第1種衛生管理者試験 2022年4月公表 問13

一酸化炭素による健康影響




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2022年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2022年04月公表問題 問13 難易度 過去問に類問がない新傾向問題だが、多くのテキストに記載されている内容。正答できる問題。
一酸化炭素と健康影響

問13 一酸化炭素に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)一酸化炭素は、無色・無臭の気体であるため、吸入しても気が付かないことが多い。

(2)一酸化炭素は、エンジンの排気ガス、たばこの煙などに含まれる。

(3)一酸化炭素中毒は、血液中のグロブリンと一酸化炭素が強く結合し、体内の各組織が酸素欠乏状態を起こすことにより発生する。

(4)一酸化炭素は、炭素を含有する物が不完全燃焼した際に発生する。

(5)一酸化炭素中毒の後遺症として、健忘やパーキンソン症状がみられることがある。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。一酸化炭素は、無色・無臭の気体で、初期症状も頭痛、吐き気、耳鳴りなど風邪のようなものなので吸入しても気が付かないことがある(※)

※ 経済産業省「一酸化炭素(CO)中毒」など参照

(2)正しい。エンジンは燃焼機関であり、理論上は完全燃焼させることにより一酸化炭素の排出を抑えることは可能だが、現実には一酸化炭素の排出を完全に止めることは困難である(※1)。また、最近ではポータブル電源による一酸化炭素中毒も問題となっている(※2)

※1 自動車排出ガス規制の強化等により、自動車のエンジンからの窒素酸化物(NOX)は低減されつつあるが、エンジンの排気ガスからのNOXを削減しようとすると、逆に一酸化炭素濃度が増加する傾向がある。

※2 消費者庁「携帯発電機やポータブル電源の事故に注意!」など参照

また、たばこの煙には1~3%程度の一酸化炭素が含まれている。ニコチン、タールとともに「たばこの3害」のひとつとされている。

(3)誤り。一酸化炭素中毒は、赤血球中のヘモグロビンと一酸化炭素が強く結合し、体内の各組織が酸素欠乏状態を起こすことにより発生する。グロブリン(※)と結合するのではない。

※ 免疫グロブリンは血漿中に含まれる血清タンパク質のひとつで、病原体などの異物が体内に入ったときに、これを排除する抗体である。2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)からなるY字型の形をしている。

赤血球中のヘモグロビンは酸素と結合して全身に酸素を運ぶ役割を有している。ところが、一酸化炭素は酸素の230倍程度ヘモグロビンと結合しやすいため、一酸化炭素を吸引するとヘモグロビンが一酸化炭素と結合してしまい、酸素と結びつくことができなくなる。

(4)正しい。これは説明するまでもあるまい。一酸化炭素は、炭素を含有する物が不完全燃焼した際に発生する。

一酸化炭素中毒による労働災害は、毎年30から40件前後発生しており、例年起因別で多いのは内燃機関の使用によるもの(約4割)、調理器具の使用によるもの(約2割)となっており、屋外における有害作業による中毒災害も発生している。

※ 厚生労働省「一酸化炭素中毒災害等による労働災害防止について」など参照。なお、狭隘な場所で二酸化炭素をシールドガスを用いるアーク溶接で、二酸化炭素の熱分解によって一酸化炭素が発生することがある。

(5)正しい。一酸化炭素中毒の後遺症として、健忘やパーキンソン症状がみられることがある(※)

※ 一酸化炭素への職業性ばく露による疾病又は障害として、労働基準法施行規則別表第1の2に基づく告示(昭和 53 年)では、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、昏睡等の意識障害、記憶減退、性格変化、失見当識、幻覚、せん妄等の精神障害又は運動失調、視覚障害、色視野障害、前庭機能障害等の神経障害が掲げられており、健忘やパーキンソン症状がみられる。

2022年04月03日執筆