労働安全コンサルタント試験 2022年 産業安全一般 問10

ヒューマンエラーの防止




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2022年度(令和04年度) 問10 難易度 問題そのものに不適切な点があり、多くの受験者が誤っている。
ヒューマンエラー

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問10 うっかりした、思い違いをした、判断を誤ったなどのヒューマンエラーの発生確率を減らすための次の措置のうち、適切でないものはどれか。

(1)計器表示方法をデジタル表示からアナログ表示にして、連続的変化の傾向と程度を一目で分かるようにする。

(2)操作装置を操作する際に指差し呼称を実施する。

(3)機械設備の操作の方向と機械設備の運動の方向を同一にする。

(4)運転中の機械の停止スイッチを押しても、運転が停止しなければ可動部分のガードが開かないようにする。

(5)機械設備の操作装置については、操作部の形状を操作ごとに異なるものとする。

正答(4)

【解説】

問10試験結果

試験解答状況
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(1)適切である。デジタル表示よりもアナログ表示の方が、連続的変化の傾向と程度を把握しやすい。

(2)適切であるとしておく。指差し呼称は、厚労省安全衛生部が推奨している手法である。これを適切ではないという出題を、厚生労働省の主催する国家試験で出題するわけがない。

(3)適切である。当然のことであろう。ラフテレーンクレーン(※)で、走行時に運転席が後ろ側を向いていると、昔のタイプは左右に曲がる操作が逆になってしまった。最近のものは運転席が後ろ側を向いていても左右に曲がる操作が逆にならないようになっている。

※ ラフ(荒れた)テレーン(土地)で稼働できるクレーン。トラッククレーンと異なり、走行時の運転席とクレーン操作時の運転席が共通になっている。このため、初期の型では、上部旋回体が後ろ向きになった状態で走行しようとすると、左右への方向転換の操作が逆になってしまったのである。現在では、この問題はなくなっている。

トラッククレーンよりも価格が低いため=実はランニングコストはそうでもないのだが=、現在は(積載型以外の)トラッククレーンからラフテレーンクレーンへの転換が進みつつある。しかし、フルタイム全輪駆動(荒地ではパートタイム全輪駆動が原則)の採用や、縦向きの溝のタイヤの採用なども進み、現在のラフテレーンクレーンはラフテレーン(荒地)では使えないと揶揄やゆされることもあるのが実態である。

(4)適切ではないとしておくが疑問。試験協会(出題者)は、本肢を適切ではないとしている。運転が停止しないうちに可動部分のガードを開かないようにすることは、ヒューマンエラーの対策ではなく意図的な不安全行為による事故の防止なので、「ヒューマンエラーの発生確率を減らす」ものではないということのようだ。

あるいは、この対策は、エラーを起こす確率を減らすのではなく、エラーを起こした場合に事故につなげないための対策だから、「ヒューマンエラーの発生確率を減らす」ものではないということなのかもしれない

しかしながら、停止スイッチを押した後、機械が停止したと誤解して手を出す(あるいはガードを開ける)エラーの発生の確率を低下させるのではなかろうか。本問は、受験者の安全に関する知識・意識を試すというより、たんなる国語の問題になっている。問題そのものが不適切というべきである。

(5)適切である。機械設備の操作装置について、操作部の形状を操作ごとに異なるものとすること(※)はヒューマンエラーの防止に役立つ。

※ そのひとつの例として、本サイトの「ヒューマンエラーはだれの責任か?」の「(2)ヒューマンエラーによる災害の防止方法」の「イ エルゴノミクスの例(航空機の操縦レバー)」を参照されたい。

2022年11月30日執筆