※ イメージ図(©photoAC)
第三次産業の労働災害が増加を続けています。とりわけ、社会福祉施設、小売業及び飲食店の発生件数は第三次産業全体の約 5 割を占めています。
その増加に歯止めをかけ、減少に転じることが重要です。
- 1 厚労省が第三次産業の労働災害防止対策を要請
- 2 社会福祉施設、小売業及び飲食店の労働災害発生状況
- 3 社会福祉施設、小売業及び飲食店が実施するべき事項
- (1)店舗・施設が実施するべき事項
- (2)本社・本部の実施事項
- 4 最後に
1 厚労省が第三次産業の労働災害防止対策を要請
執筆日時:
最終改訂:
厚生労働省は、第三次産業の労働災害防止対策を関係団体に要請した。2021年3月31日基安発0331第3号「第13次労働災害防止計画の計画期間後半の第三次産業における労働災害防止対策の推進について(協力要請)」である。この通達は厚労省のサイトに掲示されていないので、私のサイトにアップしておく。
この通達によると、第三次産業の労働災害は増加しているとした上で、「社会福祉施設、小売業及び飲食店の発生件数は第三次産業全体の約 5 割を占めている
」とされている。
そして、これらの業種で災害が増加している原因として、以下の4点を挙げている。
- ① 人手不足や労働者の高齢化などの要因
- ② 行動災害によるものが多い中で事業場の取組が進んでいないこと
- ③ 店舗・施設に安全衛生担当者がいないなど安全衛生活動が低調である
- ④ その活動をサポートすべき本社・本部の取組が不十分であること
※ 2021年3月31日基安発0331第3号「第13次労働災害防止計画の計画期間後半の第三次産業における労働災害防止対策の推進について(協力要請)」なお、引用者において箇条書きとした。
2 社会福祉施設、小売業及び飲食店の労働災害発生状況
社会福祉施設、小売業及び飲食店の労働災害発生件数の推移をグラフ化すると次のようになる。
これらのグラフからも明らかなように、これらの3つの業種の労働災害発生件数は、ここ20年程は、増加傾向にあるのだ。とりわけ、社会福祉施設における労働災害発生件数の増加は、際立っている。
これらのグラフからも明らかなように、これらの3つの業種の労働災害発生件数は、ここ20年程は、増加傾向にあるのだ。とりわけ、社会福祉施設における労働災害発生件数の増加は、際立っている。
社会福祉施設における労働災害発生件数の増加は、この業種が急速に拡大していることも理由のひとつである。しかし、労働災害発生件数の増加は、この業種の被雇用者数の増加率よりもかなり高いのである。
そして、もうひとつの理由が労働者の高齢化である。ただ、高齢化はすべての業種について言えることである。この期間中の製造業、建設業の災害発生件数は、ここに挙げた3業種のように増加してはいない(※)。
※ 他の職種の型別労働災害発生件数の増加は、当サイトの「業種ごとの型別労働災害発生件数の推移」を参照されたい。なお、これらのグラフは無断流用を禁止する。
3 社会福祉施設、小売業及び飲食店が実施するべき事項
(1)店舗・施設が実施するべき事項
会福祉施設、小売業及び飲食店の店舗・施設の実施事項は、通達では事業場の実情に応じて3つのSTEPのいずれかを実施することとされている。
基本的に腰痛対策が中心となっている。小集団活動や安全衛生教育の実施、健康診断の実施等の健康管理の徹底、職場環境の改善(床面の水濡れ、油汚れ等の小まめな清掃等)、保護具(防滑靴、切創防止手袋等)の使用などが挙げられている。
(2)本社・本部の実施事項
本社・本部が実施すべき事項は、基本的に店舗・施設の実施事項が継続的、組織的に行われるよう、安全衛生体制の整備を含めた必要な取組を実施することである。
具体的には、安全に配慮した作業マニュアルの作成と店舗・施設への周知、店舗・施設における安全衛生担当者等の配置状況の確認、安全衛生担当者に対する教育の実施、リスクアセスメントの実施などの他、メンタルヘルス対策なども挙げられている。
4 最後に
グラフにも示したように、社会福祉施設、小売業及び飲食店の労働災害発生件数はここ20年間、増加傾向にある。そして、その多くが「転倒」「動作の反動・無理な動作」なのである。
これらの災害は、対策が困難と言われてはいるが、作業環境管理、作業管理、健康管理の徹底によって、かなりの減少が図れるのである。
この3業種における労働災害防止対策の徹底が急務というべきである。