第1種衛生管理者試験 2024年04月公表 問13

化学物質による健康障害




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2024年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2024年04月公表問題 問13 難易度 過去の公表問題に類似の出題例は多い。本問はすべて過去の公表問題と同じ。正答できる必要がある。
化学物質による健康障害

問13 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)シアン化水素による中毒では、細胞内での酸素利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。

(2)硫化水素による中毒では、意識消失、呼吸麻などがみられる。

(3)ふっ化水素による慢性中毒では、骨の硬化、斑状歯などがみられる。

(4)二酸化硫黄による慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸しょく症などがみられる。

(5)二酸化窒素による中毒では、末しょう神経障害などがみられる。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。過去問と全く同じである。シアン化水素は、ミトコンドリア内のチトクロームオキシダーゼという酵素と結合することにより、細胞の酸素代謝を直接阻害する。これにより呼吸困難、痙攣などがみられる。

(2)正しい。硫化水素による中毒では、700~800ppmで意識消失、1,000~2,000ppmで呼吸麻痺などがみられる。なお、700ppm程度より濃度が高くなると臭気を感じなくなることも覚えておこう。

ガス濃度[ppm] 作用
0.025 臭いで感知しうる限界
0.3 明瞭に感知される
5~10 悪臭を強く感じる
20~50 目の炎症
50~150 頭痛、めまい、吐き気
150~200 悪臭の麻痺により臭気を感じなくなる
300 亜急性中毒(意識不明)
700~800 臭気を感ぜずに意識不明、30 分で生命危機
1000~2000 失神、痙攣、呼吸停止、死に至る

(3)正しい。ふっ化水素に限らず、弗化物による慢性中毒として、斑状歯(歯牙弗化物症)や骨硬化症がみられる。

(4)正しい。二酸化硫黄(亜硫酸ガス)による慢性中毒では、歯牙酸食症、慢性気管支炎、喘息製気管支炎、胃腸障害、結膜炎、鼻咽頭炎、味覚・嗅覚の異常、食欲不振、体重減少、易疲労感などがみられる。

(5)誤り。二酸化窒素による中毒で、末梢神経障害などがみられるとする報告はない。なお、のど、気管、肺などの呼吸器に悪影響を与える。肺機能への影響及び肺水腫が認められたとする報告等がある。

  1. (2):表は環境省長野自然環境事務所「地獄谷歩道沿いの管理作業における安全対策マニュアル作成の手引き」(2012年3月)による。
2024年04月06日執筆