保護具の利用と教育

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2021年4月施行の特化則において、金属アーク溶接等作業に関する条文(第38条の21)が追加された。この第2項と第4項にヒュームの気中濃度の測定が定められている。

これは作業環境測定ではないし、そもそもの考え方が大きく異なっている。ところが、同じ測定という用語を用いているからか、先入観から様々な疑問を感じられる方がおられるようだ。

これについて、行政からQandAが示されているので、疑問の多い部分について解説している。




1 保護具の利用実態

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保護具を効果的に使用するためには、①正しいものを選び、➁正しく使用して、③正しく管理しなければない。

このことは、誰でも判っていることなのだが、残念ながら我が国の職場ではそれが実践されていないケースが非常に多いのである。

私は、その大きな原因は事業者の「法令遵守主義」にあると思っている。「法令遵守」は良いことではないかと思われるかもしれないが、実態は必ずしもそうではないのである。

法令を遵守しようとするあまり、ややもすると自分の頭で「何が必要で、そのためには何をするべきか」を考えることをせず、「お上は何を言っているか」の方に目が行ってしまうのである。目的よりも手段の方が大切になってしまうのだ。


2 保護具と法令

法令で、保護具の使用を義務付ける場合、「有効な保護具」というフレーズが用いられていることが多い。だが、何が「有効」なのかまでは書かれていないのである。本来は、何が有効かを自ら調べなければならないのだが、それをせず保護具は使っていれば良いという誤った理解が蔓延しているのである。

実際に、有機溶剤を使用していて、DS2の防じんマスクを使用している例があるのだ。そればかりか、有害な化学物質を取り扱うに際して、家庭の掃除用のゴム手袋を使用している例さえある。残念ながら、これが実情なのである。

また、法令に義務がないと、有害な化学物質を扱っていても、保護具を使用していなかったりする。GHSの皮膚腐食性等を著すマークが付いていても化学防護手袋を使用しないのである。


3 墜落制止用器具と特別教育

足場の設置が困難な高所で、フルハーネス型の墜落制止用器具を用いた作業に特別教育が義務付けられたのは2019年のことである。これは、形の上では「業務」について特別教育が義務付けられたわけだが、実質的には保護具の使用に教育が義務付けられたと言ってよい。これは、ある意味で画期的なことであった。

実際に、それまでは胴ベルト型の「安全帯」(現墜落制止用器具)が使用されることが多かったが、腰骨のところではなくウエストにしているケースが非常に多かったのである。建設現場では「安全帯」を着用していないと入場できないほど「安全帯」の着用は厳しかったが、その着用方法はかなりルーズだった。

要は、着用さえしていれば、法律は守った気になって満足してしまい、その有効性まで気が回らないのである。これは、労働災害防止対策ではなく、「法令遵守対策」である。これでは、災害は防げない


4 化学物質用保護具と教育

一定の化学物質の使用に当たっては、法令によって雇入れ時等の教育で「保護具の性能及びこれらの取扱い方法」を教育する必要があるから、一定のことは知っているはずだが、実際には教育を行う講師の側が保護具についての十分な知識がない場合が多いのが実態である。

また、作業主任者による保護具使用の指導も行われるはずなのだが、実際には行われることはほとんどない。

私自身はこのことがきわめて重大な問題であると考えている。


5 アーク溶接におけるフィットテスト

このほど、アーク溶接作業に関する特化則の改正により、呼吸用保護具のフィットテストが義務付けられる。2022年4月から施行されるはずだったが、残念なことに諸般の事情で経過措置の改正により1年延びてしまった。

これは、保護具に関する教育とは言えないが、実質的には多くの企業は保護具メーカに頼らざるを得ないことになろうし、その場合には保護具着用の指導が行われるであろう。なんといってもメーカの専門家である。我が国の有害物質の保護具着用の実態の改善に大いに期待されるところである。





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