は安衛則第43条に規定されている。また、その結果の保存については、安衛法第66条の3により義務付けられ、具体的な手法は安衛則第51条に規定されている。

一方、監督署長への報告は安衛法第100条第1項により義務付けられ、健康診断の結果については具体的な定めが、安衛則第52条に定められているが、雇入れ時の健康診断の結果を報告しなければならないとはされていない。

【労働安全衛生法】

(健康診断)

第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

2から5 (略)

(健康診断の結果の記録)

第66条の3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第66条第1項から第4項まで及び第五項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない。

(報告等)

第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

2及び3 (略)

【労働安全衛生規則】

(雇入時の健康診断)

第43条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

 既往歴及び業務歴の調査

 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(1,000Hz及び4,000Hzの音に係る聴力をいう。次条第1項第三号において同じ。)の検査

 胸部エックス線検査

 血圧の測定

 血色素量及び赤血球数の検査(次条第1項第六号において「貧血検査」という。)

 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)

 低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)

 血糖検査

 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(次条第1項第十号において「尿検査」という。)

十一 心電図検査

(健康診断結果の記録の作成)

第51条 事業者は、第43条、第44条若しくは第45条から第48条までの健康診断若しくは法第66条第4項の規定による指示を受けて行った健康診断(同条第5項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「第43条等の健康診断」という。)又は法第66条の2の自ら受けた健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを5年間保存しなければならない

(健康診断結果報告)

第52条 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、第44条、第45条又は第48条の健康診断(定期のものに限る。)を行なつたときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第六号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

※ 本条は、2022年10月1日より次のようになるが、本問の正誤とは関係がない。

(健康診断結果報告)

第52条 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、第44条又は第45条の健康診断(定期のものに限る。)を行つたときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第六号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 事業者は、第48条の健康診断(定期のものに限る。)を行つたときは、遅滞なく、有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書(様式第六号の二)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

(1)正しい。安衛則第43条但書により、医師による健康診断を受けた後、3か月を経過しない者を雇い入れる場合、その健康診断の結果を証明する書面の提出があったときは、その健康診断の項目に相当する雇入時の健康診断の項目を省略することができる。

(2)正しい。雇入時の健康診断における聴力の検査は、1,000Hz及び4,000Hzの音に係る聴力について行わなければならない。「1,000Hz及び4,000Hz」は覚えておくこと。

(3)正しい。雇入時の健康診断の項目には、安衛則第43条第1項第九号に血糖検査が定められているが、血液中の尿酸の量の検査は定められていない。

なお、尿中の物質の検査で「有無の検査」「濃度の検査」はあり得るが、「量の検査」というものはないと思ってよい。前にトイレに行ってから採尿までにどれだけ時間が経過したかによって量は変わってしまうだろう。そんなものを調べたところであまり意味はない。

(4)正しい。安衛則第51条は、雇入時の健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければならないと定めている。

(5)誤り。健康診断の結果の所轄労働基準監督署長への報告について規定している安衛則第52条は、雇入れ時の健診結果について報告を求めていない。雇入れた時点での健診結果は、その事業場の健康管理体制とは関係がないため、報告を受けたとしても、行政にとって使い道がないのである。

2020年08月30日執筆