第1種衛生管理者試験 2017年10月公表 問03

地下室の内部における有機溶剤作業




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合格

 このページは、試験協会が2017年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年10月公表問題 問03 難易度 やや高度な内容ではあるが、基本的な内容である。きちんと学習していれば正答できる問題。
有機溶剤中毒予防規則

問3 地下室の内部の作業場において、常時、有機溶剤業務を行う場合の措置について、有機溶剤中毒予防規則に違反しているものは次のうちどれか。

ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。

(1)第一種有機溶剤等を用いて洗浄作業を行う場所に、局所排気装置を設け有効に稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。

(2)第二種有機溶剤等を用いて払しょく作業を行う場所に、プッシュプル型換気装置を設けブース内の気流の乱れもなく有効に稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。

(3)第三種有機溶剤等を用いて吹付けによる塗装作業を行う場所に、全体換気装置を設け有効に稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。

(4)作業場所に設置した局所排気装置で空気清浄装置を設けていないものの排気口の高さを、屋根から2mとしている。

(5)第二種有機溶剤等を用いて、つや出し作業を行う場所の見やすい箇所に、有機溶剤等の区分を黄による色分けと色分け以外の方法を併用して表示している。

正答(3)

【解説】

本問は、有機則に関する問題である。安衛法関連省令の適用除外や特例は極めて複雑であるが、本問は、有機則における適用除外、設備の特例はないというのであるから、基本的な事項さえ知っていれば良い。

(1)有機則や特化則の基本思想は、送気マスクや有機ガス用防毒マスクなどの個人用保護具を使用しなくてもよい状態に、職場環境を保つべきであるということである。そして、そのためには局所排気装置やプッシュプル型換気装置を設けるべきだというものである。従って、局所排気装置やプッシュプル型換気装置を設けていれば、個人用保護具を着用していなくても違反になることはないと考えてよい。

条文上では、まず、有機則第5条は、屋内作業場において第1種又は第2種有機溶剤を用いて有機溶剤業務を行うときは、「有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない」とする。そして、同規則第32条及び第33条は個人用保護具(保護マスク)の義務について定めるが、第5条の場合については義務付けてはいない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第1条第1項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第13条の2第1項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(送気マスクの使用)

第32条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。

 第1条第1項第六号ヲに掲げる業務

 第9条第2項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務

 (略)

(送気マスク又は有機ガス用防毒マスクの使用)

第33条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させなければならない。

 第6条第1項の規定により全体換気装置を設けたタンク等の内部における業務

 第8条第2項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務

 第9条第1項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備及び局所排気装置を設けないで吹付けによる有機溶剤業務を行う屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所における業務

 第10条の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行う屋内作業場等における業務

 第11条の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行う屋内作業場における業務

 プッシュプル型換気装置を設け、荷台にあおりのある貨物自動車等当該プッシュプル型換気装置のブース内の気流を乱すおそれのある形状を有する物について有機溶剤業務を行う屋内作業場等における業務

 屋内作業場等において有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備(当該設備中の有機溶剤等が清掃等により除去されているものを除く。)を開く業務

 (略)

(2)(1)で説明した理由により違反とはならない。

(3)まず、本問の「地下室の内部の作業場」は有機則第2条第1項第一号により、「タンク等の内部」に含まれる。そして、同規則第6条第2項の規定により、タンク等の内部において、吹付けによる第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。全体換気装置は認められていない。従って違反となる。

なお、同規則第8条第2項及び第9条第2項に適用除外と特例が定められているが、本問は適用除外及び設備の特例はないのであるから、該当しない。また、該当したとしても、保護具の着用は必要となるので、いずれにしても違反となる。

【有機溶剤中毒予防規則】

(適用の除外)

第2条 (略)

 屋内作業場等(屋内作業場又は前条第二項各号に掲げる場所をいう。以下同じ。)のうちタンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第2項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)以外の場所において当該業務に労働者を従事させる場合で、作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量が、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる式により計算した量(以下「有機溶剤等の許容消費量」という。)を超えないとき。

(表略)

 (略)

 (略)

(第三種有機溶剤等に係る設備)

第6条 (略)。

 事業者は、タンク等の内部において、吹付けによる第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(局所排気装置の性能)

(4)有機則第15条の2は、空気清浄装置を設けていない局所排気装置、プッシュプル型換気装置等の排気管等の排気口の高さを屋根から1.5m以上としなければならないとしている。本肢は2mとしているので違反はない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(排気口)

第15条の2 (略)

 事業者は、空気清浄装置を設けていない局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置(屋内作業場に設けるものに限る。)又は第12条第一号の排気管等の排気口の高さを屋根から1.5m以上としなければならない。ただし、当該排気口から排出される有機溶剤の濃度が厚生労働大臣が定める濃度に満たない場合は、この限りでない。

(5)これは、有機則第25条の規定そのものである。違反にはならない。なお、第二種有機溶剤等を用いて、つや出し作業を行う業務は、有機則第1条第1項第六号ホの規定により有機溶剤業務となる。

【有機溶剤中毒予防規則】

(有機溶剤等の区分の表示)

第25条 事業者は、屋内作業場等において有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、色分け及び色分け以外の方法により、見やすい場所に表示しなければならない。

 (略)

2019年10月14日執筆