第1種衛生管理者試験 2017年4月公表 問20

化学物質等のリスクアセスメント




問題文
トップ
合格

 このページは、試験協会が2017年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2017年04月公表問題 問20 難易度 リスクアセスメント指針の対策に関する問題である。正答できなければならない。
リスクアセスメント

問20 化学物質等のリスクアセスメントに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)リスクアセスメントの基本的手順のうち最初に実施するのは、労働者の就業に係る化学物質等による危険性又は有害性を特定することである。

(2)ハザードは、労働災害発生の可能性と負傷又は疾病の重大性(重篤度)の組合せであると定義される。

(3)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、化学物質等の有害性に応じた有効な保護具の使用よりも局所排気装置の設置等の衛生工学的対策を優先する。

(4)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、法令に定められた事項を除けば、危険性又は有害性のより低い物質への代替等を最優先する。

(5)新たに化学物質等の譲渡又は提供を受ける場合には、その化学物質等を譲渡し、又は提供する者から、その化学物質等のSDS(安全データシート)を入手する。

正答(2)

【解説】

本問は、2015年9月に改正された厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(以下、本問において「指針」という。)からの出題である。

(1)正しい。指針の「3 実施内容」において、リスクアセスメントの実施事項が記載されているが、その最初の項目は「(1) 化学物質等による危険性又は有害性の特定」となっている。

もっとも、現実に最初に行うべきは、「リスクアセスメントの対象の選定」であり、次に行うのは「情報の入手」であろう。指針では、この2つはリスクアセスメントの準備段階として位置付けられており、「リスクアセスメントの基本的手順」の前段階なので、本肢は正答となる。

(2)誤り。指針によれば、ハザードとは、「発生する恐れのある負傷又は疾病の重大性(重篤度)」である。これに「労働災害発生の可能性」を組合せると「リスク」になる。

(3)正しい。化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討は、「法令に定められた事項」があればまずそれを実施する。次に、検討の優先順位を、「本質安全化」、「工学的対策」、「管理的対策」、「保護具の着用」の順序とする。

有効な保護具であっても、使用方法や管理が適切でないと有効ではなくなるおそれがあるので、局所排気装置の設置等の衛生工学的対策を優先するのである。

(4)正しい。(3)で述べた通り。化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、法令に定められた事項を除けば、「危険性又は有害性のより低い物質への代替等」(本質安全化)を最優先する。

(5)正しい。新たに化学物質等の譲渡又は提供を受ける場合には、その化学物質等を譲渡し、又は提供する者から、その化学物質等のSDS(安全データシート)を入手する。

なお、指針の「7 情報の入手」には、「リスクアセスメント等の対象となる化学物質等に係る危険性又は有害性に関する情報(SDS等)」を入手することとされている。

2020年08月09日執筆