第1種衛生管理者試験 2018年10月公表 問03

特殊健康診断の診断項目




問題文
トップ
合格

 このページは、試験協会が2018年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2018年10月公表問題 問03 難易度 特殊健康診断の診断項目はかなりの難問と言えよう。正答するのはかなり難しいだろう。
健康管理(健康診断)

問3 有害業務とそれに従事する労働者に対して特別の項目について行う健康診断の項目の一部との組合せとして、法令上、正しいものは次のうちどれか。

(1) 高圧室内業務 ・・・ 尿中のウロビリノーゲンの検査
(2) 有機溶剤業務 ・・・ 赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査
(3) 放射線業務 ・・・ 尿中の潜血の有無の検査
(4) 潜水業務 ・・・ 血液中の尿酸の量の検査
(5) 鉛業務 ・・・ 尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査

正答(5)

【解説】

特殊健康診断は安衛法第66条第2項によって義務付けられ、対象は政令に、健診項目は省令に定められている。

本問は、その省令に対する知識を問うものだが、一般の受験者にとってはかなりの難問だろう。

【労働安全衛生法】

(健康診断)

第45条 (略)

 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。

3~5 (略)

(1)誤り。高圧室内業務に従事する労働者に対する特殊健康診断の項目は高圧則第38条に定めているが、尿中のウロビリノーゲンの検査は定められていない。なお、尿中ウロビリノーゲンが陽性の場合は肝臓障害や溶血性貧血が疑われ、陰性の場合は胆道閉塞が疑われる。便秘でも陽性になり、抗生物質の大量投与等でも陰性になる。

【高圧則労働安全衛生法施行令】

(健康診断)

第38条 事業者は、高圧室内業務又は潜水業務(以下「高気圧業務」という。)に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び当該業務についた後六月以内ごとに一回、定期に、次の項目について、医師による健康診断を行なわなければならない。

 既往歴及び高気圧業務歴の調査

 関節、腰若しくは下肢の痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査

 四肢の運動機能の検査

 鼓膜及び聴力の検査

 血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無の検査

 肺活量の測定

 事業者は、前項の健康診断の結果、医師が必要と認めた者については、次の項目について、医師による健康診断を追加して行なわなければならない。

 作業条件調査

 肺換気機能検査

 心電図検査

 関節部のエツクス線直接撮影による検査

(2)誤り。有機溶剤業務に従事する労働者に対する特殊健康診断の項目は有機則第29条に定めているが、赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査は定められていない。なお、赤血球中のプロトポルフィリンは鉛業務の特殊健診の測定項目である。

【有機溶剤中毒予防規則】

(健康診断)

第29条 令第二十二条第一項第六号の厚生労働省令で定める業務は、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあつては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、第三条第一項の場合における同項の業務以外の業務とする。

 事業者は、前項の業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

 業務の経歴の調査

 有機溶剤による健康障害の既往歴並びに自覚症状及び他覚症状の既往歴の調査、別表の下欄に掲げる項目(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査に限る。)についての既往の検査結果の調査並びに第四号、別表の下欄(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査を除く。)及び第五項第二号から第五号までに掲げる項目についての既往の異常所見の有無の調査

 有機溶剤による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査

 尿中の蛋白の有無の検査

3及び4 (略)

 事業者は、第二項の労働者で医師が必要と認めるものについては、第二項及び第三項の規定により健康診断を行わなければならない項目のほか、次の項目の全部又は一部について医師による健康診断を行わなければならない。

 作業条件の調査

 貧血検査

 肝機能検査

 腎機能検査(尿中の蛋白の有無の検査を除く。)

 神経内科学的検査

(3)誤り。放射線業務に従事する労働者に対する特殊健康診断の項目は電離則第56条に定めているが、尿中の潜血の有無の検査の検査は定められていない。尿潜血の検査は一般的な健診でも行われる。

【電離放射線障害防止規則】

(健康診断)

第56条 事業者は、放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入るものに対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

 被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期間、放射線障害の有無、自覚症状の有無その他放射線による被ばくに関する事項)の調査及びその評価

 白血球数及び白血球百分率の検査

 赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査

 白内障に関する眼の検査

 皮膚の検査

2から5 (略)

(4)誤り。潜水業務に従事する労働者に対する特殊健康診断の項目は高圧則第38条((1)の解説参照)に定めているが、血液中の尿酸の量の検査の検査は定められていない。血液中の尿酸の検査は一般的な健診でも行われる。

(5)正しい。鉛業務に従事する労働者に対する特殊健康診断の項目は鉛則第53条に定められており、尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査は第1項第五号に定められている。

【鉛中毒予防規則】

(健康診断)

第53条 事業者は、令第二十二条第一項第四号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月(令別表第四第十七号及び第一条第五号リからルまでに掲げる鉛業務又はこれらの業務を行う作業場所における清掃の業務に従事する労働者に対しては、一年)以内ごとに一回、定期に、次の項目について、医師による健康診断を行わなければならない。

 業務の経歴の調査

 鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の調査並びに第四号及び第五号に掲げる項目についての既往の検査結果の調査

 鉛による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査

 血液中の鉛の量の検査

 尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査

 (略)

 事業者は、令第二十二条第一項第四号に掲げる業務に常時従事する労働者で医師が必要と認めるものについては、第一項の規定により健康診断を行わなければならない項目のほか、次の項目の全部又は一部について医師による健康診断を行わなければならない。

 作業条件の調査

 貧血検査

 赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査

 神経内科学的検査

2019年05月20日執筆