問42 感覚又は感覚器に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)網膜には、色を感じる杆状体(杆体)と明暗を感じる錐状体(錐体)という2種類の視細胞が並んでいる。
(2)老視(老眼)とは、加齢によって水晶体が徐々に変性して調節できる範囲が狭まり、近点が遠くなり、遠点が近くなることをいう。
(3)半規管は体の傾きの方向や大きさを感じ、前庭は体の回転の方向や速度を感じる平衡感覚器であり、いずれも内耳にある。
(4)嗅覚は、味覚と同様に物質の化学的性質を認知する感覚であるが、同じ臭気に対して疲労しにくいという特徴がある。
(5)皮膚感覚には触圧覚、温度覚(温覚と冷覚)、痛覚などがあり、これらのうち温覚を感じる場所(温点)は、他の感覚を感じる場所よりも密度が高い。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2025年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2025年04月公表問題 | 問42 | 難易度 | 感覚及び感覚器に関する問題は過去問にもあるが、今回の問題の肢には新しいものがある。 |
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感覚及び感覚器 | 4 |
問42 感覚又は感覚器に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)網膜には、色を感じる杆状体(杆体)と明暗を感じる錐状体(錐体)という2種類の視細胞が並んでいる。
(2)老視(老眼)とは、加齢によって水晶体が徐々に変性して調節できる範囲が狭まり、近点が遠くなり、遠点が近くなることをいう。
(3)半規管は体の傾きの方向や大きさを感じ、前庭は体の回転の方向や速度を感じる平衡感覚器であり、いずれも内耳にある。
(4)嗅覚は、味覚と同様に物質の化学的性質を認知する感覚であるが、同じ臭気に対して疲労しにくいという特徴がある。
(5)皮膚感覚には触圧覚、温度覚(温覚と冷覚)、痛覚などがあり、これらのうち温覚を感じる場所(温点)は、他の感覚を感じる場所よりも密度が高い。
正答(2)
【解説】
感覚及び感覚器全般に関する過去問は、本サイトが解説を載せている 2017 年4月以降前回までに4回出題されている。また、他にも視覚に関する問題が7回、聴覚に関する問題が5回出題された。今回の問題では、(2)と(4)が新規の問題となっている。
なお、本問は、(1)、(3)及び(4)が、労働衛生コンサルタント試験の 2014 年度「労働衛生一般」問 13 と酷似しており、これをヒントに出題した可能性がある。
(1)誤り。網膜の視細胞には、杆状体(捍体)細胞と杆状体細胞の2種類があることは正しい。しかし、杆状体(捍体)細胞は暗いところで働く視細胞であり、錐状体細胞は明るいところで働く視細胞である。
なお、杆状体細胞は、約1億2000万個あり、網膜全体に分布しているが、黄斑部にはあまり存在しない。一方、錐状体細胞は黄斑部の周囲に密集しており、周辺部にいくにつれてまばらとなる。
(2)正しい。老眼とは、老化によって水晶体を調節する機能が低下し、調節できる範囲が少なくなる現象であり、近点が遠くなり、遠点が近くなる。
また、遠くがよく見える人は近くが見えにくくなり、近くが見える人は遠くが見えにくくなる。
(3)誤り。半規管は、体の回転の方向や速度を感じ、前庭は、体の傾きの方向や大きさを感じる。半規管と前庭の説明が逆になっている。
前庭は三半規管の根元の部分にあり、単純に言えば、物体を感じることができる有毛細胞が内側にびっしりと生えた容器だと思えばよい。その容器の中(有毛細胞の上)に小さな耳石が入っている。脳は、この耳石がある部分が「下」であると感知することで、身体の傾きを知るのである。
三半規管は、「外側半規管」「前半規管」「後半規管」という3つの中空のリングからなる器官である。リングの中はリンパ液で満たされており、身体が回転すると、その動きによってリンパ液がリング内を回るように流れる。これを感知して、脳は身体の回転を知るのである。
(4)誤り。嗅覚は、味覚と同様に物質の化学的性質を認知する感覚であることは正しい。しかし、同じ臭気に対して疲労しやすいという特徴がある(※)。
※ 高木貞敬「嗅覚の生理学」(醸協第68巻第5号)によれば、「ヒトの嗅覚はすぐに疲労して"馬鹿"になり、もののニオイが分らなくなる。どんなによい香でも、疲れてしまえば感覚はなくなる。しかしそれは、そのニオイに対してだけであって他の異ったニオイは十分にかぐことができるから、これを選択的疲労という。風呂の中でガス中毒を起すのは徐々に洩れているガスに対して嗅覚が疲労するためで、あとから入って来たヒトは呼吸もできない程ガスが充満していても、初めから入っているヒトは気付かないので中毒し、最後には死に到る
」としている。
(5)誤り。皮膚で感じる感覚には、触圧覚(触覚及び圧覚)、温度覚(冷覚及び温覚)、痛覚などがあることは正しい。これらの感覚を受容する場所(受容器)が、触点、圧点、痛点、冷点、温点である。
これらの数は、多い順に、触点、痛点、冷点、圧点、温点となっている。温点は、触点や痛点に比較すると「生命・身体の危険」との関係が低く、触点や痛点ほどには、すぐに反応する必要性が低いからと説明されることが多い。