労働安全コンサルタント試験 2022年 産業安全関係法令 問02

下請け構造の安全管理体制




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2022年度(令和04年度) 問02 難易度 下請け構造の安全管理体制は、例年、難問が多かったが、ここ2~3年は基本的な問が多い。
下請構造安全管理体制

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問2 安全管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、統括安全衛生責任者の業務の執行について、当該統括安全衛生責任者を選任した事業者に勧告することができる。

(2)一の場所において行うずい道の建設の仕事の一部を請負人に請け負わせている元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が当該場所において作業を行う場合であっても、これらの労働者の数が常時30人未満であるときは、統括安全衛生責任者を選任する必要はない。

(3)統括安全衛生責任者及び元方安全衛生管理者を選任しなければならない事業者は、選任した統括安全衛生責任者に、選任した元方安全衛生管理者の指揮をさせなければならない。

(4)一の場所において行う造船業の仕事の一部を請負人に請け負わせている元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が当該場所において作業を行う場合であって、これらの労働者の数が常時50人以上であるときは、元方安全衛生管理者を選任しなければならない。

(5)安全衛生責任者を選任しなければならない請負人は、安全衛生責任者を選任したときは、同一の場所において作業を行う統括安全衛生責任者を選任しなければならない事業者に対し、遅滞なく、その旨を通報しなければならない。

正答(4)

【解説】

問2試験結果

試験解答状況
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下請け構造(建設業等)に関する安全衛生管理体制の条文はかなり複雑であり、かつては難問が多かった。ここ数年は、やや平易な問題となっている。確実に正答しておきたいところである。

(1)正しい。安衛法第15条第5項が準用する同法第10条第3項の規定により、都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、統括安全衛生責任者の業務の執行について、当該統括安全衛生責任者を選任した事業者に勧告することができる。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 (第1項及び第2項 略)

 都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。

(統括安全衛生責任者)

第15条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。

2~4 (略)

 第十条第三項の規定は、統括安全衛生責任者の業務の執行について準用する。この場合において、同項中「事業者」とあるのは、「当該統括安全衛生責任者を選任した事業者」と読み替えるものとする。

(2)正しい。統括安全衛生責任者の選任は、安衛法第15条第1項に定められている。しかし、同条但書きの規定及び安衛令第7条第2項(第二号)の規定により、一の場所において行うずい道の建設の仕事の一部を請負人に請け負わせている元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が当該場所において作業を行う場合であっても、これらの労働者の数が常時30人未満であるときは、統括安全衛生責任者を選任する必要はない。

【労働安全衛生法】

(統括安全衛生責任者)

第15条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない

2~5 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)

第7条 (第1項 略)

 法第十五条第一項ただし書及び第三項の政令で定める労働者の数は、次の各号に掲げる仕事の区分に応じ、当該各号に定める数とする。

 ずい道等の建設の仕事、橋りようの建設の仕事(作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生労働省令で定める場所において行われるものに限る。)又は圧気工法による作業を行う仕事 常時三十人

 前号に掲げる仕事以外の仕事 常時五十人

(3)正しい。安衛法第15条第1項の規定により、統括安全衛生責任者及び元方安全衛生管理者を選任しなければならない事業者は、選任した統括安全衛生責任者に、選任した元方安全衛生管理者の指揮をさせなければならない。

【労働安全衛生法】

(統括安全衛生責任者)

第15条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。

2~5 (略)

(4)誤り。安衛法第15条の2の「政令で定める業種」は定められていない。従って、造船業は対象とならない。安衛法第15条の特定元方事業者と混同しないようにする必要がある。

【労働安全衛生法】

(元方安全衛生管理者)

第15条の2 前条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業その他政令で定める業種に属する事業を行うものは、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、元方安全衛生管理者を選任し、その者に第三十条第一項各号の事項のうち技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)

第7条 法第十五条第一項の政令で定める業種は、造船業とする。

 (略)

(5)正しい。安全衛生責任者を選任しなければならない請負人は、安全衛生責任者を選任したときは、同一の場所において作業を行う統括安全衛生責任者を選任しなければならない事業者に対し、遅滞なく、その旨を通報しなければならない。

【労働安全衛生法】

(安全衛生責任者)

第16条 第十五条第一項又は第三項の場合において、これらの規定により統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、安全衛生責任者を選任し、その者に統括安全衛生責任者との連絡その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

 前項の規定により安全衛生責任者を選任した請負人は、同項の事業者に対し、遅滞なく、その旨を通報しなければならない。

2022年11月11日執筆