第1種衛生管理者試験 2023年4月公表 問14

化学物質による健康障害




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学習する女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2023年10月公表問題 問14 難易度 過去に類似の出題例は多い。本問も過去問の学習で正答可能。正答できる必要がある。
化学物質による健康障害

問14 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)一酸化炭素による中毒では、ヘモグロビン合成の障害による貧血、溶血などがみられる。

(2)ふっ化水素による中毒では、脳神経細胞が侵され、幻覚、錯乱などの精神障害がみられる。

(3)シアン化水素による中毒では、細胞内の酸素の利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。

(4)塩化ビニルによる慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸しょく症などがみられる。

(5)塩素による中毒では、再生不良性貧血、溶血などの造血機能の障害がみられる。

正答(3)

【解説】

(1)誤り。過去問と全く同じである。一酸化炭素による中毒は、一酸化炭素が血液のヘモグロビンと結合してしまい、酸素がヘモグロビンと結合することを妨害し、血液が酸素を運搬する能力が減少することによって起きる。ヘモグロビンが合成されることの障害が起きるわけではない。

「ヘモグロビン合成」という用語が、「ヘモグロビンが合成されること」を意味し、「ヘモグロビンと酸素が結合すること」を意味する言葉ではないと気付けば、あとは常識問題であろう。なお、「溶血」とは赤血球が崩壊してヘモグロビンが遊離し、周囲の液体に浮遊することである。

(2)誤り。過去問と全く同じである。ふっ化水素による中毒で、脳神経細胞が侵され、幻覚、錯乱などの精神障害がみられるという報告はない。なお、弗化水素に限らず、弗化物による慢性中毒として、斑状歯(歯牙弗化物症)や骨硬化症がみられる。

(3)正しい。過去問と全く同じである。シアン化水素は、ミトコンドリア内のチトクロームオキシダーゼという酵素と結合することにより、細胞の酸素代謝を直接阻害する。これにより呼吸困難、痙攣などがみられる。

(4)誤り。過去問と全く同じである。塩化ビニルによる慢性中毒で、慢性気管支炎、歯牙酸しょく症などがみられるという報告はない。

なお、塩化ビニルによる慢性中毒では、発がん性(肝臓がん、血管肉腫、脳及び中枢神経系のがん、肺がん)、肝機能障害、肝臓腫大、肝脾腫大、肝線維症、門脈性高血圧症などがみられる。

(5)誤り。過去問と全く同じである。後天性の再生不良性貧血については、一部の例で抗菌薬や解熱鎮痛薬などの薬剤が発症に関与している可能性があるが、塩素が原因となったという報告はない。発症の引き金となる原因はほとんどの場合不明である。

なお、溶血については、塩素が血液中に混入した場合、溶血を発生する危険性があるため誤りとは言えない。

塩素の急性毒性としては、皮膚腐食性、眼刺激性、呼吸器系への障害及び刺激性などがある。長期ばく露による健康障害としては、呼吸器系、腎臓、臭覚器の障害の他、歯の障害などがみられる。

2023年10月06日執筆