第1種衛生管理者試験 2019年4月公表 問16

作業環境中の有害因子(化学物質以外)




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合格

 このページは、試験協会が2019年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年04月公表問題 問16 難易度 幅広い知識を問うているが、基本的な問題だといえる。正答できる問題である。
物理的因子

問16 作業環境における有害因子による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)電離放射線による中枢神経系障害は、確率的影響に分類され、被ばく線量がしきい値を超えると、発生率及び重症度が線量に対応して増加する。

(2)熱けいれんは、高温環境下での労働において、皮膚の血管に血液がたまり、脳への血液の流れが少なくなることにより発生し、めまいや失神などの症状がみられる。

(3)金属熱は、金属の溶融作業などで亜鉛や銅のヒュームを吸入したときに発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられる。

(4)凍瘡は、皮膚組織の凍結壊死を伴うしもやけのことで、0℃以下の寒冷にばく露することによって発生する。

(5)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。

正答(3)

【解説】

(1)電離放射線による健康への影響は、確定的影響と確率的影響に分けられる。確定的影響では、線量が大きいほど障害の程度が重篤となり、しきい値がある。一方、確率的影響では、線量が大きいほど障害に罹患する確率が高くなり、しきい値がないと考えられている。また、被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを挽発性影響と呼ぶ。受験対策としては、急性影響、白内障及び不妊が確定的影響で、他は確率的影響だと覚えておけばよい。

そして、電離放射線による中枢神経系障害は、放射線による急性障害の中でもっとも重篤な影響に分類されており、数十グレイ以上の高線量を短時間内に被ばくした場合に発生する。急性障害であり、確定的影響に分類される。従って本肢は誤りである。

(2)熱けいれんとは、暑熱時に多量の発汗をした場合に、真水や塩分濃度の低い飲料を補給して、血液中の塩分濃度が低下して起きる、痛みを伴う筋肉のけいれんのことである。

本肢の「高温環境下での労働において、皮膚の血管に血液がたまり、脳への血液の流れが少なくなることにより発生し、めまいや失神などの症状がみられる」のは「熱疲労」と呼ばれる。従って、本肢は誤りである。

(3)金属熱は、金属の溶融作業などで亜鉛や銅のヒュームを吸入したときに発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられる。正しい。

(4)凍瘡とは、普通の「しもやけ」のことである。氷点下のような極寒条件よりも、気温5℃前後の環境や、昼夜の気温差が激しいときなどに起こる。

また、皮膚組織の凍結壊死を伴う場合は「凍傷」と呼ばれ、しもやけとは異なる。気温が-4℃以下に長時間晒されたような場合に発生する。本肢は誤っている。

(5)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた窒素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。「酸素」とする本肢は誤っている。

2019年05月03日執筆