問18 厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)リスクアセスメントの基本的手順のうち最初に実施するのは、労働者の就業に係る化学物質等による危険性又は有害性を特定することである。
(2)ハザードは、労働災害発生の可能性と負傷又は疾病の重大性(重篤度)の組合せであると定義される。
(3)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、化学物質等の有害性に応じた有効な保護具の使用よりも作業手順の改善、立入禁止等の管理的対策を優先する。
(4)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、法令に定められた事項を除けば、危険性又は有害性のより低い物質への代替等を最優先する。
(5)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討に当たっては、より優先順位の高い措置を実施することにした場合であって、当該措置により十分にリスクが低減される場合には、当該措置よりも優先順位の低い措置の検討は必要ない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2024年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
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2024年04月公表問題 | 問18 | 難易度 | リスクアセスメント指針の対策に関する問題である。正答できなければならない。 |
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リスクアセスメント | 4 |
問18 厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)リスクアセスメントの基本的手順のうち最初に実施するのは、労働者の就業に係る化学物質等による危険性又は有害性を特定することである。
(2)ハザードは、労働災害発生の可能性と負傷又は疾病の重大性(重篤度)の組合せであると定義される。
(3)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、化学物質等の有害性に応じた有効な保護具の使用よりも作業手順の改善、立入禁止等の管理的対策を優先する。
(4)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、法令に定められた事項を除けば、危険性又は有害性のより低い物質への代替等を最優先する。
(5)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討に当たっては、より優先順位の高い措置を実施することにした場合であって、当該措置により十分にリスクが低減される場合には、当該措置よりも優先順位の低い措置の検討は必要ない。
正答(2)
【解説】
本問は、あくまでも2015年9月に改正された厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(以下、本問において「指針」という。)に関するものである。従って、これに基づいて解答する必要がある。
(1)正しい。指針の「3 実施内容」において、リスクアセスメントの実施事項が記載されているが、その最初の項目は「(1) 化学物質等による危険性又は有害性の特定」となっている。
もっとも、現実に最初に行うべきは、「リスクアセスメントの対象の選定」であり、次に行うのは「情報の入手」であろう。指針では、この2つはリスクアセスメントの準備段階として位置付けられており、「リスクアセスメントの基本的手順」の前段階なので、本肢は正答となる。
(2)誤り。指針によれば、ハザードとは、「発生する恐れのある負傷又は疾病の重大性(重篤度)」である。これに「労働災害発生の可能性」を組合せると「リスク」になる。
(3)正しい。化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討は、「法令に定められた事項」があればまずそれを実施する。次に、検討の優先順位を、「本質安全化」、「工学的対策」、「管理的対策」、「保護具の着用」の順序とする。
有効な保護具であっても、使用方法や管理が適切でないと有効ではなくなるおそれがあるので、作業手順の改善、立入禁止等の管理的対策を優先するのである。
(4)正しい。(3)で述べた通り。化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、法令に定められた事項を除けば、「危険性又は有害性のより低い物質への代替等」(本質安全化)を最優先する。
(5)正しい。指針の「10 リスク低減措置の検討及び実施」において、「より優先順位の高い措置を実施することにした場合であって、当該措置により十分にリスクが低減される場合には、当該措置よりも優先順位の低い措置の検討まで要するものではないこと」とされている。
ただし、実務においては、「管理的対策」は、「本質安全化」「工学的対策」により十分にリスクが低くなった場合であっても必要な場合があることに留意すること。また、「管理的対策」によってリスクが十分に低くなったと判断される場合であっても、保護具の着用を行うべきことがあると考えておくこと。