第1種衛生管理者試験 2018年4月公表 問13

有機溶剤による健康影響




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 このページは、試験協会が2018年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年4月公表問題 問13 難易度 有機溶剤に関するやや高度な問題ではあるが、基本が理解できていれば十分に正答できる問題である。
有機溶剤による健康影響

問13 有機溶剤に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)有機溶剤は、水溶性と脂溶性をともに有し、その蒸気は空気よりも軽い。

(2)有機溶剤は、揮発性が高いため呼吸器から吸収されやすいが、皮膚から吸収されることはない。

(3)トルエンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物は、馬尿酸である。

(4)メタノールによる健康障害として顕著なものは、網膜細動脈瘤を伴う脳血管障害である。

(5)ノルマルヘキサンによる障害として顕著なものには、白血病や皮膚がんがある。

正答(3)

【解説】

(1)誤り。有機溶剤は、一般に脂溶性を有し、水溶性も有するものがある。しかし、必ず脂溶性と水溶性を有しているとは限らない。また、その蒸気は空気よりも重い。そのため有機溶剤のばく露検知のためのセンサーは、高温になる場合を除き、床近くに設置することが基本である。

(2)誤り。有機溶剤は、揮発性が高いため呼吸器から吸収されやすいことは正しい。しかし、皮膚から吸収されるリスクの高いものもある。

(3)正しい。トルエンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物は、馬尿酸である。なお、次の表のうちキシレン、スチレン、トルエン、ノルマリヘキサンは覚えておこう。

有機溶剤の名称 検査内容
キシレン 尿中のメチル馬尿酸
N・N-ジメチルホルムアミド 尿中のN-メチルホルムアミド
スチレン 尿中のマンデル酸
テトラクロルエチレン 尿中のトリクロル酢酸
尿中の総三塩化物
1・1・1-トリクロルエタン 尿中のトリクロル酢酸
尿中の総三塩化物
トリクロルエチレン 尿中のトリクロル酢酸
尿中の総三塩化物
トルエン 尿中の馬尿酸
ノルマルヘキサン 尿中の2・5-ヘキサンジオン

(4)誤り。メタノールによる健康障害として顕著なものは、急性毒性としては中枢神経系抑制、視覚障害、失明、頭痛、めまい、嘔気、嘔吐、頻呼吸、昏睡などなどがあり、慢性毒性としては眼に対する障害、頭痛、めまい、不眠症、胃障害などがある。網膜細動脈瘤は高齢者に多く、脳血管障害もどちらかといえば生活習慣病である。

(5)誤り。ノルマルヘキサンによる障害として顕著なものには、急性毒性としてはめまい、傾眠があり、慢性毒性としては多発性神経障害、末梢性神経障害、多発性神経炎がある。なお、白血病や皮膚がんの原因となるものには電離放射線などがある。

2019年07月15日執筆