労働安全コンサルタント試験 2021年 産業安全一般 問21

爆発火災等の防止対策




問題文
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試験を受ける女性

 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2021年度(令和03年度) 問21 難易度 設問そのものにかなりの問題があり、解答がわかれた問題である。
爆発火災等の防止対策

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問21 爆発火災などに関する次のイ~ニの記述について、適切なものの組み合わせは(1)~(5)のうちどれか。

イ 物質の酸化熱、分解熱などにより、自然発火を起こすことがある。

ロ 集じん機の清掃において圧縮空気を用いると、粉じんと空気が接触することによる化学反応で発火することがある。

ハ レーザー光などの強い光は発火源となり得る。

ニ 絶縁性の液体が配管を流れると、発熱によって静電気帯電が発生する。

(1)イ  ロ

(2)イ  ハ

(3)ロ  ハ

(4)ロ  ニ

(5)ハ  ニ

正答(2)(ただし(1)、(3)も正しい。)

【解説】

問21試験結果

試験解答状況
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本問は、イとハは正しく、ロも正しいとしか考えられない。受験者の解答も(1)と(2)に分かれている。本サイトの正答予測では、イとハはどう考えても間違っているわけがない単純な内容なので(2)を予想正答とし、結果的に的中した。

しかし、ロも正しいとしか言いようがない。本問は、設問に問題があると考えられる。

イ 適切である。どのような物質についてなのかが記されていないので違和感はあるが、物によっては酸化熱、分解熱などにより、自然発火を起こすことがあることは当然である。

ロ 適切であるが、試験協会は適切ではないとしている。集じん機の清掃のために、ダクトを分解して圧縮空気を吹き付けると、粉じんが舞い上がり、空気と接触して爆発することがある。堆積した粉じんの清掃には、圧縮空気ではなく吸引式の掃除機を用いるというのは、安全の基本である。

事実、清掃用の圧縮空気によって爆発した例として、松本(※)が「集じん機フィルター清掃用の窒素ガス噴射装置の信号を送るエアー配管が折れ曲がり,信号が伝送されていなかったため,ラインを停止し,これを修理し信号を送ったところ,フィルターに付着していた硫黄粉末が大量に飛散し,静電気着火により粉じん爆発を起こした(下線強調は引用者)」という例を報告している。

※ 松本洋「粉じん爆発事故事例と対策」(安全工学 2009年)

本肢の語尾は「ことがある」とされている。つまり、そのような例が1例でもあれば適切な文章なのである。適切でないわけがない。

【予想される出題者の意図と問題の適切性】

ことによると出題者の意図は、粉じん爆発は「粉じんと空気が接触することによる化学反応」によって発火するのではなく、他に着火源があって発火するのだから誤りということかもしれない。

確かに、他に静電気などの着火源がなければ、いくら粉じんが空気中に舞っても粉じん爆発は起きないというのはその通りである。しかし、「発火」という現象は粉じん中の可燃物と空気中の酸素との化学反応である。すなわち、「(着火源があれば)粉じんと空気が接触することで化学反応を起こして発火する」のである。

引っ掛け問題だとすれば、その意味でも望ましい問題ではないが、これは引っ掛け問題のレベルにさえ達していない。純粋な日本語の問題として、注意してよく読めば出題者の意図の通りに確実に理解されるという文章にはなっていないのである。

そもそも、集じん機の清掃のために、ダクトを分解して圧縮空気を吹き付けると、粉じんの摩擦によって静電気が発生し、粉じん爆発が起きる危険性があるのである。仮に、出題者の意図が「粉じんが空気に接してもそれだけでは爆発しない」ということにあるとすれば、労働安全コンサルタント試験の問題として不適切としか言いようがない。

ハ 適切である。レーザー光は、溶接や溶断に用いられるほど強いエネルギーを有しているものもある。発火源(※)とならないわけがない。

※ 消防の実務では、「発火源」は火災の原因となる熱源、「着火物」は最初に燃え上がったものという意味で使われているようである。そのため、本肢を誤っていると考えた受験生もおられたようだ。

ただ、例えば、萩本安昭「火災の事故調査」(2012年)は「着火源」を火災の原因となる熱源、「発火源」は最初に燃え上がったものという意味で使っている。必ずしも統一された用語ではない。

ニ 適切ではない。絶縁性の液体が配管を流れると、静電気が帯電することはあるが、発熱によるわけではない。

2021年11月19日執筆 2023年04月29日一部追記