第1種衛生管理者試験 2018年4月公表 問14

金属などによる健康障害




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合格

 このページは、試験協会が2018年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年4月公表問題 問14 難易度 金属による健康障害についての高度な問題である。正答するのはやや難しい問題といえる。
金属による中毒

問14 金属などによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)金属水銀中毒では、感情不安定、幻覚などの精神障害、手指の震えなどがみられる。

(2)鉛中毒では、貧血、末梢神経障害、腹部の疝痛などがみられる。

(3)マンガン中毒では、指の骨の溶解、肝臓の血管肉腫などがみられる。

(4)カドミウム中毒では、上気道炎、肺炎、腎障害などがみられる。

(5)砒素中毒では、角化症、黒皮症などの皮膚障害、鼻中隔穿孔などがみられる。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。金属水銀中毒では、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状の他、感情不安定、幻覚、焦燥感、記憶減退、不眠等の精神障害、手指の震えなどの振せん、歩行障害等の神経障害、口腔粘膜障害、腎障害などが現れる。

(2)正しい。鉛中毒では、貧血(血色素の合成過程を鉛が阻害するため)、神経障害(初期には筋肉痛、関節痛、筋力低下が発生する。症状が進むと、いわゆる垂れ手と呼ばれる症状が現れる。)、消化器の障害(初期には、食欲減退、嘔吐、下痢・便秘などが起きる。また、腹部に疝痛が起きることがある)などの症状を伴う。

(3)誤り。マンガン中毒では、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状又は言語障害、歩行障害、振せん等の神経障害などがみられる。なお、指の骨の溶解の症状の原因物質としては塩化ビニルがある。

(4)正しい。カドミウムの急性症例の主要症状には、上気道炎、肺炎や肺水腫による呼吸困難がある。長期曝露による慢性影響としては、腎臓への影響などが挙げられる。なお、カドミウムはいわゆる「イタイイタイ病」の原因となった物質であり、骨軟化がみられることは覚えておく必要がある。

(5)正しい。砒素中毒の最も特異的な所見は皮膚にみられ、接触皮膚炎、砒素黒皮症と呼ばれる色素沈着などがある。経気道ばく露では、粘膜刺激症状がみられ、鼻中隔が壊死して穿孔をきたすことがある。なお、この他の特異的な所見として末梢血管の炎症があり、先端紫藍症、レイノー現象が見られる。また、貧血、門脈性肝硬変、腎障害なども認められる。

2019年07月15日執筆