第1種衛生管理者試験 2023年4月公表 問15

騒音及び騒音による健康障害




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学習する女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2023年10月公表問題 問15 難易度 過去問を多少ひねってあるが過去問の学習で正答可能な問題。正答できる必要がある。
騒音による健康障害

問15 作業環境における騒音及びそれによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)騒音レベルの測定は、通常、騒音計の周波数重み付け特性Aで行い、その大きさはdBで表す。

(2)騒音性難聴は、初期には気付かないことが多く、また、不可逆的な難聴であるという特徴がある。

(3)騒音は、自律神経系や内分泌系へも影響を与えるため、騒音ばく露により、交感神経の活動のこう進や副腎皮質ホルモンの分泌の増加が認められることがある。

(4)騒音性難聴では、通常、会話音域より高い音域から聴力低下が始まる。

(5)等価騒音レベルは、中心周波数500Hz、1,000Hz、2,000Hz及び4,000Hzの各オクターブバンドの騒音レベルの平均値で、変動する騒音に対する人間の生理・心理的反応とよく対応する。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。現在の騒音計には、A特性、C特性及びZ(又はFLAT)特性が装備されていることが多いが、作業環境における騒音測定では常にA特性で測定する。なお、その単位はdB(A)で表示する。

(2)正しい。騒音性難聴の初期には、4,000 Hz 付近のdip型(※)の難聴が進行する。これは通常の会話域よりもやや高い周波数であるため、騒音性難聴は、初期には気付かないことが多い。また、騒音性難聴では有毛細胞が変性して破壊されてしまうため、不可逆的な難聴であるという特徴がある。

※ dip型とは特定の周波数領域の音が聞こえにくくなることを言う。

(3)正しい。騒音は、自律神経系や内分泌系へも影響を与える。騒音ばく露により、ストレスが増大すると視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンが分泌され、下垂体前葉からの副腎皮質刺激ホルモンの分泌が促進される。

(4)正しい。会話音域は個人差や性差もあるが、広く見ても250Hzから4,000Hz程度で、通常は 500Hz から 2,000Hz 程度である。そして騒音性難聴の初期には、4,000 Hz 付近のdip型(c5dip)の難聴(※)が進行する。このため、騒音性難聴の初期には症状に気付きにくい。

※ 難聴には、高音障害型、低音障害型、水平型、dip型などがある。このうちの dip 型とは特定の周波数領域の音が聞こえにくくなり、それより高い音と低い音の聴力低下はそれほどでもないことを言う。そして、c5は、4,000Hz(正確には4,186.01Hz)を指す。

なお、c5のcは小文字である。大文字の場合は周波数が異なる。別名、cvともいう。

(5)誤り。等価騒音レベルとは、不規則に変化する騒音を評価するための指数である。「測定時間内における変動騒音の平均2乗音圧に等しい平均2乗音圧を与える連続定常音の騒音レベル」と定義される。なお、睡眠影響やアノイアンス(人に感じられる感覚的なうるささ)との対応に優れているとされており、「変動する騒音に対する人間の生理・心理的反応とよく対応する」としていることは正しい。

なお、連続測定の場合、測定時間をt1からt2までとし、測定された音圧をPA(t)、基準音圧をP0とすると、等価騒音レベルLaeqは、

L aeq = 10 log 1 t 2 - t 1 t1 t2 P A 2 P 0 2 dt

となる(覚えなくてよい)。

2023年10月06日執筆