第1種衛生管理者試験 2022年4月公表 問14

有機溶剤による健康影響等




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2022年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2022年04月公表問題 問14 難易度 きちんと学習していれば正答できる問題。確実に正答しておきたい問題である。
有機溶剤による健康影響

問14 有機溶剤に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)有機溶剤の多くは、揮発性が高く、その蒸気は空気より軽い。

(2)有機溶剤は、全て脂溶性を有するが、脳などの神経系には入りにくい。

(3)メタノールによる障害として顕著なものには、網膜の微細動脈りゅうを伴う脳血管障害がある。

(4)テトラクロロエチレンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物には、トリクロロ酢酸がある。

(5)二硫化炭素による中毒では、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼがみられる。

正答(4)

【解説】

(1)誤り。有機溶剤の多くは、揮発性が高いことは正しい。しかし、その蒸気は空気より重い。

(2)誤り。一般に有機溶剤は脂溶性を有する。そのため脂質が多い神経、脳に結合蓄積されやすい。

(3)誤り。メタノールによる健康障害として顕著なものは、眼に対する重篤な損傷、中枢神経系への影響、麻酔作用などである。

網膜細動脈瘤は高血圧のある場合に生じるおそれがある疾病である。脳血管障害もどちらかといえば生活習慣病である。

(4)正しい。テトラクロロエチレンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物には、トリクロロ酢酸がある。下記表は覚えておくこと。

物質名 生物学的モニタリングの指標(検査内容)
トルエン 尿中馬尿酸
キシレン 尿中メチル馬尿酸
スチレン 尿中マンデル酸
テトラクロルエチレン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
1.1.1-トリクロルエタン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
トリクロルエチレン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
N.N-ジメチルホルムアミド 尿中N-メチルホルムアミド
ノルマルヘキサン 尿中2,5-ヘキサンジオン
血液中鉛、尿中デルタアミノレブリン酸

(5)誤り。メトヘモグロビン形成によるチアノーゼがみられるのは、アニリン、アセトアニリド、ニトロベンゼン、亜硝酸アミル、亜硝酸プロピルなどであろう。二硫化炭素による中毒では、レーヨン工場で目の焼勺感や羞明を生じたとの事例や、興奮、情緒不安定、せん妄、幻覚、妄想、自殺願望等の症状がみられたとの報告がある。

2022年04月03日執筆