第1種衛生管理者試験 2021年4月公表 問01

衛生管理体制




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 このページは、試験協会が2021年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年04月公表問題 問01 難易度 産業医、衛生管理者の選任義務は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。
衛生管理体制

問1 常時250人の労働者を使用する運送業の事業場における衛生管理体制に関する(1)~(5)の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。

ただし、250人中には、次の業務に常時従事する者が含まれているが、その他の有害業務はないものとし、衛生管理者の選任の特例はないものとする。

深夜業を含む業務 ・・・ 200人
多量の低温物体を取り扱う業務 ・・・ 50人

(1)総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

(2)衛生管理者は、2人以上選任しなければならない。

(3)衛生管理者は、全て第一種衛生管理者免許を有する者のうちから選任することができる。

(4)衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならない。

(5)衛生管理者のうち、1人は専属でない労働衛生コンサルタントを選任することができる。

正答(4)

【解説】

総括安全衛生管理者の選任は、衛生管理者試験で出題されることは多くないが、基本的な事項は覚えておこう。

総括安全衛生管理者の選任の要件は、安衛令第2条に定められているが、事業場の業種と労働者数のみによって規定されており、有害業務に従事する労働者数とは無関係である。

また、総括安全衛生管理者はその事業場のトップを選任する。トップであるから、選任数は1人である。複数選任することはない。ただし、その者が職務を行えないときは安衛則第3条により、代理者を選任する。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

2及び3 (略)

一~五 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人

 その他の業種 千人

一方、衛生管理者の選任は安衛法第12条で義務付けられ、安衛令第4条で常時使用(雇用)する労働者が50人以上の場合に選任しなければならないとされている。また、衛生管理者の人数、種類等は安衛則第7条から12条に定められている。

【労働安全衛生法】

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し(中略)なければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(衛生管理者を選任すべき事業場)

第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(衛生管理者の選任)

第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

 (略)

 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合において、当該衛生管理者の中に第10条第3号に掲げる者がいるときは、当該者のうち1人については、この限りでない。

 次に掲げる業種の区分に応じ、それぞれに掲げる者のうちから選任すること。

 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第10条各号に掲げる者

 (略)

 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。

事業場の規模
(常時使用する労働者数)
衛生管理者数
50人以上200以下 1人
200人を超え500人以下 2人
500人を超え1,000人以下 3人
1,000人を超え2,000人以下 4人
2,000人を超え3,000人以下 5人
3,000人を超える場合 6人

 次に掲げる事業場にあつては、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者とすること。

 常時千人を超える労働者を使用する事業場

 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則(中略)第18条各号に掲げる業務に常時30人以上の労働者を従事させるもの

 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則第18条第一号、第三号から第五号まで若しくは第九号に掲げる業務に常時30人以上の労働者を従事させるものにあつては、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任すること。

 (略)

(衛生管理者の資格)

第10条 法第十二条第一項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。

一、二 (略)

 労働衛生コンサルタント

 (略)

【労働基準法施行規則】

第18条 法第三十六条第六項第一号の厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務は、次に掲げるものとする。

 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 異常気圧下における業務

 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務

 重量物の取扱い等重激なる業務

 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

 、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務

(1)正しい。この事業場は常時250人の労働者を使用する運送業の事業場であるから、安衛令第2条により総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

(2)正しい。安衛則第7条第1項第四号の表から、250人の労働者を使用する事業場では、衛生管理者は2人以上選任しなければならない。

(3)正しい。運送業は、安衛則第7条第1項第三号のイの業種に該当するので、原則として第一種衛生管理者免許を有する者のうちから選任することができる。そして、同第六号に該当しないので、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任する必要もない。

(4)誤り。この事業場は常時250人の労働者を使用する運送業の事業場であるから、安衛則第7条第1項第五号のいずれにも該当しない。

(5)正しい。安衛則第7条第1項第二号但書により、複数の衛生管理者を選任する場合は、労働衛生コンサルタント1人のみは専属でないを選任することができる。

2021年04月11日執筆