労働安全コンサルタント試験 2022年 産業安全一般 問28

リスクアセスメント指針




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2022年度(令和04年度) 問28 難易度 リスクアセスメント指針に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
RA指針

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問28 厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に基づき事業者が行うべき事項に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)負傷又は疾病の重篤度は、負傷や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましいことから、基本的に、負傷文は疾病による休業日数等を尺度として使用する。

(2)リスク低減措置の工学的対策として、立入禁止措置及び警報の運用を実施する。

(3)死亡、後遺障害又は重篤な疾病をもたらすおそれのあるリスクに対して、適切なリスク低減措置の実施に時間を要する場合は、暫定的な措置を直ちに講ずる。

(4)機械のはさまれによる危険性の回避可能性については、加害物のスピード、異常事態の認識しやすさ、危険場所からの脱出しやすさ又は労働者の技量等を考慮する。

(5)リスク低減のための対策を決定する際には、既存の行政指針、ガイドライン等に定められている対策と同等以上とする

正答(2)

【解説】

問28試験結果

試験解答状況
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本問は、問題文にもあるように「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(以下、本問の解説において「指針」という。)に関する問題である。

受験に当たっては、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針について(平成18年3月10日基発第0310001号)」(以下、本問の解説において「通達」という。)、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針 同解説」の方も事前に目を通しておきたいところである。

(1)適切である。指針9の(2)ウにより、「負傷又は疾病の重篤度は、負傷や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましいことから、基本的に、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用すること」とされている。2017年問29の(4)の解説を読んでおけば正しいと分かる肢である。

【危険性又は有害性等の調査等に関する指針】

9 リスクの見積り

(1)事業者は、リスク低減の優先度を決定するため、次に掲げる方法等により、危険性又は有害性により発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度及びそれらの発生の可能性の度合をそれぞれ考慮して、リスクを見積もるものとする。ただし、化学物質等による疾病については、化学物質等の有害性の度合及びばく露の量をそれぞれ考慮して見積もることができる。

ア~ウ (略)

(2)事業者は、(1)の見積りに当たり、次に掲げる事項に留意するものとする。

ア及びイ (略)

 負傷又は疾病の重篤度は、負傷や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましいことから、基本的に、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用すること。

 (略)

(3)(略)

(2)適切ではない。通達の記の10の(1)のウにあるように、立入禁止措置及び警報の運用は管理的対策である。工学的対策とは、人の不安全行為があっても事故につながらないように、設備・装置などを用いて対策を行うことである。2019年問28の(3)に全く同じ肢、2017年問29の(3)に同種の肢がある。

これに対し、管理的対策は、人に対して「お前、気を付けろよ」という対策なのである。立入禁止措置や警報の運用は、人に対して「気を付けろ」と言っているのである。

【危険性又は有害性等の調査等に関する指針】

10 リスク低減措置の検討及び実施

(1)事業者は、法令に定められた事項がある場合にはそれを必ず実施するとともに、次に掲げる優先順位でリスク低減措置内容を検討の上、実施するものとする。

 危険な作業の廃止・変更等、設計や計画の段階から労働者の就業に係る危険性又は有害性を除去又は低減する措置

 インターロック、局所排気装置等の設置等の工学的対策

 マニュアルの整備等の管理的対策

 個人用保護具の使用

(2)及び(3)(略)

【危険性又は有害性等の調査等に関する指針について(平成18年3月10日基発第0310001号)】

10 指針の10(1)の事項については、次に掲げる事項に留意すること。

(1)事業者は、リスク低減の優先度を決定するため、次に掲げる方法等により、危険性又は有害性により発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度及びそれらの発生の可能性の度合をそれぞれ考慮して、リスクを見積もるものとする。ただし、化学物質等による疾病については、化学物質等の有害性の度合及びばく露の量をそれぞれ考慮して見積もることができる。

ア及びイ (略)

 指針の10(1)ウの「管理的対策」とは、ア及びイの措置により除去しきれなかった危険性又は有害性に対し、マニュアルの整備、立入禁止措置、ばく露管理、警報の運用、二人組制の採用、教育訓練、健康管理等の作業者等を管理することによる対策を実施するものであること。

エ及びオ (略)

(3)適切である。指針10の(3)に、「死亡、後遺障害又は重篤な疾病をもたらすおそれのあるリスクに対して、適切なリスク低減措置の実施に時間を要する場合は、暫定的な措置を直ちに講ずる」とされている。

【危険性又は有害性等の調査等に関する指針】

10 リスク低減措置の検討及び実施

(1)及び(2)(略)

(3)なお、死亡、後遺障害又は重篤な疾病をもたらすおそれのあるリスクに対して、適切なリスク低減措置の実施に時間を要する場合は、暫定的な措置を直ちに講ずるものとする。

(4)適切である。機械のはさまれによる危険性の回避可能性について、通達の記の9の(3)のアの(エ)に「加害物のスピード、異常事態の認識しやすさ、危険場所からの脱出しやすさ又は労働者の技量等を考慮する」とされている。

【危険性又は有害性等の調査等に関する指針】

9 リスクの見積り

(1)事業者は、リスク低減の優先度を決定するため、次に掲げる方法等により、危険性又は有害性により発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度及びそれらの発生の可能性の度合をそれぞれ考慮して、リスクを見積もるものとする。ただし、化学物質等による疾病については、化学物質等の有害性の度合及びばく露の量をそれぞれ考慮して見積もることができる。

ア~ウ (略)

(2)(略)

(3)事業者は、(1)の見積りを、事業場の機械設備、作業等の特性に応じ、次に掲げる負傷又は疾病の類型ごとに行うものとする。

 はさまれ、墜落等の物理的な作用によるもの

イ~エ (略)

【危険性又は有害性等の調査等に関する指針について(平成18年3月10日基発第0310001号)】

9 リスクの見積りの方法について

(1)及び(2)(略)

(3)指針の9(3)前段の事項については、次に掲げる事項に留意すること。

 指針の9(3)前段アの「はさまれ、墜落等の物理的な作用」による危険性による負傷又は疾病の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては、必要に応じ、以下の事項に留意すること。

  なお、行動災害の見積りに当たっては、災害事例を参考にしつつ、具体的な負傷又は疾病を予測すること。

(ア)~(ウ) (略)

(エ)危険回避の可能性

  加害物のスピード、異常事態の認識しやすさ、危険場所からの脱出しやすさ又は労働者の技量等を考慮すること。

(オ) (略)

イ~オ (略)

(4)(略)

(5)適切である。通達の記の10の(3)に「リスク低減のための対策を決定する際には、既存の行政指針、ガイドライン等に定められている対策と同等以上とすることが望ましい」とされている。

【危険性又は有害性等の調査等に関する指針について(平成18年3月10日基発第0310001号)】

10 リスク低減措置の検討及び実施について

(1)及び(2)(略)

(3)指針の10(2)に従い、リスク低減のための対策を決定する際には、既存の行政指針、ガイドライン等に定められている対策と同等以上とすることが望ましいこと。また、 高齢者、日本語が通じない労働者、経験の浅い労働者等、安全衛生対策上の弱者に対しても有効なレベルまでリスクが低減されるべきものであること。

(4)(略)

2022年12月06日執筆