第1種衛生管理者試験 2023年4月公表 問32

食中毒発生の原因と予防方法




問題文
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未来を指し示す女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2023年04月公表問題 問32 難易度 今回の公表問題は過去問をかなりひねってある。しかし、当サイトの過去問の解説で正答できる内容。
食中毒

問32 食中毒に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)黄色ブドウ球菌による食中毒は、食品に付着した菌が食品中で増殖した際に生じる毒素により発症する。

(2)サルモネラ菌による食中毒は、鶏卵が原因となることがある。

(3)腸炎ビブリオ菌は、熱に強い。

(4)ボツリヌス菌は、缶詰、真空パック食品など酸素のない食品中で増殖して毒性の強い神経毒を産生し、筋肉の麻症状を起こす。

(5)ノロウイルスの失活化には、煮沸消毒又は塩素系の消毒剤が効果的である。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。黄色ブドウ球菌による食中毒は毒素型に分類される。毒素型食中毒は、食物に付着した細菌により産生された毒素によって起こる食中毒である。代表的なものに黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などである。

(2)正しい。サルモネラ菌による食中毒は感染型食中毒に分類される。感染型食中毒は、食物に付着した細菌そのものの感染によって起こる食中毒であり、卵(加工品含む)、食肉製品、乳製品などの食品に付着した菌によって発症する。代表的なものにサルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクターなどがある。

(5)誤り。過去問と同じ肢。国立感染症研究所の「腸炎ビブリオ感染症とは」によれば、「熱にも弱く、煮沸すれば瞬時に死滅する」とされている。

(4)正しい。ボツリヌス菌は、ビン詰、缶詰、容器包装詰め食品、保存食品など酸素のない状態の食品が原因となりやすい。毒素は、筋肉の麻痺症状を起こす。重症になると呼吸筋も麻痺して呼吸が困難となって死亡する例もある。

(5)正しい。厚生労働省の「ノロウイルスに関するQ&AのQ15」によれば、「一般にウイルスは熱に弱く、加熱処理はウイルスの活性を失わせる(失活化といいます。)有効な手段です。ノロウイルスの汚染のおそれのある二枚貝などの食品の場合は、中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱が望まれます」とされている。

また、「ノロウイルスに関するQ&AのQ15」によれば、「一般的な感染症対策として、消毒用エタノールや逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)が用いられることがありますが、ノロウイルスを完全に失活化する方法としては、次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸水や加熱による処理があります」とされている。

従って、「ノロウイルスの失活化には、煮沸消毒又は塩素系の消毒剤が効果的である」とする本肢は正しい。

【過去問の学習方法について】

本年の問題は、過去の公表問題をかなりひねってある。しかし、このサイトの過去問の解説文をきちんと理解していれば正答できる問題である

合格マニュアル的な資料を利用して過去問とその正答を記憶するような学習方法では、これからのこの種の問題には対応できない。

今後、この種の問題が増加することはあっても減ることはないだろう。たんなる受験テクニックの記憶ではなく、労働衛生に関する理解が重要である。

※ 詳細は「衛生管理者試験の学習方法」を参照して頂きたい。

2023年04月16日執筆