問24 衛労働安全衛生法に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)の結果に基づき実施する面接指導に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)面接指導を行う医師として、当該事業場の産業医を指名しなければならない。
(2)面接指導の結果は、健康診断個人票に記載しなければならない。
(3)労働者に対するストレスチェックの事項は、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因」、「当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状」及び「職場における他の労働者による当該労働者への支援」に関する項目である。
(4)面接指導の対象となる要件に該当する労働者から申出があったときは、申出の日から3か月以内に、面接指導を行わなければならない。
(5)ストレスチェックと面接指導の実施状況について、面接指導を受けた労働者数が50人以上の場合に限り、労働基準監督署長へ報告しなければならない。
このページは、試験協会が2020年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。
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2020年10月公表問題 | 問24 | 難易度 | ストレスチェックの結果に基づく面接指導は初出。しかし、基本的な内容であり、正答しておきたい。 |
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面接指導 | 4 |
問24 衛労働安全衛生法に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)の結果に基づき実施する面接指導に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)面接指導を行う医師として、当該事業場の産業医を指名しなければならない。
(2)面接指導の結果は、健康診断個人票に記載しなければならない。
(3)労働者に対するストレスチェックの事項は、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因」、「当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状」及び「職場における他の労働者による当該労働者への支援」に関する項目である。
(4)面接指導の対象となる要件に該当する労働者から申出があったときは、申出の日から3か月以内に、面接指導を行わなければならない。
(5)ストレスチェックと面接指導の実施状況について、面接指導を受けた労働者数が50人以上の場合に限り、労働基準監督署長へ報告しなければならない。
正答(3)
【解説】
(1)誤り。安衛法第66条の3は、ストレスチェックの結果、一定の要件を満たす労働者で申し出を行った者に対して、医師による面接指導を行わなければならないとするが、産業医によらなればならないとはされていない。そもそも産業医でなければならないとすれば、50人未満の事業場においてはストレスチェックができなくなってしまうではないか。
なお、「『心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針』について」(平成27年5月1日基発0501第7号)において、「面接指導は当該事業場の産業医等が実施することが望ましい
」とされている。これは、50人未満の事業場においてはストレスチェックが努力義務とされていることも念頭において書かれている。
【労働安全衛生法】
(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2 (略)
3 事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。
4~9 (略)
(2)誤り。面接指導の結果は、安衛則第52条の18により記録を作成して保存しておかなければならない。しかし、この記録は、同規則第51条に基づく健康診断個人票とは別なものである。
【労働安全衛生規則】
(健康診断結果の記録の作成)
第51条 事業者は、第四十三条、第四十四条若しくは第四十五条から第四十八条までの健康診断若しくは法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行つた健康診断(同条第五項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「第四十三条等の健康診断」という。)又は法第六十六条の二の自ら受けた健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを五年間保存しなければならない。
(面接指導結果の記録の作成)
第52条の18 事業者は、面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。
2 前項の記録は、前条各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載したものでなければならない。
一~四 (略)
(3)正しい。労働者に対するストレスチェックの事項は、安衛則第52条の9の規定により、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因」、「当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状」及び「職場における他の労働者による当該労働者への支援」に関する項目である。
【労働安全衛生規則】
(心理的な負担の程度を把握するための検査の実施方法)
第52条の9 事業者は、常時使用する労働者に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次に掲げる事項について法第六十六条の十第一項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査(以下この節において「検査」という。)を行わなければならない。
一 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
二 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
三 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
(4)誤り。安衛則第52条の9は、面接指導の対象となる要件に該当する労働者から申出があったときは、遅滞なく面接指導を行わなければならない。
この「遅滞なく」の意味について、平成27年5月1日基発0501第3号「労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令等の施行について(心理的な負担の程度を把握するための検査等関係)」は記の第3の4の「(2)面接指導の実施方法等(第52条の16関係)」のハにおいて「第2項の「遅滞なく」とは、申出後、概ね1月以内をいうこと
」としている(※)。
※ 遅滞なくがどの程度の期間を指すかについては、「直ちに・速やかに・遅滞なくとは」を参照されたい。
この場合、3か月では「遅滞なく」とはいえないということである。
【労働安全衛生規則】
(面接指導の実施方法等)
第52条の16 法第六十六条の十第三項の規定による申出(以下この条及び次条において「申出」という。)は、前条の要件に該当する労働者が検査の結果の通知を受けた後、遅滞なく行うものとする。
2 事業者は、前条の要件に該当する労働者から申出があつたときは、遅滞なく、面接指導を行わなければならない。
3 (略)
(5)誤り。ストレスチェックと面接指導の実施状況について、安衛則第52条の21の規定により、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、労働基準監督署長へ報告しなければならない。面接指導を受けた労働者数は関係がない。
【労働安全衛生規則】
(検査及び面接指導結果の報告)
第52条の21 常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、一年以内ごとに一回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第六号の二)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
※ 本条は、2025年1月1日より改正されるが、報告の方法に関するものなので、本問の正誤には影響を与えない。なお、詳細は「労働者死傷病報告等の電子申請の義務化」を参照されたい。