問5 屋内作業場において、第二種有機溶剤等を使用して常時洗浄作業を行う場合の措置として、法令上、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、有機溶剤中毒予防規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)作業場所に設けた局所排気装置について、囲い式フードの場合は0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有するものにする。
(2)有機溶剤等の区分の色分けによる表示を黄色で行う。
(3)作業中の労働者が見やすい場所に、有機溶剤の人体に及ぼす作用、有機溶剤等の取扱い上の注意事項及び有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置を掲示する。
(4)作業に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、特別の項目について医師による健康診断を行い、その結果に基づき作成した有機溶剤等健康診断個人票を3年間保存する。
(5)労働者が有機溶剤を多量に吸入したときは、速やかに、当該労働者に医師による診察又は処置を受けさせる。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2023年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2023年04月公表問題 | 問05 | 難易度 | 有機則に関する基本的な知識問題。過去問を多少ひねってあるが、過去問の知識で正答可能。 |
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有機溶剤中毒予防規則 | 4 |
問5 屋内作業場において、第二種有機溶剤等を使用して常時洗浄作業を行う場合の措置として、法令上、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、有機溶剤中毒予防規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)作業場所に設けた局所排気装置について、囲い式フードの場合は0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有するものにする。
(2)有機溶剤等の区分の色分けによる表示を黄色で行う。
(3)作業中の労働者が見やすい場所に、有機溶剤の人体に及ぼす作用、有機溶剤等の取扱い上の注意事項及び有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置を掲示する。
(4)作業に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、特別の項目について医師による健康診断を行い、その結果に基づき作成した有機溶剤等健康診断個人票を3年間保存する。
(5)労働者が有機溶剤を多量に吸入したときは、速やかに、当該労働者に医師による診察又は処置を受けさせる。
正答(4)
【解説】
有機則の問題は、特定の業務について出題されることが多いが、その業務が有機溶剤業務に該当しない問題が出題されることはまずないので、あまり気にする必要はない。
因みに本問の「有機溶剤を用いて行う洗浄の業務」も、有機溶剤業務に該当する。
【有機則】
(定義)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~ト (略)
チ 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当する洗浄の業務を除く。)又は払しよくの業務
リ~ヲ (略)
2 (略)
(1)正しい。有機則第16条第1項の規定により、作業場所に設けた局所排気装置について、囲い式フードの場合は0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有するものにする。
【有機溶剤中毒予防規則】
(局所排気装置の性能)
第16条 局所排気装置は、次の表の上欄に掲げる型式に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。
型式 | 制御風速(メートル/秒) | |
---|---|---|
囲い式フード | 0.4 | |
外付け式フード | 側方吸引型 | 0.5 |
下方吸引型 | 0.5 | |
上方吸引型 | 1.0 | |
備考 一 この表における制御風速は、局所排気装置のすべてのフードを開放した場合の制御風速をいう。 二 この表における制御風速は、フードの型式に応じて、それぞれ次に掲げる風速をいう。 イ 囲い式フードにあつては、フードの開口面における最小風速 ロ 外付け式フードにあつては、当該フードにより有機溶剤の蒸気を吸引しようとする範囲内における当該フードの開口面から最も離れた作業位置の風速 |
2 (略)
(2)正しい。有機則第25条第2項の規定により、有機溶剤等の表示の色分けを、第二種有機溶剤等についてはを黄色で行う。
【有機溶剤中毒予防規則】
(有機溶剤等の区分の表示)
第25条 事業者は、屋内作業場等において有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を、色分け及び色分け以外の方法により、見やすい場所に表示しなければならない。
2 前項の色分けによる表示は、次の各号に掲げる有機溶剤等の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める色によらなければならない。
一 第一種有機溶剤等 赤
二 第二種有機溶剤等 黄
三 第三種有機溶剤等 青
※ 有機則第25条第1項は、出題当時は下記のようになっていた。本問公表の日に施行された省令改正により現在は上記のようになっているが、本問の正誤に影響はない。この改正の趣旨については「一人親方等の保護に関する安衛法令改正」を参照されたい。
(有機溶剤等の区分の表示)
第25条 事業者は、屋内作業場等において有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、色分け及び色分け以外の方法により、見やすい場所に表示しなければならない。
2 (変更なし)
(3)正しい。有機則第24条の規定により、作業中の労働者が見やすい場所に、有機溶剤の人体に及ぼす作用、有機溶剤等の取扱い上の注意事項及び有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置を掲示する。
【有機溶剤中毒予防規則】
(掲示)
第24条 事業者は、屋内作業場等において有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、次の事項を、見やすい場所に掲示しなければならない。
一 有機溶剤により生ずるおそれのある疾病の種類及びその症状
二 有機溶剤等の取扱い上の注意事項
三 有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置
四 (略)
(4)誤り。有機則第30 条の規定により、健康診断の結果に基づく有機溶剤等健康診断個人票は5年間保存しなければならない。3年ではない。
なお、作業に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、特別の項目について医師による健康診断を行うことは正しい。
【有機溶剤中毒予防規則】
(健康診断)
第29条 令第二十二条第一項第六号の厚生労働省令で定める業務は、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあつては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、第三条第一項の場合における同項の業務以外の業務とする。
2 事業者は、前項の業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一~四 (略)
3~6 (略)
(健康診断の結果)
第30条 事業者は、前条第二項、第三項又は第五項の健康診断(法第六十六条第五項ただし書の場合における当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「有機溶剤等健康診断」という。)の結果に基づき、有機溶剤等健康診断個人票(様式第三号)を作成し、これを五年間保存しなければならない。
(5)正しい。労働者が有機溶剤を多量に吸入したときは、有機則第30条の4の規定により、速やかに、当該労働者に医師による診察又は処置を受けさせなければならない。
【有機溶剤中毒予防規則】
(健康診断)
第30条の4 事業者は、労働者が有機溶剤により著しく汚染され、又はこれを多量に吸入したときは、速やかに、当該労働者に医師による診察又は処置を受けさせなければならない。
2 (略)